確定拠出年金,落とし穴,注意点
(写真=PIXTA)

現在、日本は急速に高齢化が進んでいる一方で、その高齢者を支えるための年金制度が危機に瀕している。従来の制度が限界を迎える中で、最近注目されているのが「確定拠出年金」である。

それまで企業年金の主流だった「確定給付企業年金」とは、社員が将来受け取る年金額が変わらないのが建前となっており、万一、運用損になった場合は企業が不足分を補填していた。しかし1990年代に入り、年金資産の積立不足等の問題が企業経営を圧迫し始め、さらに雇用の流動化も進んだことにより、制度自体が時流に合わないものとなっていた。

確定拠出年金は、今までの制度と何が違うのか?

そこで、確定給付型年金に代わって導入されるようになったのが、確定拠出年金である。確定拠出年金とは制度上、「個人型」と「企業型」の2種類に分けられる。

個人型とは個人が任意に加入し、掛け金も自分で支払うというものであり、企業型とは会社が自社の年金制度として導入するものである。会社が企業型確定拠出年金を採用している場合、従業員は強制加入となるが、代わりに企業が掛け金を拠出したり、従業員と折半したりといったメリットがある(企業型DCの選択制は任意加入)。

確定拠出年金が従来の制度と大きく違うのは、年金の運用先を自分で選び、そこにお金を投資して運用を委託するという点である。つまり、将来いくらもらえるのかは、本人の選択次第ということになる。確定拠出年金の根底にある思想とは「自己責任」だ。

確定拠出年金のメリットとデメリット

確定拠出年金がとり扱っている投資商品を大きく分けると、

・元本確保型(「定期預金」「保険」など)
・元本確保ではないもの(投資信託)

……の2種類となる。

確定拠出年金の運営を委託する金融機関について、企業型に加入する場合は、自分で選ぶことはできない。会社と提携している委託先の商品の中から選択する。個人の場合は、自分で金融機関の選択から行う必要がある。

ではここで、確定拠出年金のメリットを簡単に挙げておこう。

(1)掛け金が非課税
これが確定拠出年金の最大のメリットであり、掛け金が全額所得控除の対象となる。

(2)運用コストが安い
多くの投資商品の売買手数料がゼロ円。信託報酬も、全体的に低めに設定されていたり、専用の低コスト商品が用意されていることもある。

(3)売買が何度でも可能
投資する商品の売買や資金配分の変更は何度でも可能で、すべて非課税。

続いて、確定拠出年金のデメリットもお伝えしておこう。

(1)60歳まで引き出しができない
受けとり開始時期は60〜70歳の間で選択し、70歳までには受給を開始しなければならない。積立期間が短い場合は、その分、受給開始年齢が遅れることになる。

(2)解約できない
確定拠出年金は、1度加入すると原則解約することができない。家計が苦しいなどの理由で拠出金を払うことが難しくなった場合は、引き落としを一時停止する形となり、そうなった場合でも、毎月数十円以上の維持手数料を支払うことが必要。

(3)特別法人税がかかる
毎年の資産運用残高に対して、特別法人税が1.173%かかることになっているが、現在は2017年3月まで凍結されている。

確定拠出年金の落とし穴とは

2016年6月、年金企業連合会から発表された「2014年度決算 確定拠出年金実態調査結果(概要)」によると、加入者が出資をしている投資商品のうち、約6割は定期預金などの元本確保型を選択しているということが明らかになっている。

結局のところ、運用がよくわからない従業員は元本確保型を選んでいることになるが、この「元本確保」には落とし穴がある。元本確保といいつつ、実際は元本割れすることがあるという点である。

保険は、元本確保型とされる商品の一種だが、売却する際には解約控除を差し引かれることがあり、それが利息を上回ると、元本割れを起こしてしまう。定期預金であれば、確かに金利を上回る解約手数料をとられることはないが、実際は毎月運用手数料がかかっている。

それなら「どの商品に投資すればいいのか?」といっても、確定拠出年金は基本的に証券会社などからアドバイザーが派遣されることはない。だからその分、費用が安く抑えられているのである。

これからは「自分の老後は自分で面倒を見る」時代

世間では、確定拠出年金の良い面ばかりが強調されているような気がする。

つまり、

「税金控除がお得」
「会社の都合で年金を減らされることがない」
「増やせるかどうかは自分次第」

といったうたい文句である。

その言葉の裏に隠された本質的な部分がどうなのかというと、早い話が「企業の力では年金の運用ができなくなった」ために放棄をしたということである。企業ですら匙を投げた運用を、我々が個人で利用したところで、どれだけ自分の年金を増やせるのか疑問が残る。

確かに、確定拠出年金には加入するメリットもなくはないが、結局、税制優遇があったところで、運用でうまくいかなければ元も子もない。いっそのこと、確定拠出年金に加入する場合は最低限の掛け金だけにしておき、新たに自分自身でより良い運用先を探して、そこにお金を投じてみるというのも、ひとつの方法だと思うがいかがだろうか。

俣野成敏 (またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。


【お詫びと訂正】

本稿は、12月3日時点で「元本保証」という表現をタイトル、本文内で用いておりましたが、正確な表現である「元本確保」に修正いたしました。読者、関係者の皆様には、不適切な表現の記事を公開したことをお詫びいたします。

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