DC,確定拠出年金
(写真=PIXTA)

確定拠出年金を始めた時は、よくわからないので元本保証の定期預金にだけ預けていた人も多いのではないだろうか。しかし、せっかく税金の優遇がある制度なので自分の老後の資産を増やすために投資商品などを取り入れながら活用することをオススメする。とはいえ、確定拠出年金の運用は自己責任なので、運用の内容をチェックし、定期的なメンテナンスをする必要がある。正しい方法を理解しておきたい。

状況に合わせて配分を変える!

確定拠出年金の商品は大きく分けると定期預金や一部の保険などの「元本が確保される商品」と投資信託などの「元本が確保されない投資商品」の2つに分かれる。商品のラインナップ数でいうと、投資信託が圧倒的に多いにもかかわらず、元本確保型の商品に預けている人が全体の約6割にのぼっている。

税金の優遇が手厚い制度なので、投資商品を取り入れて税金優遇のメリットをしっかり享受したい。一度、自分が選択している商品を見直してみよう。

その方法として、 確定拠出年金インターネットサービス を活用すると便利だ。確定拠出年金インターネットサービスとは、拠出状況、残高や時価評価額が確認できるウェブサイトのことだ。このウェブサイトを使って拠出金額の「配分変更」や「スイッチング」などのメンテナンスができるのだ。

「配分変更」とは、毎月買い付ける運用商品の比率(金額)を変えることだ。投資商品を多めに入れることによって、今までよりもリターンが期待できるようになる。

例えば、今まで100%定期預金で積み立てていたものを、25%ずつ外国株式と日本株式の投資信託に変えてみる。すると定期預金50%、外国株式投信25%、日本株式投信25%という買い付け割合になる。ただ、リスクの許容範囲は人によって違うので、最初は数%から始めてみるのもいいだろう。また、今まで買い付けてきた商品が変わるわけではないので、配分を変更した時点では資産の総額に変化はない。

スイッチングという方法も

確定拠出年金は最初に運用方針を決めるが、時間が経つにつれて資産のバランスが崩れることがある。その場合持っている資産を修正して元のバランスを保つことも必要だ。例えば、当初の利回りを超えて予想以上の利益が出てしまった商品がある場合、利益の出ている商品により多くの資産を移したくなるのが人間の心理だが、投資の基本から言えば、逆のことをすることが正しいと言えよう。

元のバランスになるように利益の出ている商品を売り、比率が下がっている他の商品を買い足すことだ。これを「リバランス」という。リバランスをすることで、トータル資産の増加に結びつけることができるのだ。

確定拠出年金で実際にリバランスする場合には、「スイッチング」をする必要がある。スイッチングとは、現在持っている運用商品の一部、または全部を売却して他の運用商品に買い換えることである。例えば、投資商品A、B、Cをそれぞれ50万円ずつ所有していたものをAはそのまま、Bを全額売却して、Cを25万円買い足し、そして新たにDを25万円買い付けるという具合だ。

しかし、このリバランスは利益が出るたびにする必要はなく、年に1度くらいの見直しでいいだろう。気をつけなくはいけないのは、売却や解約することによって一定の手数料がかかる場合があるので、こちらもいくらかかるのか事前に調べておくとよいだろう。

配分変更とスイッチングを混同している人が多いが、配分変更は今後の資産に対して変更を行うのに対し、スイッチングは今持っている資産に変更を行うという点が違うことを理解しておこう。

メンテナンスはどのタイミングがベスト?

メンテナンスのタイミングには特に決まりがあるわけではない。半年か1年に1度「残高通知」が送られて来るので、そのタイミングで内容をチェックすることを習慣にしてもいいだろう。あるいは、1月1日とか誕生日に見直しをする、と決めると覚えやすくていいかもしれない。最初に決めたまま何もせず放置するということだけは避けたい。

さらに、「100年に1度の◯◯ショック」というように、金融業界に激震が走るようなことがあった場合、「やっぱり運用は怖い」といって慌てて売って定期預金に全額預け替えるというようなことを繰り返すと、いつまでたっても資産は増えない。ではどうすればいいかというと、「なにもしない」ということをオススメする。もともと確定拠出年金は60歳以降まで引き出すことができないので、「下がったら受け取るまでにまた上がる」くらいの気持ちでいるといいだろう。つまり、メンテナンスは感情に左右されるのではなく、1年に1度など定期的に行う方が良いのだ。

年齢によって考え方も違う

定期的なメンテナンスに加え、運用する商品や資産配分については、年代によって変えることをオススメする。20代、30代であれば年金を受け取るまでに時間がたくさんあるので、投資商品を多めにしたリスクを取った戦略をとることができる。しかし、50代を超えると年金を受け取るまでの運用期間も短くなるので、出口を意識した戦略が必要になる。

例えば、先進国債券や新興国債券のように比較的安定しているものを多めの配分にするなど、年齢によってもリバランスが必要になってくるのだ。確定拠出年金の運用は全て自己責任である。自分の老後を豊かに過ごすためにも、誰でもある程度の投資の知識は持つべきであるといえよう。

黒須かおり
ファイナンシャルプランナー(AFP)・相続士(日本相続士協会)
女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてライフプランのコンサルティングを行う。住宅ローンや教育費から、相続や老後のマネー相談まで、幅広い資金計画のアドバイスを手がけている。現在女性起業家を中心とするコンサルタントとしても活動中。 FPcafé 登録FP。