本記事は、島野 卓也氏の著書『株式投資 損したときの処方箋ー勝てる投資家は負け方が上手い 株で勝つための秘密のルール』(セルバ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

株式投資は価格よりもタイミング
株式投資において、期限を重視している人はどれほどいるでしょうか? 事業を経営している方なら、この重要性をよく理解しているはずです。今日必要なお金が、たとえ明日手に入っても意味がありません。
株式投資を始めたばかりの頃、多くの人は「上がるか下がるか」だけに注目しがちです。
しかし株式投資をする上で、単に「上がるか下がるか」よりも重要なことがあります。それは「いつ上がるか?」「いつ下がるか?」というタイミングです。この「いつ?」という視点が極めて重要なのです。
確かに、株式投資では、価格の方向性を見極めることは大切です。しかし、どれだけ業績がよい株でも、「いつ上がるか?」「いつ下がるか?」というタイミングを見誤ると、利益を上げることは難しくなります。
買った瞬間に株価が上昇することは稀です。自分が考えたとおりに株価が動くこともそう多くはありません。それでも、株式投資家であれば、「上がるか下がるか」以上に「タイミング」を重視する必要があります。
たとえ業績が悪い株であっても、タイミングが合っていれば、利益を得ることが可能なのです。
他の一般投資家よりも、一歩進んで、「どこまで上がるか?」「どこまで下がるか?」だけではなく「いつ上昇するか?」「いつ下落するか?」というタイミングに対する計画を真剣に立ててみましょう。
「いつ?」を考えることは、勝ち組投資家が最も重要視していることなのです。
勝率に対する誤解
初心者の投資家ほど、勝率を過度に求めがちです。確かに勝率が高ければ利益が増える可能性も高まりますが、株式投資の世界で勝率100%は存在しないことを理解しなければなりません。多くの初心者は「そんなことはわかっている」と言いながらも、勝率が100%に近いノウハウを探し求めてしまいます。
しかし、現実には「勝率8割」を誇っていたものの、今は市場から退いてしまった元投資家が大勢います。勝率は確かに重要ですが、必要以上に高くすることに意味はありません。
勝率だけを高めたいのであれば、少しでも利益が出れば利食いをし、どんなに評価損が大きくなっても損切りをしなければ、勝率を高めることは可能です。
つまり多くの場合、勝率が高い手法は、儲かるときは小さく、損したときは大きくなることが多いのです。コツコツドカンの典型です。「勝率が高ければ必ず勝てる」という誤解を改めることが大切です。
勝てない投資家ほど、この勝率に対する誤解を抱き、最終的には破滅に向かってしまうのです。
また、理論的に考えると、利食いと損切りの幅を同じに設定すれば、50%以上の勝率があれば、利益が出ます。
しかし、実際に、これをやり続けるのは非常に難しいです。その理由は、人間の本能にあります。利益を確定するのは気持ちがよいですが、損失を確定するのは苦痛だからです。
このため、多くの投資家は利益確定を早めに行い、損切りを遅らせがちです。それが積み重なり、損金が大きくなるということです。
トータルで勝てばいい
確かに、株式投資をする上で勝率は1つの指標として重要です。しかし、長期的に生き残ることを考えた場合、勝率そのものがすべてではないのです。
株式投資家が相場で生き残るために本当に大切なことは何でしょうか? それは「トータル損益」です。
当たり前のことですが、勝ち組になるためには、勝ったときの金額が負けたときの金額よりも大きくなければなりません。
たとえば、ある投資家が10回中7回負けて、3回勝ったとしても、その3回の勝ちで十分に損失をカバーし、さらに利益を上げることができれば、その投資家は勝ち組と言えるでしょう。
勝ち組投資家たちは、勝率だけでは株式市場で末長く生き残れないことをよく知っています。株式市場から退場させられた人が、必ずしも勝率が低かったから大損したわけではありません。むしろ、勝率が高い人が多いのです。
では何故、勝率が高いにも関わらず、大損してしまったのか? それは、ごく当たり前のことですが、勝つ金額よりも負ける金額が圧倒的に大きかったからこそ、大損するに至ったのです。
一度の大きな損失でこれまでの利益をすべて失い、さらに信用取引で追加の保証金を支払わなければならないようなケースがその典型です。
株式投資の世界は非常に残酷です。ほとんどの投資家は、最終的に負けています。実際に、勝率が高くても損切りを先延ばしにしたり、損を取り返そうとして、無茶な売買を続けることで大損をしてしまうことは珍しくありません。
そうならないためにも、常に「勝ったときの金額が負けたときの金額よりも大きくなるようにする」というリスク管理が重要になります。これが確立できた後に、勝率を高くする努力をすればよいのです。
リスク管理が確立されている投資家であれば、勝率が6割程度でも10年後にはまだ株式投資を続けている可能性が高いでしょう。逆に、勝率にばかりこだわり、リスク管理を疎かにしてしまうと、たった一度のミスですべてを失うリスクがあるのです。
結局のところ、投資の成功において最も重要なのは、勝率ではなく、どれだけ損失を制限できるか、負けたときの損失を最小限に抑えることができるかという点になるのです。
「~そう」で株価は動く
株式投資で勝つためのコツは、情報には、「2つの種類」があることを知っておくことです。
「予想」と「結果」この2つです。
このように言うと、「そんなの当たり前、お前バカか」と思うかもしれませんが、こう思った方は、残念ながら株では負け組に属します。一方、「どういうことですか? 詳しく教えてください」と目を輝かせ、ペンとメモを手にした方は、株で勝つ才能があります。なぜなら、この目の前の情報が、予想なのか? 結果なのか? どちらかによって、株価の投資判断が大きく変わるからです。
“予想というのは、あくまで予想で、その先どうなるかわからない”ということです。おそらく、このままではまだわからないと思いますので、詳しく説明していきます。
ポイントは、「~そう」です。
たとえば、あなたがネット上で、好業績の株を買ったとします。いい業績だと思って買ったにも関わらず、その後、株価は上がらない。今期の業績30%増益とよかったのですが、来季の業績は、ほとんど変わらなさそうだったのです。
その逆もあります。今期の業績は、赤字と悪かったのに来季は黒字転換しそうだとのこと。その場合、株価が底をついて上昇していくのです。
当たり前のことですが、このように、株価は結果としての数字よりも、予想に対して反応するということです。そして、予想の数字は、先の話なので「本当は、どうなるかわからない」ということを、まずは知ることが基本です。
しかし、株で勝てない人は、この2つの種類の情報を混同し、同じようにアプローチしてしまうため「よい業績だと聞いて買ったのにダメだった」と嘆く羽目になるのです。だから、株式投資を成功させたければ、予想と結果の情報としての扱い方がまったく異なるということを、まずは認識しなければいけません。
では、どうしたらいいのか? ということですが、
ここで出てくるのが、「~そう」です。
要は予想というのは、先のことなので、本当にいいのかどうか、わかりません。だから、結果について「あーだ、こーだ」と詳しく調べたところで、意味がないのです。そうではなく、予想には「よさそう」「悪そう」という雰囲気が重要だということです。
そのほかにも、このチャートの形は上がりそうこの新商品は流行りそうといった具合です。
予想と結果は、同じ情報でもまったく異なる性質を持ち、見ている視点がそもそも違うということを知らなければいけません。この感覚は、目の前の情報が、結果なのか? 予測なのか? 予測であれば、どのくらい「よさそうなのか?」「悪そうなのか?」日々、考えることで、少しずつ感覚が養われていきます。そこさえ押さえてしまえば、情報に騙されたと嘆くことはなくなるはずです。

28年間、大手証券会社勤務し、約3,000名の顧客に投資コンサルを行う。その経験を活かし50歳手前で”脱サラトレーダー”として独立。サラリーマン時代に本を出版し、アマゾンで一位を取る他、成功した脱サラトレーダーとしてFM東京にも出演。
現在は、自身で株トレードをする傍ら、日本全国に約700名の会員を抱え、株式トレード手法を教える事業も行っている。
株価チャートのマルチタイムフレーム分析をベースに、投資家心理と資金管理を活用した手堅いトレード手法は、評価が高く、多くの成功者を生み出している。
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