暗号資産、個人投資家にとってのメリットとデメリット

ここまで、暗号資産の特徴と、取引の安全性担保のために多くのデジタル技術が利用されていることを解説した。では、この暗号資産は、個人投資家にとってどんなメリットがあるのだろうか。デメリットとあわせて解説しよう。

個人投資家にとってのメリット1:手数料の安さなど取引しやすく、市場の将来性が見込める

暗号資産の特長として、365日24時間帯リアルタイムで取引が可能、金融機関を介する必要がなく個人間で直接送金ができるので手数料が比較的安い、といった点が挙げられる。

例えば、日本の株取引は、基本的に取引所が開いている時間内にしか行えないが、暗号資産はスマートフォンなどの端末から時間や場所に関係なくリアルタイムに手軽に扱える。そのことからも市場の将来性が期待できる。

個人投資家にとってのメリット2:価格変動が激しくハイリターンの可能性を秘める

「暗号資産はなぜ大きく価格が変動するのか」の項で解説したように、暗号資産は価格の変動が大きい。需要拡大や知名度のアップにより、株や投資信託などの投資商品では狙えないような大きな利益を得られる可能性がある。

個人投資家にとってのデメリット1:国や金融機関の保証がない

暗号資産は法定通貨ではないので、その価値は国や金融機関の保証がない。また、入手した暗号資産の価値が大きく下がってしまった場合はもちろんだが、交換業者が破綻した場合にも、投資家は補償を受けられないことがあるので注意が必要だ。

だだ、暗号資産の普及に伴い投資家保護を目的とした法制度の整備も進んでいる。暗号資産の取引をスタートする際は、法制度の確認を欠かさないようにしたい。

現在の日本の法律では、暗号資産の取引、売買を行う事業者の金融庁・財務局への登録を義務としている。また、投資家から預かった資産と事業者の資産は分別管理することも義務付けられている。暗号資産への投資を検討するなら、金融庁へ登録している事業者を利用することは必須である。

▽改正資金決済法施行における事業者へ課される義務

仮想通貨_新制度
画像引用:金融庁 | 「仮想通貨」に関する新しい制度が始まります。(PDF)

▽暗号資産に関する法律
・資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)
・資金決済に関する法律施行令(平成22年政令第19号)
・暗号資産交換業者に関する内閣府令(平成29年内閣府令第7号)

個人投資家にとってのデメリット2:取引所のハッキングリスク

セキュリティーに強いとされるブロックチェーンで管理されていても、過去には取引所がハッキングの被害を受け、暗号資産が流出する事件も起こっている。事件を踏まえて、多くの日本国内の取引所ではセキュリティーの強化を徹底しているが、信頼のおける企業が運営している取引所を利用するとより安心だろう。

個人投資家にとってのデメリット3:投機的で、一両日中に価格が大幅下落するリスクもある

暗号資産は価格変動が激しく大きな利益を得やすいことがメリットでもあるが、裏を返せば大幅な下落により大きな損失をこうむるリスクもあるということだ。このリスクを最小限にするために、暗号資産の取引に慣れない内は少額からの投資を考えよう。

個人投資家にとってのデメリット4:・利益にかかる税金が総合課税で、損益通算もできない

FXや株で得た所得は申告分離課税となり、他の所得額とは分けて税額が計算できる。しかし、暗号資産で得た所得にかかる税金は総合課税となる。そのため、給与所得など他の所得額と合わせた金額に対して税金がかかる。

また、損益通算も認められず、アフィリエイト収入などの一部を除き、暗号資産取引での損失は他の雑所得と相殺することができないのもデメリットだ。

▽暗号資産の損益通算禁止

問 暗号資産取引による所得を計算したところ、損失が生じました。この損失を給与所得などの他の所得から差し引く(通算する)ことができますか。

答 雑所得の金額の計算上生じた損失については、給与所得など他の所得から差し引く(通算する)ことはできません。

所得税法上、他の所得と通算できる損失は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の金額の計算上生じた損失に限られます。雑所得については、これらの所得に該当しませんので、雑所得の金額の計算上生じた損失がある場合であっても、他の所得から差し引く(通算する)ことはできません。

引用:国税庁 | 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)(PDF)