「iDeCo(イデコ)」というコトバをご存じだろうか。確定拠出年金普及・推進協議会が、2016年9月に発表した「個人型確定拠出年金」の愛称である。
個人型DC(DC=Defined Contribution)とも呼ばれるこの年金制度は、来年から加入対象範囲が大きく広がり、ほぼすべての人が加入対象者となる。しかし、まだ認知度が低いため、覚えやすい名前にして、普及拡大につなげるのが狙いである。ここでは、個人型DC(iDeCo)とその主な運用対象である投資信託の概要と運用スタイルなどを紹介したい。
「iDeCo」は、老後に備える私的年金
確定拠出年金(DC)は、国民年金や厚生年金などの公的制度と違い、個人が老後の生活に備えて任意加入できる私的年金として2001年に導入された。企業や加入者が毎月一定額(加入者それぞれの状況に応じて年間の掛金上限が異なります)を拠出し、加入者が選択した金融商品を専用口座で運用する仕組みだ。
「企業型DC」と「個人型DC」の2タイプがあり、企業型DCは掛金を企業が支払い、従業員がそれに上乗せできる。一方の個人型DC(iDeCo)は、これまで自営業者や一部の会社員に限られていたが、2017年1月から、公務員や専業主婦をはじめ、ほぼ誰もが利用できるようになる。
その最大のメリットは、優遇税制にある。掛金は所得控除されて税金がその分安くなるうえ、運用中の値上がり益や、利息・配当も非課税となる。転職してもそのまま持ち運べるポータビリティ制度も魅力。一方で、60歳になるまで資金を引き出すことができないのは、デメリットと感じる人もいるだろう。
投資対象は金融機関によってさまざま
iDeCoの投資対象を大別すれば、元本確保型と元本確保型以外に分かれる。預金や保険を投資対象とする元本確保型と、国内外の株式や債券などに投資する投資信託が一般的だ。他には不動産投資信託(REIT)を用意しているところもある。投資対象は金融機関によってさまざま。例えば、りそな銀行であれば30以上の商品から選ぶことができる。
「投資信託って何?」という方のために簡単に触れておこう。投資信託を一言で表すと、ファンドマネージャーと呼ばれる運用のプロが、投資家から集めた資金を株式や債券などに投資し、その運用リターンを投資家が享受する仕組みの金融商品だ。投資対象の国内外の株式や債券などは値動きがあるので、元本割れの可能性もある。
投資信託の運用スタイルには、アクティブ型とパッシブ型がある。前者は、市場や銘柄の調査結果や見通しを基に、市場の平均的な収益率を上回る運用成果をあげようとするもので、後者は市場全体の平均的な収益を獲得することを目的とする。パッシブ型には、運用成績の比較対象(ベンチマーク)となるインデックス(日経平均株価やTOPIXなど)が設定されており、インデックスと連動するように運用される。
リスク許容度に合わせた運用スタンスを
iDeCoでは、加入者が指定する配分割合でこれらの金融商品に毎月の掛金を割り振る。商品の選択とその割合は、個人のリスク許容度次第。つまり極端に言えば、元本割れは避けたいと考えるか、損する可能性はあっても大きな利益を狙いたいと考えるかにより、運用スタンスは変わってくる。
リスクの低い順に並べると、一般に、定期預金など元本確保型、債券型、株式型となる。また海外の金融商品では為替リスクが加わり、先進国よりも新興国の商品の方が一般的に変動は大きい。組み合わせをどうすればよいかわからない、選ぶのが面倒、という人向きには、運用会社が株式、債券などの投資比率をあらかじめ定めたバランス型ファンドを選んでも良いだろう。
リスク許容度は年齢によっても変化する。若いうちは比較的リスクの高い金融商品に投資し、年を重ねるにつれてその比率を下げ、いざ取り崩す年齢になったときに価格変動リスクを減らしておくと安心だとされている。
なお、毎月の掛金から一定の金額で金融商品を購入する場合、投資期間が長ければ、価格が高いときは購入する口数は少なく、安いときに多く買うため、平均コストが下がるメリットもある。
iDeCoの「税制メリット」
iDeCoの税制メリットは3つあり、①掛金全額が所得控除の対象となる、②運用益が非課税、③受取時に退職所得控除(一時金として受け取る場合)、公的年金等控除(年金受け取りの場合)を活用することができる。
例えば、仮に月5000円を積み立てると年間6万円の積立金額が所得控除として全額非課税となる。加入者の所得税と住民税を合わせた税率が15%の場合、「6万円?15%=9000円」の税制メリットを享受できる計算だ。
節税余地の少ない給与所得者にとっては数少ない税対策といえるだろう。所得がない場合には、①のメリットを享受できないが、②の運用益にかかる約2割の所得税・住民税(20.315%:所得税15.315%、住民税5%)が非課税になるという点は魅力的だろう。
来年度から投資対象者も広がり、多くの人にとって投資を身近なものにするチャンスと言えるだろう。今一度、自分のこれからの備えを検討してみるのはいかがだろうか。
※当記事は2016年9月現在の税制・関係法令などに基づき記載しております。今後、税務の取扱いなどが変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。(提供: 確定拠出年金スタートクラブ )
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