特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。

新潟県妙高市で製材業からスタートし、70年にわたって住宅建築やリフォームを手がけてきた家'Sハセガワ株式会社。豪雪地帯ならではの耐雪住宅や高断熱・高気密住宅を開発し、地域に密着した家づくりに定評があるハウスメーカーである。「いっしょう、いっしょの家づくり」をモットーに、顧客の信頼を得ながらこれまで上越・妙高地区において2,000棟建設という実績を積みあげてきた同社ならではの、家づくりにかける思いに迫った。

(取材・執筆・構成=松本智佳士)

(画像=家'Sハセガワ株式会社)
長谷川 覚(はせがわ・さとる)
家'Sハセガワ株式会社代表取締役社長
1966年新潟県生まれ。足利工業大学卒。
入社以来、設計や現場など技術関連の部署を渡り歩き、2006年より現職。自分がやりたいことを通じて社会の役に立つ、本来の「自己実現」を目指し、住宅づくりを通じてお客様の幸せの実現や地域づくりに貢献するのが目標だという。

地元を知り尽くした豪雪地帯ならではの家づくり

――長谷川社長が代表取締役社長に就任されてから、重点的に取り組まれてきたことを教えてください。

私は2006年に三代目の社長に就任しました。就任以降、この14年間を振り返りますと、時代の変化とともにお客様のライフスタイルも多様化してきました。その中で私は、そうしたお客様のニーズに合った住まいのご提案、ならびにご提供に努めてまいりました。

――1952年の創業時から、住宅建築やリフォームが主力事業だったのでしょうか。

創業当初は、上越地域といいますか、地元の妙高市周辺の山から木を切り出し、その杉材を中心に製材工場を営み、地元の大工さんなどに卸す事業からスタートしました。当時は戦後の復興期で木材の値段が上がっていた時代だったのですが、昭和50年代の高度成長期に入ると今度は建築費の方が高くなっていき、時代の変化に合わせて、住宅建築の方にシフトしてきたわけです。現在は、新築住宅の売上が10~12億円程度、リフォーム関連が4~5億円程度の割合で推移しています。

――豪雪地域である新潟ならではの住宅建築についてお聞かせください。

周辺はスキー場も多い地域ですので、当社では30年以上前から高断熱・高気密住宅に取り組んできました。寒さだけを考えると、窓を小さくして外からの冷気を遮断すればいいわけですが、ただ新潟は夏の暑さもあるため、なるべく窓を開けて風を通すことも必要になります。そうした地域の気候・風土にふさわしい高断熱・高気密住宅をかなり以前から開発してきました。

当社の高断熱・高気密住宅「はるめんと」シリーズはすでに1,000棟ほどの実績があり、多くのお客様からご好評をいただいています。暖房や冷房にかかる電気代を約半分に抑えることができるほか、冬場は家全体が暖かくなるため、ヒートショックも起きにくいというメリットがあり、お客様からも「快適で過ごしやすい」という声をよくいただいています。

また、4メートルの積雪にも耐えられるよう「フォルテ」という耐雪住宅も開発しています。通常の三角屋根ですと、雪が偏って積もってしまうため、なるべく屋根をフラットな形状にして積雪の偏りをなくすととともに、柱をなるべく等間隔に並べて強度を確保するものです。上越地区の豪雪データに基づいて設計されたオリジナル・フラットルーフ(水平屋根)の木造耐雪構造住宅で、雪下ろしも不要になります。

お客様の要望にきめ細かく応えてつくりあげる家'Sハセガワの住宅(画像=家'Sハセガワ株式会社)

顧客満足度向上を最優先にした経営方針

――家'Sハセガワならではの強みや特徴についてお聞かせください

当社は、今年70期を迎えることができました。地域に密着した家づくりを行ってきたのですが、その中で一番大切にしてきたことは、お客様とのコミュニケーションや、お客様とのつながりです。そうした信頼関係が築けたことで、2世代にわたって注文をいただいたお客様もいらっしゃいます。

当社が手がける住宅はほとんどが完全自由設計ですので、お客様の要望にきめ細かく応えられるというのも、大手ハウスメーカーにはできない強みだと思います。以前、「父親が建てた家の梁を、新築物件のどこかに思い出として残したい」というお客様がいらっしゃいましたが、そうしたご要望にも応えることができます。

当社で家づくりをしていただいたお客様は「サポーターズクラブ」という会員組織に自動的に入会していただく形になります。年に6回ほど会報誌を配ったり、イベントに招いたりするほか、特別割引といった特典を利用できるといったサービスを提供し、リピート率の向上を目指しています。

また、お電話をいただくと、当社の社員や関連業者さんが駆けつけて、雪下ろし作業をお手伝いするサービスも行っています。高齢化が進む中で、お一人では雪下ろしもままならないお宅も増えており、そうしたことで地域に貢献できればと思っています。

――最長30年保証も行っていらっしゃいます。その狙いは。

当社のモットーは「いっしょう、いっしょの家づくり」というものです。ただ住宅も形あるものですから、長く暮らしていると当然メンテナンスが必要になります。築後10年以降は、5年ごとにアニバーサリー点検として住まいの誕生日に、社員が花束を持ってお祝いに行き、無料点検をさせていただいています。点検をさせていただくことで、建物の劣化や老朽化を最小限にとどめ、長く安心して暮らしていただけるよう最長30年保証というものを設けています。お客様との長いお付き合いの中で、リフォームのご提案にも結び付けられるほか、30年経てばお子さま世代の家づくりといった場面も出てきますし、メンテナンスでお客様に満足していただきつつ、商機にもなればと思っています。

――新潟でも新型コロナウイルスの影響はありますでしょうか。

新潟では感染者数はさほど多くなく、首都圏ほどの影響はないと感じています。ただ、お客様の意識はやはり変わってきており、感染への不安から以前ほど頻繁に打ち合わせができなくなっている状況です。もちろんリモートでの打ち合わせにも対応していますが、なかなかお客様のほうで受け入れてもらえないことも多く、模索している状況です。感染対策としては、マスクの着用、消毒、といった基本的なことは徹底して行っています。

――これからの目標や今後の事業展開についてはいかがですか。

売上目標は当然ありますが、それよりもお客様の満足度をいかに上げていくかが大事だと考えています。その満足度を高めていくのは、やはり人の対応によるところが大きいと思いますので、社員がどれだけお客様のことを思って行動できるかにかかっています。そのため、当社ではコンサルタントのアドバイスを受けながら、基本の徹底に努めており、例えば挨拶の仕方といった基本的なこともないがしろにせず、人材教育にも力を入れています。

また、当社にはプレカット工場があり、木材を加工して建築材料としています。ただ、機械が古くなってきたことから、機械を新しくするか、あるいは現状の工法からパネル工法に特化していくといった検討も行っています。高齢化に伴って腕のいい職人さんの確保も難しくなっている状況もあり、今後は工法を変えることで、職人さんの腕に左右されずに現場の効率化や工期の短縮を図ろうと考えています。