ふるさと納税は、一定の金額を自治体に寄付をすることで、税制優遇を受けることができる制度です。返礼品として特産物などがもらえることでも話題となり、利用者は年々拡大しています。しかし誰でも税制の優遇を受けられるわけではありません。どのような場合に税制優遇を受けられるのでしょうか。

ふるさと納税の制度を理解しましょう

(画像=japolia/stock.adobe.com)

地方で生まれ、その自治体からサービスを受けて育ち、進学や就職などで都心に移ることは珍しくありません。ふるさと納税は、都心に住んでいながら、生まれ育ったふるさとに税制を通じて貢献する仕組みを作れないかという発想から生まれた制度です。

実際のふるさと納税では、生まれ育った自治体だけでなく、自分が応援したいと思う自治体に自由に寄付ができます。また、寄付金の使い道を指定できるため、地域の発展をより身近に感じられます。さらに返礼品としてもらえる特産物などは、その地域をもっと知るきっかけとなり、地域の産業活性化にもつながっています。

税制面では、寄付金の合計金額から2,000円を引いた全額が、所得税還付や翌年の住民税控除という形で戻ってきます。通常は確定申告が必要ですが、5つの自治体以内であればワンストップ特例制度を利用することで確定申告が不要になります。

ですが、税制上の優遇を受けられるのは納税者だけです。つまり、所得が無い人は、ふるさと納税をしても税制優遇は受けられません。また、全額控除される寄付金額は、収入や家族構成により異なります。当然、税金を多く納めている納税者ほど控除される税額は多くなります。
 

全額控除される寄付金額を確認する方法

控除される税額は、以下の3つ合計です。

1.所得税還付額=(寄付金-2,000円)×所得税率 ※総所得の40%が上限
2.住民税基本控除額=(寄付金-2,000円)×10% ※総所得の30%が上限
3.住民税特例分控除額=(寄付金-2,000円)×(90%-所得税率) ※住民税(所得割)の20%が上限

項目ごとに上限額が決まっていますが、当てはまった項目による算出額が控除上限額の基準になります。例えば、所得税還付額が総所得の40%以下であっても、住民税特例分控除額が住民税(所得割)の20%を超えていたら、もともとの自己負担2,000円を超えてしまいます。よって一番金額の少ない住民税(所得割)の20%の金額が、全額控除される寄付金額の目安となります。3.から詳細を算出するための式は以下のとおりとなります。

年収103万円以下でふるさと納税をすると?

年収103万円のパート主婦(夫)が5,000円のふるさと納税をした場合、どうなるでしょうか。年収103万円の場合、所得税は非課税です。住民税(所得割)は、「(103万円-給与所得控除65万円 -住民税基礎控除33万円)×10% 」により計算され、5,000円です。全額控除される寄付金額を算出すると、「(5,000円×20%/90%)+2,000円」により約3,000円となります。

5,000円のふるさと納税をすると、1,000円の控除を受けられますが、もともとの自己負担2,000円と併せると4,000円を支払うことになります。つまり年収103万円以下では、金銭面だけに限って判断した場合、たとえ住民税を納税していてもふるさと納税をしない方が得です。

1万円のふるさと納税で全額控除ができる年収の目安は?

どのくらいの年収があれば、仮に1万円のふるさと納税で全額控除できるのでしょうか。その前に社会保険について確認する必要があります。一般的に、年収が130万円を超えると社会保険の扶養に入れなくなります。そこで年収130万円以上から自分の勤務先で社会保険に加入することを想定します。また、パートナーが配偶者控除や配偶者特別控除を受けられる範囲で働くことを前提とします。

寄付金額が1万円の場合、住民税(所得割)は5万円(1万円÷20%)、住民税課税所得は50万円(5万円÷10%)です。「年収-給与所得控除(年収×40%、最低65万円)- 社会保険料控除(年収×14%とする)- 住民税基礎控除(33万円)」が50万円になるような年収を求めると180万円です。

パート主婦(夫)として働く場合でも、年収180万円あれば1万円のふるさと納税で全額控除(自己負担2,000円含む)を受けられます。ふるさと納税の申込みサイトには、様々な特産品が並んでいます。高級品に目が行きがちですが、主食のお米や保存できる肉などを選ぶと家計の負担が減ります。

総務省のふるさと納税ポータルサイトにある「寄付金控除の計算シミュレーション」などに年収や家族構成、寄付金額などを入力すると、控除額の目安を簡単に確認できます。パートナーの納税分も含め、賢くふるさと納税を利用しましょう。

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