株式投資で資産を形成したいと思っている人は多いだろう。しかし、株式の銘柄は日本の国内市場だけでも4,000種類近くある。そのようななか、何を買えばいいかさっぱり分からないという人は、中長期投資として「テンバガー(ten bagger)投資」を行ってみてはいかがだろうか。
テンバガー(ten bagger)とは
野球では、1試合中に単打、二塁打、三塁打、本塁打を全て打つことを「サイクルヒット」と呼ぶ。なかなかお目にかかれないこのサイクルヒットの塁打数を合計すると10塁打となる。サイクルヒットに限らず、1試合で1人のバッターが合計10塁打以上を打つことを「テンバガー」と言う。これが転じて、アメリカのウォール街では、株価が10倍以上になることをテンバガーと呼んでいる。野球でテンバガーを達成するのは珍しいことだが、株式投資でもテンバガーを見つけるのは簡単ではない。
また、そのような爆発力を持つ銘柄には、相応のリスクもある。資産運用は、目的に応じて背負うリスクの多寡をコントロールすると良いと言われている。老後生活のための資金作りはiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)で備えつつ、余裕資金でテンバガー投資を行う、という選択肢も有り得るだろう。
過去のテンバガーの傾向
日本国内の上場銘柄は、東京証券取引所だけでも3,500社を超える。現在は業界大手となっている銘柄も初めから大企業だったわけではないので、テンバガー銘柄は少なからず存在するということだ。最近のテンバガー銘柄から傾向を探ってみよう。
【傾向その1】短期間で一気に上昇する
短期間で一気に株価が上昇するのは、時価総額の小さな小型株の特徴の一つだ。それまでほとんど注目されずに取引量も少なかった銘柄が、突発的なニュースや旬のテーマで突然注目を浴びると、時価総額の大きな大型株では考えられないような急騰を果たす場合がある。ただし、このような急騰は数日から1ヶ月ぐらいでピークを迎え、その後急落する場合も少なくないので注意が必要だ。
例えば、東証1部に上場しているインターネットサービス会社は、2015年12月にフィンテック関連の技術を無料で提供するとのニュースを受けて急騰した。そのニュースを受けて、株価は約1ヵ月の間に7倍以上になった。ただし、その後はじりじりと値を下げて、2017年11月現在では最高値の半分以下の株価で推移している。
【傾向その2】業績に支えられてじわじわと値を上げる
また、株価が一気に急騰するのではなく、好調な業績を受けてじわじわと値を上げて、気が付いたら10倍以上になっていたという銘柄も存在する。途中で値を下げることはあっても、業績に支えられていれば大きな崩れはなく、長い目で見れば上昇しているという銘柄だ。個人投資家が資産運用する場合には、ぜひ狙いたい銘柄である。
特に、大きなトレンドを捉えたビジネスモデルを持つ企業がテンバガー銘柄になる傾向にある。日本で言えば、少子高齢化に伴うシニアビジネスや、後継者不足に悩む中小企業のM&Aビジネスなどだ。世界的な傾向としては、作業工程の自動化(ロボット化)や、インターネット上のプラットフォームビジネスなどが該当するだろう。ただし、既にトレンドが鮮明な業種は、株価もそれ相応に上昇していることが多く、高値掴みには注意が必要だ。
一見地味な業務内容でも、社会に受け入れられる製品やサービスを真面目に提供して業績を伸ばしている小型中型株を長期にわたって保有するというのは、個人投資家の成功パターンの一つと言えるだろう。このような銘柄を探し出すのは大変だが、自分が共感できる企業を応援するという基本に戻って銘柄を選定してみてはどうだろうか。
老後資金はiDeCo、余裕資金でテンバガー投資
個人投資家が資産運用の一環としてテンバガーを狙うのなら、上記の【傾向その2】にあたる「じわじわと値を上げる銘柄」をお勧めしたい。事業内容や経営理念がしっかりしていて、かつ業績が伸びていれば、時間はかかるが大崩れの危険は少ない。
そのような銘柄は、普段の生活の中でも発見できるはずだ。気になった商品やサービスがあれば調べてみて、上場されていて企業理念に共感できたら買い、中長期で気長に上昇を待つのがテンバガー探しの王道だろう。
ただ10倍になる銘柄は簡単に見つかるものではない。老後生活の資金作りは、テンバガー投資よりも、毎年(毎月)一定額を積み立てて運用していくiDeCoの方が適していると言えるだろう。iDeCoとは個人型確定拠出年金の略称で、60歳になるまで引き出せない代わりに、拠出(積み立て)時、運用時、受取時に税制優遇を受けることができる制度だ。運用商品の選定や売買タイミングは自分で行う必要があるが、その分、自分のライフスタイルに沿った運用が行いやすい。
その一方で、iDeCoでは個別株投資はできず、短期間で資産が何倍にもなるということも考えづらい。そこで、iDeCoでコツコツ積み立てながら、余裕資金でテンバガー投資を行えば、欠点を補い合うことができるのではないだろうか。テンバガー狙いで資産運用するときは、iDeCoのような異なる目線や特徴を持つ運用方法と組み合わせることがポイントだと言える。(提供:確定拠出年金スタートクラブ)
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