本記事は、小山 昇氏の著書『生成AIでわかった 経営者のための人材定着術』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

AIプロンプトチャットボット
(画像=テロヴェサライネン / stock.adobe.com)

考えるよりも、まず使う、まず触る

人間は、ゼロが3つ増えると判断できない

現代は、「実際に使ってみること」がもっとも早く学習、適応できる時代です。なぜなら、急激な変化に対しては、今までの思考パターンでは対応しにくいからです。

毎月のお小遣いが「1万円」から「1,000万円」に増えたら、どうやって使い切りますか?

1,000万円の単発の使い道なら、高級車や家電、旅行などで一気に消費できます。しかし、「毎月1,000万円のお小遣い」を使い続けるのは現実味がなく、具体的な使い道をイメージしにくいものです。

「毎月1,000万円の使い道」をイメージしにくい理由

  • お金の桁が増えると、人は適切に使うイメージを持ちにくくなる。
  • 1万円なら「日常の買い物」レベルで考えられるが、1,000万円だとスケールが違いすぎて、何に使うべきか迷う。
  • 普段から1,000万円を使う生活をしていないと、どのように使うべきかの「基準」がない。
  • 使い慣れていない金額を持つと、人は慎重になる。
  • 「お小遣い」として純粋に使い切るには、浪費するしかなく、無駄遣いが増える。
  • 生活費としては多すぎる。欲しいものはすぐに揃ってしまい、物欲がなくなる。贅沢な体験も続けると飽きてしまう。

ゼロが増えると、人間は考えられなくなります。コンピュータのデータ単位はキロ、メガ、ギガ、テラ、ペタ、エクサ、ゼタ、ヨタ……と指数関数的に増えていきます。しかし人間の脳は3桁増えると(1万円が1,000万円になると)、処理に時間がかかります。

人間は、「ゼロが3つ増えた」だけで、判断基準が崩れます。つまり、「これまでのように考えているだけでは、正しい答えが出せない時代になった」ということです。

考えられない時代に考えたところで、間違った答えを出すか、思考停止に陥るだけです。情報量が爆発的に増えて人間の思考だけでは処理しきれないのであれば、考える前に

「まず、触ってみる」
「まず、使ってみる」
「まず、試してみる」
「まず、体験してみる」

ことが重要です。考えるのは、「そのあと」です。

困ったらまずAIに質問する

今の時代、AIを活用すれば、従来のやり方よりもはるかに早く、正確に答えを導き出すことが可能です。

求職者や既存社員の処理能力(単純作業や複雑な作業を遂行する能力)を判断する自社ツール「ミルメ」を運用しています。

武蔵野の小田島健土次長は、クリーン・リフレ事業部から採用部門に異動した当初、受検者の診断結果(ミルメのデータ)を読み解く力が不足していました。そこで、受検者の診断結果の分析を小山の知見が蓄積されたAIを活用し、素早く適切な判断をしました。

現在、若手社員は「困ったらまずAIに質問する」ことが習慣になっています。従来は、「まず考えて、自分で答えを出す」ことが重要視されていました。しかし、これからの時代は、
「自分で考えるよりも先にAIに聞く」

ことで、迅速かつ正確な判断が可能です。AIの時代でも「自分の頭で考える」ことは大切ですが、考える順番が違います。

【旧来のやり方】
×「まず考える→試す→失敗する→やり直す」

【AI時代のやり方】
◯「まず生成AIに聞く→すぐに回答を得る→その答えをもとに判断する→試す→必要に応じて修正する(AIは何度やり直しても文句を言わない)」

このように、考える前にまずAIを活用することで、試行錯誤のスピードが向上し、仕事の精度が上がります。

例えば、今までは就職説明会に来た学生が、「福利厚生は?」「家賃補助はありますか?」と質問すると、採用担当者が答えていました。現在は、学生がiPadに向かって質問をすると、簡単なことはジェミニが回答を音声で再生します。これにより、誰でも同じ回答を自由に引き出すことができます。

生成AIでわかった 経営者のための人材定着術
小山 昇(こやま・のぼる)
株式会社武蔵野代表取締役社長。
1948年、山梨生まれ。東京経済大学卒業後、1976年に日本サービスマーチャンダイザー(現・武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰し、1989年より社長に就任。赤字続きだった武蔵野を増収増益、売上75億円(社長就任時の10倍)を超える優良企業に育てる。2001年から同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、700社超の会員企業をサポートし、400社が過去最高益となっているほか、全国の経営者向けに年間240回以上の講演・セミナーを開催している。1999年「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。2000年度、2010年度には日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞。2023年「DX認定制度」認定。2025年3月、健康経営への取り組みが評価され、健康経営優良法人「ホワイト500」に認定。
本書は、「勤続10年以上社員の退職者が10年で5名」「入社3年以内新卒社員の定着率91%」を実現する武蔵野の社内ナレッジをデータ化し、AIによって分析・検証。「人が辞めないマネジメント」の要諦をまとめたものである。『1%の社長しか知らない銀行とお金の話』『成長する会社の朝礼』『人が輝く経営のすごい仕組み』(あさ出版)、『会社を絶対潰さない 組織の強化書』(KADOKAWA)、『「儲かる会社」の心理的安全性』(SBクリエイティブ)、『改訂3版 仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)など著書多数。

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