iDeCo,確定拠出年金,節税,金融機関の選び方
(写真=PIXTA)

個人型確定拠出型年金(iDeCo:愛称イデコ)と聞くと何やら難しいイメージを感じる運用者も多いと思う。しかし筆者は、個人型確定拠出年金は最強の運用法と考えている。確定拠出年金を始める際の金融機関、金融商品の選び方、掛金の上限額について説明する。

1. 運用コスト 信託報酬は0.40%程度を目安に

筆者がよく見かけるiDeCoの紹介書籍や記事などには、「商品ラインナップ」から「金融機関を決めましょう」とされているものが多い。しかし、判断時に気をつけなければならないのは、「運用対象のコストチェック」を行うことである。投資信託の「信託報酬は0.40%程度」を目安にするといいだろう。

以下の3つを頭に入れておいていただきたい。
(1)商品が沢山あっても運用コストが高いものは排除すべき
(2)商品ラインナップが揃っている金融機関に決めた結果、投資商品のコストが高いことに気付かない可能性がある
(3)コストが安い金融機関にも結果的に十分な商品ラインアップがある

DC年金用といった名前が付いているからという理由だけで選んではいけない。同じ金融機関の中でも、DC向け外国株式のインデックス型の信託報酬が0.2268%のものがある一方で、アクティブ型1.458%の設定がされているものもある。同じ外国株式の投資対象でも、信託報酬が6倍強も変わってくるのだから驚きだ。この2銘柄の1年リターンを比較すると、インデックス型が1.41%、アクティブ型を上回っていた。

インデックスでも信託報酬0.864%のものも存在した。「信託報酬0.40%程度」しかしコストの低さに加えて「純資産の大きさ」も比較対象として必要な事項である。

「賢い投資家」のあるべき姿 コストの安いインデックス投信選びをiDeCoの運用に限った話でなく、投資家はまず運用にかかるコストに敏感になっていただきたい。「高い信託報酬=高リターン」とは言えないのが実態である。

『敗者のゲーム』(日本経済新聞出版社)の著者で世界的に著名な投資コンサルタントのチャールズ・エリス氏は、市場平均を上回る運用成績を目指す「アクティブ運用」型の投信の過去の成績は、「おおむね、1年で約6割、10年で約7割、20年で約8割が市場平均に負けている」と述べている。投資家のリターン=「運用成果-投資コスト」と大まかに考えれば、高い信託報酬を払えば、投資家のリターンは減少する。

「アクティブ運用」は市場平均を上回る運用を目指す、として高い信託報酬設定が多く見受けられる。対して、市場平均と連動する設計が「インデックス運用」あるいは「パッシブ運用」となる。そして、信託報酬が低く設定されているものがある。

インデックスについて簡単に説明すると、例えば、日経平均株価というインデックス(指標)は日本を代表する225銘柄を網羅する。日経平均株価のインデックス1銘柄に投資をすれば、225銘柄に分散投資をしていることになる。高い費用をかけて効果が期待できるかわからない勝負に出るのではなく、コントロールできる「低いコスト」に投資を振り向けることが「賢い投資家」のあるべき姿と考えられる。低コストの代表格であるETFがiDeCo商品ラインナップには残念ながら無いので、できるだけコストの安いインデックス投信をまず、選択基準に置いて欲しい。(元本確保型商品のみを選択しようと考える方を除く)

2. 運営管理機関手数料 ゼロの金融機関も

iDeCoを利用する場合、国民年金連合会等に167円/月額はどこの金融機関を選んでも共通にかかる費用である。一方、運営管理機関手数料はゼロ円から450円もあり、年額で5400円もの違いがある。年額5000円以上の運営管理機関手数料のある金融機関の商品ラインナップには投信は7本で、信託報酬1%超は1本のみであった。運営管理手数料が高いから有利な商品ラインナップであったとは残念ながら言えなかった。また海外の資産を対象にしたものが皆無であった。運営管理手数料がゼロの金融機関があるということを認識して欲しい。

3. 「商品選択は極めて面倒」 ラインナップは多ければ多いほど良い?

iDeCoの商品ラインナップは多ければ多いほど良いのであろうか? 投資に詳しく、投資する商品を頻繁に変更しようと思っている投資家にとってはその方が良いとの考えもある。筆者は海外ETFの専門家を自負している。金融機関に27年超勤続しており投資信託の乗換え販売体制などの問題点を指摘し続けてきた。筆者は実際に個人型確定拠出年金の検討を行い、実際に口座開設、掛金拠出を開始した。

自身でやってみて感じたことは「商品選択は極めて面倒だな」ということだ。商品が多いがひとつひとつ精査していく事は時間がかかるのである。ある意味で、良い商品のみ厳選されていて、その中から選ぶ方が、一般投資家には楽であろうと思ったのも事実である。そこで出て来た結論が「コストの安いインデックス型」が充実している商品ラインナップが良いとの結論である。ある特殊な分野の商品を選択したい場合には取扱い金融機関が限られる場合もある。

4. 金融機関比較ガイド

iDeCoの商品ラインナップや運営管理機関の選定に便利なサイトがある。投資信託の分析等で著名なモーニングスターの「iDeCo 個人型確定拠出年金ガイド」である。商品内容検索、手数料比較に加えiDeCoサイトランキングと内容が充実していると思う。検討される方は参考にして頂くと便利だと思う。

iDeCoが最強の投資方法との持論を唱えるコメンテーターが増えている。所得税控除や運用益非課税を考えれば、まず可能な範囲でiDeCoを検討することが、投資家の資産形成プランに大きく役立つであろう。

安東隆司(あんどう・りゅうじ)
RIA JAPAN おカネ学株式会社代表取締役。CFP®ファイナンシャル・プランナー、元プライベート・バンカー。日米欧の銀行・証券・信託銀行に26年勤務後、独立。お客様サイドに立った助言を実践するためには高い手数料は弊害と考え、証券関連の手数料を受け取らない内閣総理大臣登録の「投資助言業」を経営。著書に 『iDeCo おしえてあげる 1時間でわかる版』 がある。