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(写真=PIXTA)

会社組織の中でも中堅社員として仕事の権限や責任も増してくる30代。独立を考えたり、同業他社、異業種への転職に挑戦したりするビジネスパーソンも増えてくる世代だ。会社を離れる際にはこれまで築き上げた人脈を維持するのに注力する一方で、自分自身の事務処理は後回しとなり、忘れがちになるのが積立資産である確定拠出年金である。慌ただしい転職時に注意しておきたい確定拠出年金のポイントを解説しよう。

会社任せから従業員自らの運用へ

毎月給与から社会保険料が天引きされ、年金としていくら支払っているのか気に留めないケースも多いだろう。ましてや、転職がちらつく30代のビジネスパーソンにとって、年金の受給資格が得られるのは数十年も先の話だ。

年金制度そのものに馴染みがなく、確定拠出年金と聞いてもピンとこない人も少なくないはずだ。日本の年金制度は3段階に区分されている。1階が国民年金、2階が厚生年金、3階部分に確定拠出年金(DC)が相当する。これまで3階部分は、確定給付型の企業年金が一般的で、掛金を会社が運用していた。

これまでの主流だった確定給付型年金は、あらかじめ約束された年金額を保障し、運用での損失は企業が肩代わりしてきたが、問題点として、中小企業や自営業者に十分に普及していない、転職時には、年金資産が持ち出せないこと等があり、2001年に確定拠出年金制度がスタートした。

この制度がこれまでの年金と大きく異なるのは、加入者である従業員1人1人が掛金を運用しなければならない点だ。また、確定拠出年金には、会社が掛金を負担する企業型DCと、加入者個人が負担する個人型DCの2種類がある。

転職ごとに持ち出し可能、リスクは自己責任

日本の労働市場において、転職が珍しくなくなりつつある中、確定拠出年金が最大のメリットを発揮するのが、そのポータビリティ制度だ。従来の企業年金制度の問題点を改善するために導入された確定拠出年金では、転職する際、年金資産を在籍していた会社から持ち出せるほか、個人型DCに資産を移せば、引き続き税制の優遇措置が適用される。

掛金は全額所得控除となるのに加え、金融商品の運用益に掛かる税金(源泉分離課税20.315%)が非課税となり、再投資に回すことができる。投資スタイルも従業員自らが決定することができ、リスクを抑えた安全運用、長期的な視点でハイリスク・ハイリターンなど自分好みに戦略を立てることができる。

会社が運用するより高い利益を生み出す可能性がある一方、損失は自らの年金受給額に直接反映され、自己責任の度合いが増す。日銀のマイナス金利導入後、日本国債の利回りが低下し、企業年金基金が運用方針の見直しなどを検討するなか、これまでは他人事として傍観できた投資環境も、確定拠出年金では、運用者である従業員自身が、金融市場の状況をフォローしながら投資戦略を練る手間暇をかける必要に迫られる。

転職先の制度をチェック

持ち出す確定拠出年金は、転職先がどのような制度を採用しているかによって手続きが異なってくる。転職先に確定拠出年金制度がある場合は、資産を移行することができるが、離退職した会社で運用していた金融商品から、転職先の会社で取り扱う金融商品へ変更する。また、転職先に企業年金や企業型DCがない場合や、自営業者になる場合は、個人型DCに移行しなければならない。

この際、退職後6カ月以内に銀行など、確定拠出年金の運営管理機関を見つけ、申し込み手続きをする。期限内に手続きが済まないと、国民年金基金連合会へ移換され、その際に手数料、毎月の管理料などが発生するため、注意が必要だ。

転職時に必要な確定拠出年金のポイントを把握していただけたろうか。これらのポイントを踏まえ、新たな一歩を踏み出す際、その先の将来の準備も忘れずにしておこう。(提供: 確定拠出年金スタートクラブ

※当記事は2016年9月現在の税制・関係法令などに基づき記載しております。今後、税務の取扱いなどが変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

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