個人の少額投資を税制面で支援するNISA(少額投資非課税制度)が2014年1月に導入されてから間もなく4年になるが、2018年1月には、新たに「つみたてNISA」が導入される。ここでは、つみたてNISAの制度概要と、現行のNISAと比べてどのようなメリット・デメリットがあるのかを見ていこう。
若い世代の資産形成に主眼を置いた「つみたてNISA」
最初に、現行のNISAに加えてなぜまた別のタイプのNISAを導入するのか、その背景を見ていこう。2014年に現行のNISAが導入された最大の理由は、税制改正だった。2013年までは、株式にかかる譲渡・配当益への課税は一律10%の軽減税率が適用されていたが、2014年からは東日本大震災の復興税も含めて20%に引き上げられた。
上記の緩和措置として、金融業界の要望で創設されたのが現行のNISAだ。また、NISA導入には、金融資産に占める預貯金の割合が高い日本国民の意識を「貯蓄から投資へ」に誘導したいという金融当局の狙いもあった。
しかし、NISA導入後の買付実績をみると、60代が30%強、70代が22%強と過半数を占めており、20~30代の若い世代は11%とあきらかに少ない(金融庁の調査より)。そこで、将来の老後生活に不安を抱く世代に、若いうちからコツコツ資産形成をしてもらう目的で導入されるのが「つみたてNISA」だ。
現行のNISAもつみたてNISAも、値上がり益や配当金に課税されない点は同じだ。異なるのは、年間の優遇限度額、非課税になる期間、対象となる金融商品の種類、そして買い付けの方法だ。
つみたてNISAの年間の非課税限度額は、現行のNISAの120万円に対し40万円とかなり少ない。しかし、非課税期間は、現行のNISAが5年(再投資で最大10年)なのに対し、つみたてNISAは20年と長い。また、NISAは個別株式なども買えるのに対し、つみたてNISAでは長期分散投資に適した特定の投資信託に限定されている。さらに、一度に最大120万円の投資が可能な現行のNISAと違い、つみたてNISAでは一定金額を毎月投資する形になる。
非課税期間の長さは魅力だが、制約も多い……
これらの特徴を踏まえると、現行のNISAと比べたつみたてNISAのメリットとデメリットが見えてくる。つみたてNISAの最大のメリットは、非課税期間が20年と長いことだ。現行のNISAの非課税期間は5年だから、年間上限120万円を投資したとしても、5年間の総枠は120万円×5年=600万円止まりだ。一方、つみたてNISAは年間上限枠こそ低いが、期間が長いぶん、40万円×20年=800万円まで非課税枠を確保できる。
他方、つみたてNISAのデメリットは、投資対象が限定されることだ。多少のリスクを冒してでも高いリターンを狙いたいという投資家には、物足りないかもしれない。
また、つみたてNISAでは、スイッチング、すなわち買付済みの現資産(A投信)を他の資産(B投信)にまるまる乗り換えることができない。A投信の資産の売却はできるが、売却資金をB投信に振り換えることはできず。ゼロからB投信の積み立てを開始することになる。これは、現行のNISAが年間非課税枠さえ残っていればスイッチングできることとは大きく異なる。
このように見てくると、つみたてNISAは現行のNISAに比べるとかなり制約が多いことがわかる。逆に言えば、現行NISAでもつみたてNISAのような資産運用ができるため、現行のNISAの時限措置である2023年までは現行NISAを利用し、その後はつみたてNISAに移行するという手もあるだろう。
個人型確定拠出年金(iDeCo)も忘れるべからず!
ただし、忘れないでほしいのは、NISAに似た税制優遇措置のある制度として、個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)があることだ。iDeCoは、毎月一定額を積み立てるという点ではつみたてNISAと同じだが、積み立てた掛金は全額所得控除の対象になり、所得税・住民税が軽減される。つまり、将来の安心(老後資産形成)と今うれしい(税負担が軽減され手取りが増える)をいっぱんに叶える制度なのだ。
iDeCoの最大の欠点は、原則として60歳になるまで一切引き出せないことだ。だが、NISAと併用できるので、老後資金の蓄えを目的とするならば、まずはiDeCoに振り分けるようにするのが良いだろう。
(提供: 確定拠出年金スタートクラブ )
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