本記事は、早嶋聡史氏の著書『コンサルの思考技術』(総合法令出版)から一部を抜粋・編集しています。

発見
(画像=DrArt / stock.adobe.com)

思い立ったが吉日

日本はまだまだやることだらけです。そのために個人が意識することは行動をとり続けることでしょう。知識を身につけるだけではなく、実際に活用して行動することです。

世界レベルで活躍している人は確かに知識を沢山持っています。しかし何よりも高い夢を持ち、とにかく努力して継続して行動しています。中には、行動が先に行われ、後から方向を正すことだってあります。

日本での義務教育を振り返ると、常に知識で勝負してきたように思います。例えば学力テストは、ペーパーテストの結果で勝敗が決まる知識や記憶の戦いです。しかし、社会に出るとこれらに加えて行動することが必要になります。実際に行動し成果を出してこそ意味があるからです。成果を出すためには、必ず一歩を踏み出さなければなりません。しかし、多くの人はその一歩が踏み出せません。

これは教育の中で行動の競争が少ないのも原因かもしれません。海外の人や若くして社会のために働いている人の共通点は行動していることです。

これから、思い立ったが吉日を体現している知り合いを例にして、彼らの生き方を紹介します。

● 1枚の写真をきっかけに山小屋に住みはじめた人

富士山3,000メートルの雲の上で不意に撮れた1枚の写真をきっかけに、山小屋に長期滞在して写真家の道を歩んだ人がいます。その環境や自然に身を委ねるようにご来光の撮影を続けます。そこから旅を続け、その過程で時々現れる風景や人物や動植物を探しては切り撮ります。近年はモンゴル全土をめぐり、彼が過ごす時間や空間を全て被写体とした作品を発表しました。私は彼の生き方そのものがアートだと思っています。

倒炎転式薪窯とうえんてんしきまきがまウロボロスを作った人

山形生まれの陶芸家。奥さんが佐賀県有田町の窯業ようぎょう大学で絵付けの勉強をするため一緒にきたのがきっかけで、拠点を波佐見はさみに移します。地元の人が見向きもしなかった建造物や遺構を彼なりの視点で蘇らせ、人が集まり語り合う空間をつくっています。コロナ禍で展示会や個展が相次いで中止になる中、前から構想していた窯造りを思い立ちます。「将来、文化財になるような窯をつくる」という思いを込めて、「倒炎転式薪窯ウロボロス」を完成しました。

私はコンサルティングの仕事をはじめてすぐに、資本政策の重要性を仲間と語りました。当時は今のようにM&Aや出資などの進め方が未整備で、少なくとも中小企業には情報が圧倒的に不足していました。共通課題を認識した仲間と集まり、自分たちも経験が乏しかったM&Aの手続きや取り組みを体系化して、将来必要となる組織人やM&Aで独立するアドバイザー向けに、ネットワークと知識を提供する組織JMAAを立ち上げました。

知識がなければ行動できないということはありません。行動しながら知識を身につけることもできます。ただし、闇雲に行動することをすすめるわけではありません。思っただけでは実現しません。計画を立てても行動しなければ価値を生むことはありません。行動しながら、考えながらブラッシュアップするのです。失敗も成功の内。思い立ったが吉日なのです。

まずははじめてみる

20代後半から、30代、40代とコンサルティングを続けるうちに、自身のマインドも変わりました。たとえば、「クライアントのために、Aの経営者とBの経営者を互いに紹介しよう」と考えていても、若い時は遠慮してしまう自分がいたのです。双方の取り組みに関与しているので、企業の強みや弱みを知る機会は当然に増えていきます。30代前半までは、「そのようなことをするとおせっかいと思われるかもしれない」「もしどちらかが不快な思いをしたら嫌だな」ということを考えてしまい、実際に試して確認せずに、だんまりしていたのです。

しかし次第に、「相手にとってメリットがあると確信しているのであれば、明確に行動を起こさないといけないだろう」という気持ちが強くなり、30代半ば頃から、積極的にクライアントへ提案をするようになりました。結果は、「もっと早くから行なっていればよかった」です。コンサルの目的は、顧客の長期的な商売繫盛の達成です。そのため常にさまざまなクライアントの立場になって、抱えている課題の解決や前進を考えます。熟慮したアイデアやヒントは迷わずクライアントに連絡して情報共有し、時には人を紹介し合うことこそが私ができる今の価値だと思えるようになったのです。

3年や5年に一度のタイミングで会う高校の同級生がいます。

研究職から経営の世界にシフトした私を見て感じるものがあったのでしょう。自分が何をしたいのかを考えるため、仕事を辞め、現在はフィリピンのどこかの島で前職での経験を活用して、ICTを普及する活動を行っています。

初めのうちは、行動して現地で何かに取り組もうという勢いもあったようですが、東日本大震災の様子をネット越しに見て、たくさんのことを考えたようです。もともと何かに貢献することをしたいと言っていましたが、今では地方や途上国での格差をなくすという大きなミッションを掲げ活動をはじめています。

私と彼に共通する点は、悩んでいるだけで行動しなかったことを、実際に動いて確かめたことです。悩んでいるだけでは状況は変わらないため、実際に行動します。すると頭の中だけでは見えない世界が広がり、たとえ失敗しても行動したことを正解だと思うようになるのです。

「日本をどうにかしたい!」「世の中を変革したい!」という素晴らしい大義を掲げる人もいますが、私は身近なところから変えたり、変わりたい人に対して何か切っ掛けみたいなモノや機会を提供したいと思っています。あるいはポンっとその人の背中を押し出してあげるといった活動が継続的に行えたら、と思っています。

=コンサルの思考技術
早嶋聡史
株式会社ビズ・ナビ&カンパニー 代表取締役社長
株式会社ビザイン 代表取締役パートナー
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会 理事
Parris daCosta Hayashima K.K. Director & Co-founder
株式会社プラネット・スタジオ 取締役

1977年長崎県出身。九州工業大学情報工学部機械システム工学科卒業。
オーストラリア・ボンド大学大学院経営学修士課程(MBA)修了。
横河電機株式会社においてR&D(研究開発部門)、海外マーケティングを経験後、株式会社ビズ・ナビ&カンパニーを設立。
戦略立案を軸に事業会社の意思決定支援を行う。
また、成長戦略や出口戦略の手法として中小企業にもM&Aが重要になることを見越し、小規模M&Aに特化した株式会社ビザインを設立、パートナーに就任。
M&Aの普及とアドバイザーの育成を目的に、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)を設立し、理事に就任。
その他、時計ブランド「Parris daCosta Hayashima」(パリス・ダコスタ・ハヤシマ)の共同創設者でもある。
また、陶芸アニメ「やくならマグカップも」のスピンオフアニメ「ロクローの大ぼうけん」の製作配信事業の取締役を行う。
現在は、成長意欲のある経営者と対話を通じた独自のコンサルティング手法を展開し、事業会社の新規事業の開発と実現を資本政策を活用して支援する。経営者の頭と心のモヤモヤをスッキリさせることを主な生業とする。
主な書著に『売上を伸ばし続けるにはワケがある 営業マネジャーの教科書』『ドラッカーが教える実践マーケティング戦略』『ドラッカーが教える問題解決のセオリー』『頭のモヤモヤをスッキリさせる思考術』(以上、総合法令出版)、『この1冊でわかる! M&A実務のプロセスとポイント』(共著、中央経済社)などがある。

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