節税,確定拠出年金
(写真=PIXTA)

確定拠出年金制度が日本に導入されて15年以上が経過しようとしている。2001年10月にスタートした際、自己責任型の年金制度が日本に浸透するかどうかが問われていたが、野村総合研究所のレポートによれば、2015年3月には加入者は500万人近くになり、運用資産額は8兆円を超えた。普及の一因として、確定拠出年金が持つ「節税効果」が挙げられる。では、その効力とは一体、どれほどなのだろうか。

確定拠出年金って?

まずは確定拠出年金の基礎を確認しよう。確定拠出年金は私的年金のひとつで、加入者が現役で働いている期間に自ら掛金を毎月出し、その資金を預金や保険、投資信託などで運用し、結果、その損益が老後の年金に反映されるというものだ。既存の退職金制度や確定給付年金との大きな違いとしては、加入者自らが運用の対象となる金融商品を選び、自分の判断で資産を運用していくという点にある。

確定拠出年金は大きく分けて2種類あり、一つは会社が導入して掛金を拠出する「企業型」、もう一つは個人が掛金の額を決めて拠出する「個人型」である。公務員や私立学校教職員など共済組合に入っている人、専業主婦(国民年金第三号被保険者)、一部の企業年金導入済みの企業に勤務しているサラリーマンを除けば、基本的に誰でも入れる。掛金は月額5000円から拠出可能だ。60歳までは引出不可能となっている。受給開始年齢は60歳から70歳の間で選択できる。

確定拠出年金の節税効果はどのくらい?

確定拠出年金のさしあたってのメリットは、その節税効果にある。しかも、それは1回限りではない。「毎月の掛け金を支払うとき」「運用期間中」「年金受取時」の3つの場面で税制優遇が受けられるのだ。具体的には次のようなものである。

(1)毎月の掛け金を支払うとき

確定拠出年金は小規模企業共済と同様に取り扱われるため、その掛金はすべて所得税の課税の基礎となる所得から全額控除ができる。これを個人年金保険で運用した場合、その結果は如実だ。

たとえば、年収600万円のサラリーマンが自分の老後のために毎月2万円拠出したとする。2万円の拠出先が通常の個人年金保険の場合、税金計算上は次がオトクになる金額となる。

所得税…4万円(生命保険料控除)×20%(税率)=8000円
住民税…2万8000円(生命保険料控除)×10%(税率)=2800円

もしこの拠出先が確定拠出年金だったら、税金計算上は次がオトクになる金額となる。

所得税…24万円(確定拠出年金控除)×20%(税率)=4万8000円
住民税…24万円(確定拠出年金控除)×10%(税率)=2万4000円

個人年金として支払った場合のオトク額はトータルで1万0800円、確定拠出年金で支払った場合のオトク額はトータルで7万2000円だ。確定拠出年金だと実に6.6倍ものキャッシュバックが実現するのである。

(2)運用期間中

運用期間中、利息が発生した場合や売却して利益が確定した場合には通常20.315%の税金(所得税15.315%、住民税5%)が天引きされる。しかし、確定拠出年金として運用している場合には、これらの利息や値上がり益については非課税だ。

仮に毎月2万3000円を20年間積み立てたとし、運用収益は2%だとする。積み立てた元本の合計は552万円、一般の金融商品で積み立てた場合は、運用益の20.315%が源泉徴収されるため、元利合わせて約653万円になる。

一方、これを確定拠出年金として運用した場合には、運用益2%がそのまま非課税となるため、約682万円。つまり、金融商品として運用した場合より、およそ30万円近く運用益が増えるのである。

(3)受け取るとき

確定拠出年金は、60歳以降にそれまで運用してきた資金を受け取ることになるのだが、その方法は次のいずれかになる。

・一時金としてまとめて受け取る方法
・年金形式で何年かにわたって受け取る方法
・一部を一時金として受取り、残りを年金として受け取る方法

この場合、通常の個人年金だと一時金は一時所得として、年金部分は雑所得として申告しなければならない。しかし、これが確定拠出年金ならば、一時金部分は退職所得として申告することになる。退職所得として扱われた場合、加入年数が20年以下ならば原則「40万円×加入年数」、20年超ならば「800万円+70万円×(加入年数-20年)」が非課税となる。加入年数が30年ならば、1500万円まで非課税となるのだ。対して、一時所得の場合は50万円しか非課税とならない。

また、確定拠出年金の場合、年金部分は雑所得でも公的年金等控除の対象となる。65歳未満なら最低70万円まで、65歳以上ならば120万円までは税金がかからない。つまり、一般の民間保険で運用するよりはるかにオトクなのである。

今年の1月29日に日銀がマイナス金利を発表、各種預貯金の金利は更に利率を下げ、生命保険の一部も販売を停止した。しかし、金利の事情は変わっても、税制はそう大きくは変わらない。税率10%や20%が影響する税金での節約は、大手銀行の金利の0.001%(普通預金)や0.025%(定期預金)に比べて、家計へのインパクトが大きい。

老後への備えだけでなく、資産運用の一環としても、確定拠出年金を活用するのは賢明な選択だと言えるだろう。

鈴木 まゆ子 税理士
税理士鈴木まゆ子事務所代表。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。妊娠・出産・育児の傍ら、税理士試験を受験し09年に合格、12年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を専業とする行政書士の夫と共に外国人の起業支援に従事する。現在、国際相続などについての記事執筆に取り組む。税金や金銭に絡む心理についても独自に研究している。ブログ「 税理士がつぶやくおカネのカラクリ

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