本記事は、島野 卓也氏の著書『株式投資 損したときの処方箋ー勝てる投資家は負け方が上手い 株で勝つための秘密のルール』(セルバ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

損切りは大損を避けるための必要経費
勝ち組投資家は徹底的に損失管理を行います。何度も同じ話を繰り返していますが、もしあなたが株式市場で生き残りたいのであれば、これまでに述べた損失管理のルールを必ず守ることが不可欠です。
なぜこれほどまでに強調しているのかというと、損切りのルールを守ることは一見簡単そうに見えますが、実際には非常に難しいからです。たとえば、あなたが5連敗して精神的にも資金的にも苦しい状況にあるとき、果たして冷静に損切りを実行できるでしょうか?
多くの初心者投資家は、連敗が続くと次の取引で損失が出ても、「次こそは勝ちたい」という思いから、損切りを躊躇してしまいます。結果として、僅かな損失すら受け入れられず、損切りを見送ってしまうのです。
そしてその間に、評価損が許容範囲を超えると、理性が吹っ飛び、感情的な判断が支配するようになります。「元の価格に戻ってくれ」とただ祈るだけの状態に陥り、その祈りが届かなかったときには、絶望とともに資産が急減してしまいます。
多くの個人投資家が、このようにして損切りができず、壊滅的な損失を被っています。そこで重要なのは、自分の損失許容金額を超える前に必ず損切りを行うことです。あなたは何万円までの損失であれば、気持ちに余裕を持っていられるでしょうか? その金額を明確にし、その金額に達する前に迷わず損切りを実行してください。
時には損切りをした直後に株価が反転し、元の位置に戻ることもあります。このような経験を繰り返すと、「損切りなんてしなければよかった」と思うかもしれません。しかし、それでも損切りを怠ることは、自らを破滅へと導く行為です。損切りをしなかったほうがよかったと思う場面は確かにありますが、それは単なる偶然の産物にすぎません。
10回連続で幸運が訪れることはありません。
損切りは破産を避けるための必要経費です。この必要経費を躊躇なく支払える投資家だけが、長く市場で生き残ることができるのです。損切りをしっかりと行うことで、あなたは市場で長生きする投資家として成功への道を歩むことができるのです。
「損切り」を「利益」と考える?
株式投資において最も重要なことは、「1回の投資で大きく負けないこと」です。
初心者投資家ほど、負けを認めることができず、損失を確定することが難しいものです。もちろん、損切りは誰にとっても避けたい行為です。
株式投資をする目的は利益を得ることですから、誰もが損をしたくないと考えるのは自然なことです。しかし、「損をしたくない」という気持ちが強すぎると、小さな損失を受け入れられなくなり、結果的にもっと大きな損失を抱えてしまうことになります。
たとえば、購入した株が下落し続けている場合でも、含み損が現実の損失になることを恐れて売却を躊躇し、株価が回復することを祈りながら保有し続けてしまうことがあります。
しかし、このような姿勢は非常に危険です。株価が回復しない場合、損失はどんどん膨らみ、最終的には資金をほとんど失ってしまうこともあります。
大切なことは、早めに損切りを行い、損失を最小限に抑えることです。損切りを遅らせるほど、損失は大きくなるのです。
もし損切りをした後に株価がさらに下がり続けた場合、その損切りは「損失」ではなく、「利益」と考えるべきです。つまり、小さな損失を確定させることで、大きな損失を避けることができたのです。この考え方に慣れることが非常に重要です。
損切りの習慣を身につければ、次の投資を行うための資金を確保することができます。もしかすると、次の投資では大きな利益を得ることができるかもしれません。そのチャンスを逃さないためにも、負けても次に投資できる資金を残しておくことが不可欠なのです。
負けても生き残る
株式市場はよく戦場にたとえられます。それは、上手くいけば利益を得られる反面、1つのミスで大きな損失を抱えることがあるからです。この厳しい環境で生き残るには、「攻め」よりも「守り」を重視することが大切です。戦場で盾がない状態で剣だけで攻めても簡単にやられてしまいます。ボクサーもどれだけパンチ力があっても、ノーガードでは、すぐにやられてしまいます。それと同様に、実際、長く市場で活躍する株式投資家は、攻めの上手さではなく、守りの強さが際立っています。
初心者は「どう勝つか」ばかりを考えがちです。そのため、予想外の損失に対して準備が足りず、一度のミスで大きなダメージを受けてしまうことが多いのです。一方、勝ち組投資家は株式投資には勝つときと負けるときがあることを理解しています。だからこそ、勝つための準備だけでなく、負けたときの対応策も欠かさず準備しているのです。
重要なのは、負けても資金を守ることです。次の売買ができる資金を残しておけば、今回の損失を次回の利益で取り返すチャンスが生まれます。株式市場で成功するためには、まず「負けても生き残る」ことを心がけましょう。それが、長く市場に留まり、最終的に利益を積み上げる秘訣なのです。
敗因を突き止める
初心者が株式投資で何度も「大損」を経験してしまうのは、失敗から学ぶ姿勢が欠けていることが原因です。同じ失敗を繰り返してしまうため、どれだけ経験を積んでも「大損」を避けられないのです。私自身も投資を始めた頃は大きな損失を何度も出していました。しかし、今では同じような過ちを犯すことはほとんどありません。それは、損失を冷静に振り返り、次に同じ失敗をしない方法を見つける努力をしてきたからです。
たとえば、ある取引で30万円の損失を出したとしましょう。このとき、多くの投資家はその損失を受け入れて終わらせてしまいます。しかし、成功する投資家は違います。「どうすればこの損失を10万円に抑えられたのか?」と深く考えます。そして、その方法を模索し、次の取引に活かそうとするのです。このプロセスこそが、失敗を単なる損失で終わらせず、次の成功への足がかりとするために重要なのです。
初心者がやりがちなのは、利益を増やすことだけに注目することです。「どうすればもっと儲けられるか?」と考えがちですが、成功する投資家はまず損失を減らすことを最優先にします。損失を減らせば、自然と資金は増えていくものです。これは、家計管理において無駄遣いを減らせば貯金が増えるのと同じ考え方です。
実際、どれだけ大きな利益を出しても、それ以上に損失を出してしまえば資金は減ってしまいます。だからこそ、利益を追い求めるより先に、損失を最小限に抑える方法を考えるべきです。その方法は、実際に損失を経験し、それを分析することで見つかります。
失敗を振り返り、冷静に分析し、次の取引に活かすことで、投資家としてのスキルが着実に向上します。
初心者の多くは失敗を恐れるあまり、その原因を深く追求せず、すぐに次の取引に進みがちです。
しかし、それでは成長は遅くなります。失敗を避けるのではなく、むしろその中から学び取る姿勢が重要です。成功している投資家は、過去の取引を振り返り、改善点を探し続けています。この姿勢が、長期的な成功につながるのです。
損切りの話をする人は、利食いの話をしていないように感じることがあるかもしれません。
しかし、その背景には重要な理由が隠れています。これは、優れた投資家はすべての取引で勝つことは不可能だと腑に落ちているからです。損切りを避けることはできない現実を受け入れ、どのタイミングで損切りを行うかを考えることが、投資家としての成功への第一歩になります。損切りは、失敗を認める行為ではありません。それは、資金を守り、次のチャンスに備えるための重要な戦略です。
初心者が目指すべきは、まず大きな損失を避ける方法を学ぶことです。そして失敗を成長の糧とする姿勢を身につけましょう。このプロセスを繰り返すことで、株式市場で長く生き残り、やがて成功を手にすることができるのです。

28年間、大手証券会社勤務し、約3,000名の顧客に投資コンサルを行う。その経験を活かし50歳手前で”脱サラトレーダー”として独立。サラリーマン時代に本を出版し、アマゾンで一位を取る他、成功した脱サラトレーダーとしてFM東京にも出演。
現在は、自身で株トレードをする傍ら、日本全国に約700名の会員を抱え、株式トレード手法を教える事業も行っている。
株価チャートのマルチタイムフレーム分析をベースに、投資家心理と資金管理を活用した手堅いトレード手法は、評価が高く、多くの成功者を生み出している。
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