個人型確定拠出年金(iDeCo)は、以前は「401k」や「個人型DC」などと呼ばれていたが、愛称を「iDeCo」と名付けられるとともに、2017年からは加入対象が主婦や公務員にも拡大された。しかし、投資や資産運用になじみのない人にとっては、いまだに敷居が高い制度かもしれない。iDeCoを始めてみたものの、運用商品の選び方が分からず、ほとんどを定期預金など元本確保型商品で運用している人もいるだろう。
このコラムでは、iDeCoでの運用商品にはどういうものがあるのか、それぞれにどのような特徴があるのかを紹介する。
商品を分類して理解する
まず、iDeCoの運用商品は、「元本確保型」と「それ以外のタイプ」に大きく分かれる。「元本確保型」とは、満期を迎えた時点で最低限元本を払い戻す方針で運用されている商品のことをさす。対して「それ以外のタイプ」とは、元本額から大きく増えるかもしれないが、元本を割り込む可能性もある商品ということだ。
iDeCoにおける後者の代表的な運用商品は「投資信託」である。投資対象は、主に株式、債券、不動産(REIT:不動産投資信託)などに分かれる。さらに、日本国内の資産と海外の資産とがあり、日本株式、日本債券、国内REIT(J-REIT)、外国株式、外国債券、外国REITなどに分類することができる。
債券に比べると、株式や不動産は値動きが大きく、大きな利益を得られる可能性はあるが、損をする可能性も高くなる。海外資産の運用商品は、商品そのものの値動きに加えて為替相場の影響も受けるので、国内資産の運用商品よりも値動きが大きくなる傾向にある。
また、運用会社によっては、上記の変動型の商品を組み合わせた「バランス型」あるいは「資産分散型」と呼ばれる商品も取り扱っている。
資産配分を考える
投資の世界には「卵は1つのカゴに盛るな」という格言があるが、これは、iDeCoを利用する際にも当てはまる。どの投資対象(株式、債券、不動産など)を選ぶかは、自分がどれだけ損失を許容できるか、またはどの分野に興味があるかによって変わるが、日本国内の資産と海外の資産とには最低限分散して保有しておきたい。
また、iDeCoの資産の中だけで資産分散を考えるのではなく、自分が保有しているあらゆる資産全体の中でバランスを取ることも大切だ。
例えば、ある30代の人がiDeCoで資産運用する場合、元本確保型600万円、日本株式200万円、外国株式200万円の計1,000万円だったとしよう。この場合、元本確保型とそれ以外の比率は6対4、日本株式と外国株式の比率は1対1と、一見するとバランスがいいように見える。
しかし、この人がiDeCoの他に1,000万円の預金を持っていたらどうだろうか。安全資産の合計は、預金1,000万円と元本確保型600万円を合わせた1,600万になる。資産全体で見ると、安全資産とリスク性資産の比率は8対2と、30代にしてはかなり前者に偏った資産配分になる。
iDeCoの大きなメリットとして、運用中に得た利益に対して、通常20.315%かかる税金が非課税になるというものがある。大きく利益が出た方が、非課税による優遇の恩恵も大きくなるのだ。リスクを許容できる人は、iDeCoではリスク性資産の割合を増やして運用収益を追い求めてみるのも一興である。
手数料(信託報酬)に着目する
商品選びでもう一つ注意してほしいのが、手数料である。投資信託には「信託報酬」という手数料がかかる。信託報酬の水準は運用商品ごとに異なり、一番安いものと高いものでは、10倍以上の差がつくこともある。
例えば、信託報酬が0.15%と1.5%の商品があったとしよう。一見どちらも数値が小さいため、それほど気にすることはないように思える。しかし、例えばそれぞれの商品を200万円ずつ保有していたとすると、前者では3,000円しかかからない信託報酬が、後者では3万円かかる計算になる。しかもそれは、保有している限り毎年かかるし、資産残高が大きくなればなるほど取られる信託報酬の額も大きくなる。
資産配分をどのようにすれば良いか迷っている人には、「バランス型」の運用商品もおすすめだ。しかし、バランス型の運用商品は、一般的に手数料が高い傾向にある。自分で組み合わせを考えることができれば、信託報酬の安い商品を組み合わせて分散投資することができる。
iDeCoは運用益に税金がかからず、購入や預け替えの手数料も無料としているところが多い。つまり、運用商品を買い替えて資産配分を見直しやすいのである。投資や資産運用の勉強も兼ねて、ぜひiDeCoでいろいろな運用商品や資産配分を試してほしい。
(提供: 確定拠出年金スタートクラブ )
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