安全資産は本当に安全でリスクはないのか
前述のとおり、安全資産はあくまでもリスク資産と比べて相対的に安全であるに過ぎない。ここまで紹介してきた資産が抱えるリスクやデメリットについて紹介する。
現金(預貯金)のリスク
現金には盗難、紛失のリスクがある。またインフレ時にお金の価値が相対的に下がることもリスクである。
預貯金については、預けている金融機関の破綻がリスクとなる。金融機関が破綻した場合、預金保険制度によってカバーされるが、返金される金額は条件によって異なる。
「当座預金」や「利息の付かない普通預金」は、全額が保護の対象だ。「定期預金」や「利息の付く普通預金」は、1金融機関につき1,000万円までの元本とその利息が保護の対象となる。
保険制度があるとはいえ、1,000万円を超える部分は保護されないことなどから、預貯金も完全なノーリスクとはいえない。
▽預金保険制度の対象となる預金等の範囲
預金保険制度により、当座預金や利息の付かない普通預金等(決済用預金)は、全額保護されます。
引用:金融庁 | 預金保険制度
定期預金や利息の付く普通預金等(一般預金等)は、預金者1人当たり、1金融機関ごとに合算され、元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。
それを超える部分は、破綻した金融機関の残余財産の状況に応じて支払われるため、一部支払われない可能性があります。
定期預金のリスク
定期預金には、普通預金と同じく金融機関の破綻リスクが存在する。
また、定期預金の金利は一般的に普通預金より高めであるものの、市場全体の金利が低下している状況ではほとんど収益性に期待できない点がデメリットだ。
債券のリスク
債券には、預貯金と違って保険制度のようなものはない。そのため、発行体が破綻した場合に元本が戻らないというリスクを抱える。信用リスクが債権によって異なるのは先に述べたとおりだ。
国債は安全性も高いだけでなく、流動性も高い。また外国債のなかには利回りの高い国債もある。しかし、国債といえども各国に信用リスクが存在する。満期を待たずに売却する際は価格変動リスクも考慮すべきだし、外国債の場合は為替リスクが生じることも認識してきたい。
貯蓄型保険のリスク
貯蓄型保険は、途中解約で投資元本を割り込むことがあるなどのリスクを抱えている。たとえば個人年金保険を解約した際に受け取れる払戻金は、契約期間が短い場合、それまでに支払った保険料の総額を下回る。
また貯蓄型保険を積み立て型の投信などと比較すると、保険がついている分リターンが低くなりがちである点にも注意すべきだ。ちなみに保険として見た場合、貯蓄型は掛け捨て型と比べて保険料が割高になる。
貯蓄型保険は契約時の金利が長期間固定されることが多く、低金利のときに契約するとリターンは期待できない。そもそも保険はインフレに弱い特性があるため、低金利のときやインフレ時には気をつけよう。
金(インフレ時)のリスク
金は現物資産であるため利子はつかず、通常は価格変動もあることから元本割れリスクもある。もの自体はなくならない現物資産であることからインフレ時には大活躍することも多い資産だが、物価状況によってリスクが変動するため注意すべきだ。
安全資産とみなされることがあるその他の資産のリスク
・為替市場での安全資産のリスク
ドル、円、スイスフランなどが、為替市場では安全資産といわれる。しかし、あくまで為替であるため価格変動は大きく、安全性は低い。外貨は為替リスクもあり、単純に安全資産として無理に持つべきものではなさそうだ。
・株式市場での安全資産のリスク
ディフェンシブ株は、株式市場のなかでは比較的安全性が高いセクターである。しかしほかの安全資産と比較すると価格変動率は大きく、安全性は低い。
もっとも、株式は上昇時のリターンが大きいため無視できない資産である。そのため、ディフェンシブ株を株式投資のポートフォリオに組み込むこと自体は検討に値する。