特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。
平成18年(2006年)住宅用太陽光発電システムの設置・販売会社からスタートし、平成24年12月に施工専門会社として独立。以降は住宅用太陽光発電システムだけではなく、産業用太陽光発電システム、オール電化・蓄電池、 総合リフォーム事業を手掛け多くの実績と信頼を蓄積してきた住環境設備株式会社。「住まいの環境・働く環境・環境保全」の3つの環境をより良くすることを目標に、培ってきたノウハウや技術を活かし地域密着型のサービスを提供している。総合リフォーム事業、建築設計事業、公共工事事業、エネルギー事業、O&M 事業の各事業を柱として、より快適な住環境を目指して事業を発展させてきた。
確かな技術力を持つ熟練の作業員の手による信頼性の高い施工と、 効率的な作業を行うことによるコストダウンを実現。近年では、一般建設業許可・電気工事業許可に加え、特定建設業許可を取得し1級建築士による意匠設計や戸建・マンションの建設へと活躍の場を広げている。
(取材・執筆・構成=柴沼直美)
1981年長崎県生まれ。長崎県立西高等学校卒。
23歳のときに太陽光発電関連企業に就職。3年間営業を務め、同社の共同代表に。2012年、30歳のときに独立して住環境設備株式会社を設立し、代表取締役社長に就任した。
お客様のニーズに応える形で始まった新規事業
――会社を設立した経緯をお聞かせください。
2006年、私が23歳のときに太陽光発電ビジネスの営業職として東京で仕事を始めました。そこからフランチャイズ事業として営業に移行しましたが、3年後に経営に行き詰まり、当時の会長に声をかけていただき共同経営者となりました。しかし、当時は会社経営や財務運営もよくわからず、29歳のときに資金繰りの悪化が判明しました。負債が3,000万円超ほどあったことから、負債を折半して返済すると同時に代表を第三者に譲渡しました。
その後、改めて自分の会社を作ることを考えたときに、これまでのビジネスから得た施工ノウハウを活用した「住まいの環境にまつわるものづくり」にこだわった会社を作ろうと決心し、2012年、30歳のときに住環境設備株式会社を立ちあげました。ゆくゆくは家をつくっていきたいという夢がありましたので、「住環境」という言葉を社名に入れたのです。もともと私は体育会系の営業マンであると認識していますが、会社を立ちあげた以上、成功させたいという想いは強かったですね。施工は2010年から関わっていましたが、当初は社員2名でしたから、自らも屋根に上ったりしていましたし、それでも足りない部分は外注でまかなっていました。そうした施工現場の中でお客様の笑顔を直接見られる機会も多く、「ものづくり」により強い関心を持ちました。
――4年前からリフォーム・リノベーション事業を始めました。
もともと太陽光発電事業に携わっていましたが、このビジネスモデルもピークアウト感が否めず、販売価格も下落傾向にありました。販売価格の下落で真っ先にしわ寄せが来るのは製品代や施工代ということもあり、利益の確保が難しくなっていったのです。そこから太陽光発電事業ではなく、当時すでに施工経験が積み上がっていた戸建て・マンションといった一般住宅を対象とした住環境の改善に関する事業にシフトしていきました。例えば、太陽光パネル設置に伴って屋根の葺き替えや塗装をやる、外回りだけではなく内装についても、オール電化導入を機にシステムバスの入れ替えやシステムキッチンの入れ替え、トイレの入れ替え、壁紙の張り替えなど、お客様からのさまざまな要望の中にビジネスチャンスを見出すようになりました。
家は建てて終わりではありません。新築の家も年月が経つとともに劣化していき、必ずリフォームが必要になります。今後もこの需要はなくならないと考え、リフォームから事業を幅広く手がけていきたいと思いました。
仕上げの内側にこそ本物の品質が隠されている
――リフォーム・リノベーション事業における御社の強みをお聞かせください。
施工をするにあたって美しく仕上げるのは当然のことです。ただ、外見を美しく着飾ってしまえば、中身はわからなくなってしまいます。当社は、仕上げの内側にこそ本物の品質が隠されているとの想いから、高品質な施工の提供を追及しています。1級建築士、1級建築施工管理技士、リフォーム診断士といった有資格者を管理者としてそろえ、一見してわからないが肝心の本質にとことんこだわっているところが強みだと思っていますし、このスタンスは今後も変わらず持ち続けていきたいと思っています。本物の施工を提供することは、すなわちトラブル発生のリスクも抑えることにつながります。住環境を舞台とした、こだわりの高品質な施工を提案することで、お客様からポジティブ・フィードバックや達成感をいただくことができ、我々の大きな喜びにもつながっています。
――ビジネスエリアはどのように拡大していったのでしょうか。
私が長崎の出身であったことから、九州全域で太陽光発電事業についてネット販売をやろうと考え、熊本支店を開設したのです。関東には親しい販売店もありビジネス展開は難しいと考え、地元で取り組みを開始しました。価格破壊を起こそうと思いましたが、結局赤字が続き、ネット販売の世界はそれほど簡単なものではないことを悟り2年で撤退しました。ただそのときのインフラを活用できればと思い、そのまま九州に拠点を置いています。また、主要取引先が北海道・東北エリアを除く東日本全域であり、甲信越地域のご依頼が多かったことから新潟営業所の設置に至りました。
――新型コロナウイルスの感染拡大によって感じている変化などはありますか?
コロナ禍により在宅比率が上昇し、それに伴い、リフォーム、リノベーションへの関心が高まっているようです。2020年の調査でもリフォームやリノベーションというワードでの検索が増えているということが示されています。また、海外投資家は、日本の不動産投資について興味を持っているものの、本格的にどのような動きをするのかはまだ見えていません。彼らの動向にも注視しながら自分たちの方向性も見極めたいと思っています。
――今後はどのように事業を発展させていきたいと考えていますか?
2020年に特定建設相許可、およびISO9001・14001を取得したことから、新築に注力していこうと考えています。木造・RC・S造問わず新築に関わる住環境のビジネスを手がけていきたいと思い、2020年から本格的に参入することになりました。また、社名も現在の「住環境設備株式会社」から「設備を提供するだけではなく、住まいにかかわる施工・施工管理サービスをオールラウンドに提供する」という意味で「設備」から「建設」へ変更し「住環境建設株式会社」に変更したいと考えています。「設備会社」ではなく、「建設会社」としてやっていきたいという想いがあるのです。
――エンドユーザー向けのECサイトを開設なさいましたが、今後の展望についてお聞かせください。
先に述べたコロナ禍でのリノベーション需要への盛り上がりという時代の波に乗って、2020年11月に「リノるる」というECサイトを開設しました。それとともにSNS事業部を立ちあげ、インスタグラム等のSNSと連携しながら、2021年中にEC事業を1つの事業部として確立できればと思っています。今後、このサイトでどのように運営・発信してくのかという方向性は、外部の専門家の意見も採り入れながら決めていき、コーポレートサイトとの連携についても検討していきたいと思っています。