学生に身につけてほしいのは『生活・人生をデザインする力』
私が金融教育を通じて身に付けて欲しいのは、『損得勘定』ではなく、『生活・人生をデザインする力』です。
「デザイン」とは、「自身の夢・希望を描き、他者・環境にも配慮しながら、より良い選択・行動をしていくこと」と捉えています。
このことにより、経済的な面だけでなく、精神的な面も含めた、本当の意味での「豊かさ」につながると思います。
また、金融教育を通じて、培いたいのは、『知識』だけでなく、「メタ認知能力」を含めた『資質・能力』を高めることです。
「メタ認知能力」とは、「自分や周囲を客観的に“モニタリング”し、よりよい結果に到達できるよう“コントロール”すること」です。
前出の金融リテラシー調査(2022)の結果には、若年者(18~29歳)の投資に対する関心は高まっているものの、①知識が乏しい、②金融経済情報を見る頻度が少ない、③「横並び行動バイアス(自身の思考よりも、周囲に影響され行動する)」が強いという傾向も報告されています。
これらを解消するためには、知識を身に付け、適切な情報収集・取捨選択をし、それらを基に客観的な視点をもって、熟考する習慣が必要です。
ー田中先生の九州女子大学での具体的な取り組みについてお聞かせください。
田中由美子教授
生活デザイン学科では、昨年度からFP3級取得を目指した授業科目『パーソナルファイナンス』を開講しました。
この試験は6分野あり、半期15回の授業で全てを学修することは難しいのですが、1年次からの『家政学概論』『家族関係学』『消費生活論』『生活経営学』の中で、系統的に無理なく知識習得できるカリキュラムとしています。
一般企業就職志望者だけでなく、教員志望者のほぼ全員が受講していました。
この学びによって、金融教育に強い家庭科教員の養成にもつながると思います。
このように、将来の「職業」に生かせるだけでなく、「生活・人生」に生かせる力を段階的・系統的にじっくり学ぶことで、理解と知識定着を促すことができます。
将来的には、高校生全員に、これらのうち、生活に密着した内容を厳選し、それらの学習機会を確保することが理想だと考えています。
ただ、これまで通りの方法では、スピード感をもった推進は困難に思えます。
生徒・学生自身が、スマートフォン等を使って、短時間に少しずつ学び、ポイントがたまっていくシステム作りなども効果的ではないかと考えています。
賛同してくださる企業の方がいらっしゃれば、連携して進めていきたいと思います。