本記事は、早嶋聡史氏の著書『コンサルの思考技術』(総合法令出版)から一部を抜粋・編集しています。
ムラ、ムリ、ムダの3Mをやめよう
ムラ、ムリ、ムダ。
これら3つの「ム」をとって3Mといいます。
問題解決のワークショップを繰り返していると、多くの方々の仕事の進め方にムラ、ムリ、ムダのキーワードが観察されます。
なんとなく仕事をしていて、「きっとこうすれば解決できる」と思っていながらも、アクションを起こさないので結果的に何も変わらず5年、10年と経過します。
過去の日本ではまだよかったかもしれません。しかし、あと5年もすると、これはまずいです。競争相手は、同業に加えて、異業種、海外と激しさが増します。しかも、市場は成熟して大手はコストリーダーシップ戦略(競合他社と比較して安い価格帯で商品やサービスを提供する戦略)をとり、規模の経済で勝負をかけてきます。中途半端なポジショニングをとっている企業は無条件で潰されます。差別化をとれる企業も、機能的な訴求は難しくなっています。
そんなときに3Mをやめるのです。
● ムラ
忙しい時期と暇な時期がある場合、これらを平準化していきましょう。季節変動や時間変動での忙しさのコントロールを考えるのです。「頭では分かっている。だけどしょうがないよね……」といって5年、10年が経ってしまうのです。
「勘弁して下さいよ」と皆さん思っているでしょう。固定費を変動費に変えて、変動費で対応していく仕組みを考えるのも大切です。
● ムリ
頑張って自分でやってみるというのはいいことなのですが、最後まで頑張っているうちに時間切れということになるのは本末転倒です。自分の実力をしっかり見切りながら必要に応じて仲間にパスを投げましょう。
また、なんでもかんでも1人で取り組むのもやめたほうがいいでしょう。あれやこれやと手をつけていると、結局どれも達成することはできません。しっかりとすべきこと、すべきでないことの取捨選択を行ってから、実行することが大切です。
● ムダ
「100%の呪縛」を解いてあげましょう。完璧というのは、妄想と考えてもいいかもしれません。「えっ?」って思うかもしれませんが、顧客が求めているものはそんなところにはなく、ほかのサービスであったりします。
何でもかんでもはじめから100%を目指すのは、かえって効率が落ちるのです。要は、顧客がどこまで望んでいるのかをしっかり把握して仕事をすることが大切です。
自分の周りに3Mがあったら要注意です。排除する方法を考えましょう。
未来は自分で創るもの
「過去を清算するのが先か?」それとも、「未来を創るのが先か?」
今忙しくしている仕事や行動が過去の延長線上だったら、その課題を急いで解決し、未来を創る時間を確保しましょう。もし時間がなければ、何かを犠牲にしてでもその時間を確保することを考えるのです。
一方、「過去の課題を解決しなければ今がない。だから、過去の解決が先だ。」という考え方もあります。
過去と未来は必ず鶏と卵の関係になります。したがって、「どちらが先か?」を判断するのは難しいのです。なので結局、これまでの惰性で過去の延長線上で物事を考え仕事をし、行動をするのでしょう。
しかし、どのような未来があるのかを考えないで、何のために過去の課題を解決するのでしょうか。今一生懸命取り組んでいることは、何につながっているのでしょうか。もちろん、このようなことを考えなくても、どうこうなることはありません。
これまで通りの考え方、仕事、行動をしていれば、急に状況が変わることはないでしょう。そして、何か特別な将来が訪れることもないでしょう。それは過去の延長線上にすぎないからです。過去の繰り返しを行っても大きな飛躍は望めないのです。
少し、経営の考え方と結びつけてみましょう。経営の世界では、自分たちでコントロールできることを内部環境、コントロールできないことを外部環境とよびます。自分の考えや仕事の仕方や行動は、個人の意志でコントロールできることなので内部環境です。
仮に、内部環境をそのままにして変化を求めるのであれば、外部環境に依存することになります。では、昨今の外部環境はどうでしょうか。
国内の経済は成長期から成熟期を迎え、市場の規模はよくてステイであり、通常は人口減少に伴ってさらに低迷するでしょう。このような環境下では、同一の市場を多数で奪い合うことになります。さらに、別の市場へ可能性を求めるため、異業種での競争、国境を越えた競争が激化します。
ロシアとウクライナの影響は世界的に原材料の不足をもたらしました。世界中のサプライチェーンが複雑に絡み合い、どこかで不足が起こると、それが連鎖して日本の経済にも大きな影響を及ぼす状況なのです。
さらに、国内は生産人口の減少、少子化、高齢化などが加わり、国内の消費がますます低迷することも明らかです。
株式会社ビザイン 代表取締役パートナー
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会 理事
Parris daCosta Hayashima K.K. Director & Co-founder
株式会社プラネット・スタジオ 取締役
1977年長崎県出身。九州工業大学情報工学部機械システム工学科卒業。
オーストラリア・ボンド大学大学院経営学修士課程(MBA)修了。
横河電機株式会社においてR&D(研究開発部門)、海外マーケティングを経験後、株式会社ビズ・ナビ&カンパニーを設立。
戦略立案を軸に事業会社の意思決定支援を行う。
また、成長戦略や出口戦略の手法として中小企業にもM&Aが重要になることを見越し、小規模M&Aに特化した株式会社ビザインを設立、パートナーに就任。
M&Aの普及とアドバイザーの育成を目的に、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)を設立し、理事に就任。
その他、時計ブランド「Parris daCosta Hayashima」(パリス・ダコスタ・ハヤシマ)の共同創設者でもある。
また、陶芸アニメ「やくならマグカップも」のスピンオフアニメ「ロクローの大ぼうけん」の製作配信事業の取締役を行う。
現在は、成長意欲のある経営者と対話を通じた独自のコンサルティング手法を展開し、事業会社の新規事業の開発と実現を資本政策を活用して支援する。経営者の頭と心のモヤモヤをスッキリさせることを主な生業とする。
主な書著に『売上を伸ばし続けるにはワケがある 営業マネジャーの教科書』『ドラッカーが教える実践マーケティング戦略』『ドラッカーが教える問題解決のセオリー』『頭のモヤモヤをスッキリさせる思考術』(以上、総合法令出版)、『この1冊でわかる! M&A実務のプロセスとポイント』(共著、中央経済社)などがある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。