安全資産の代表的な商品とその特徴

ここでは、安全資産とされる商品のうち、代表的なものを紹介する。

代表的な安全資産1:現金(預貯金)

銀行などに預けた現金(預貯金)は、基本的に元本が保証されているため安全資産だ。預貯金には利子が定期的につくうえ、元本が減ることはない。預金している金融機関が破綻する可能性はゼロではないが、その場合預金保険制度で1行につき1,000万円まで保護を受けることができる。

預貯金の金利はわずかだが、それでも利回りは良いに越したことはない。通常、店舗を構えている銀行よりもネット銀行のほうが高金利な場合が多いので、各行の金利を比較しておこう。

代表的な安全資産2:定期預金

銀行に現金を預ける場合、定期預金を利用すれば通常よりさらに高い金利がつくこともある。

定期預金とは、期間をあらかじめ定めて金融機関に預ける預金のことだ。定期預金の期間は通常1ヵ月から設定でき、銀行によっては最短1週間に設定することも可能だ。

定期預金には自動継続という仕組みがあり、設定を行えば満期日に同一条件で契約を継続できるので、運用の手間もそれほどかからないだろう。

定期的に他行との金利の違いを確認しながら資金移動を行えば、預貯金といえどもより多くのリターンを積むことができるだろう。

代表的な安全資産3:債券

債券とは、国や国際的機関、地方自治体、企業などが資金調達を目的に投資家からお金を集めるために発行する有価証券である。債券を発行する主体を発行体と呼ぶ。

通常、債券には満期がある。債券を保有していると定期的に利子を受け取れるほか、満期になると元本が戻る仕組みになっている。この元本償還が、株式をはじめとするリスク資産との最大の違いだ。基本的に債券の価格変動は小さく、安全資産の代表的な商品となっている。

代表的な債券である国債と社債について、その特徴を見てみよう。

・国債

国は基本的に、社会保障整備やインフラ整備などの財政支出には税金を充てている。しかし、財政支出が税収入だけでまかなえなくなった場合、国は債権を発行して投資家からお金を募ることがある。この、国を発行体とする債券が国債だ。

日本が発行する債券を「日本国債」、米国が発行する債券を「米国債」という。国が破綻することはめったにないので、数ある債券のなかでも代表的な安全資産といえる。国債は安全性が高いだけでなく、中途換金が可能なため流動性も高い。

・社債

社債は、企業が資金調達のために発行する債券だ。社債は国債よりも利回りが高い傾向にあるが、会社が倒産するリスクは国の破綻リスクより高いため、社債の安全性は国債より低い。また、一部の社債は国債に比べると買い手が少なく、流動性のリスクが高い場合もある。

個人投資家が、一企業の「信用リスク」を精査するのは難しいだろう。債券には、貸したお金が約束どおり返済されたり利息が払われたりする信用リスクを専門機関が評価した「格付け」というものがある。基本的には格付けが高い債券ほど利回りが低く安全性は高い。

逆に格付けの低い企業は、リスクは高めだが利回りが高い傾向にある。もっとも、格付けはあくまでも債券のなかでの比較であって、いずれも株式等のリスク資産と比べれば安全性は高いといえる。

代表的な安全資産4:貯蓄型保険

保険会社が提供する貯蓄型保険は、保険と貯蓄の両方の性格をもつ金融商品だ。死亡保険など保険の要素がありながら、満期後に掛金の総額よりも多くの金額を得られるので、貯蓄型の安全資産として活用できる。預貯金が苦手な人には選択肢の1つになるかもしれない。

代表的な安全資産5:金(インフレ時)

金は現物資産として、インフレ時に安全資産としてみなされる。現物資産とは、土地や金のようにかたちがあり、それ自体に市場価格はあっても、利子を生み出さない資産のことだ。

インフレ時は物の値段が上がる。物の値段が上がるということはお金の価値が下がることを意味する。たとえば、インフレによって現在1,000円の商品が半年後1,500円になったとする。今、現金1,000円で買えたものが半年後には買えないのでお金の価値が下がるわけだ。

そういったインフレ時に強いのが現物資産である。

現物資産は利子がつかないうえ通常は価格変動から元本割れのリスクもあるが、インフレ時には安全資産とみなされる。また現物資産はそれ自体に価値があるため、仮に国が破綻しても、金そのものの価値は変化しない。

その他、安全資産とみなされることがあるもの

どういった資産を安全資産と呼ぶかは、あくまで比較の問題でもある。たとえば、為替は価格変動リスクも高く、元本は保証されていないので基本的にリスク資産である。しかし、為替や株の一部には景気の影響を受けにくいものもあるため、相対的に安全資産とみなすこともできる。

・為替市場での安全資産

たとえば、為替のなかでは「有事のドル買い」が有名だ。これは、地政学リスクが起きて世界が混乱するときには基軸通貨であるドルが安心だ、という考え方で、実際に市場がそのように動くことも多い。

また、日本は世界各国と比較すると政治が安定しており、低金利が続いていることから、「有事の円買い」という言葉もある。

ほかにも、スイスフランは発行元のスイスが中立国であることから、地政学リスク発生時に買われることも多い。

・株式市場での安全資産

株式はリスク資産の典型だが、一部の「ディフェンシブ株」と呼ばれる銘柄は、株式投資における安全資産とみなされることもある。景気後退でも売上が落ちない電力・ガス・水道などの公共事業、医薬品、生活必需品、食品セクターなどがディフェンシブ株の代表だ。