2017年から加入対象が拡大し、iDeCo(イデコ)としてリニューアルされた個人型確定拠出年金。老後資金を準備するにあたり、その節税効果の高さに注目が集まっている。iDeCoを利用することによる実際の節税効果について、拠出時、運用時、そして、受け取り時に分けて解説する。
掛金を拠出したぶん税金が軽減される
iDeCoの税制メリットとして、掛金を拠出したぶん所得税と住民税が軽減されることがまず挙げられる。
本来、所得税や住民税は、年間の収入から社会保険料などさまざまな控除を引いた「課税所得」に税率が適用される。iDeCoに拠出した掛金もまた、全額所得控除の対象となることから、iDeCoを利用することで所得税や住民税の負担を軽くすることが可能だ。
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例えば、30歳で課税所得が400万円の人が毎月2万円をiDeCoに拠出した場合、課税所得は400万-(2万×12月)=376万円に減少する。課税所得400万円の場合の税率は30%(=所得税率20%+住民税率10%)であることから、24万円×30%=7万2,000円が年間で節税できるという結果になる。30歳から60歳まで課税所得および税率が不変と仮定した場合、30年間の節税効果の累計はじつに216万円になる。
運用益にも税金がかからない
次に、資産運用した際の税金がどうなるか見てみよう。
本来であれば、金融商品の運用によって得た売却益や配当金、利息などの利益に対しては、20.315%の源泉分離課税が発生する。しかし、iDeCoで運用した場合、その運用益は全額が非課税となる。
例えば、100万円で投資信託を購入し、その商品が1年後110万円になったときに売却したとする。通常の方法で資産運用を行っていた場合、売却益の10万円に対して20.315%、つまり2万315円の税金がかかり、実際に受け取れる金額は7万9,685円となる。
しかし、iDeCo口座で得た運用益に対しては、税金がかからない。上記の例でいうと、売却益10万円がまるまる受け取れることになる。
受け取り方は2種類から選べる
60歳以降にiDeCo口座からお金を引き出す際は、一時金として一括で受け取る方法と、年金形式で分割で受け取る方法があるほか、双方を併用することもできる。一時金(一括)で受け取る場合は「退職所得控除」が、年金形式(分割)で受け取る場合は「公的年金等控除」がそれぞれ適用される。
まず、一時金として受け取る場合は退職所得として扱われ、退職所得控除が適用される。退職所得控除額は、iDeCoの加入期間(=掛金を積み立てた期間)1年に対して40万円ずつ増加し、さらに加入期間が20年を超えると1年につき70万円増加するしくみとなっている。
例えば、iDeCoに10年間加入した場合、退職所得控除額は 40万円 × 10 = 400万円 となり、30年間加入した場合は40万円 × 20 + 70万円 × 10 = 1,500万円 となる。
つまり、30年間加入すれば、1,500万円までなら一括で受け取っても税金はかからないということになる。ただし、退職金や企業年金からの一時金などiDeCo以外からも退職所得が発生する場合は、それらと合算した金額が控除額を超えると税金が発生するため、注意が必要だ。
次に、年金として受け取る場合だが、iDeCoから受け取る年金は雑所得として扱われ、公的年金等控除が適用される。公的年金等控除には最低保証額が設けられており、年間の年金収入の合計額が、65歳未満だと70万まで、65歳以上だと120万円までならば、税金はかからない。
年金収入の額が上記の最低保証額を超えた場合はどうなるだろうか。詳しい計算方法は割愛するが、例えば、65歳未満で年間の公的年金が200万円の人の場合、公的年金等控除額は87万5,000円となり、課税所得は200万円 -87万5,000円=112万5,000円となる。
年金で受け取る場合も、公的年金などiDeCo以外から受け取る年金収入の額が大きくなるにしたがって、課税される税金も大きくなる。そのため、厚生年金などの年金額が多い人は注意が必要だ。
一括で受け取るか分割で受け取るかは人それぞれだが、選び方の目安としては、退職金が少ない人や長期間iDeCoに加入している人は「一時金」を、自営業の人や年金額が少ない人は年金形式を選ぶと、iDeCoの節税効果を有効に使えるだろう。
節税効果の高いiDeCoで老後の資産形成を
iDeCoは原則として60歳まで資産を引き出すことができない。そのため、用途に融通が利かないというデメリットもある。しかし、利用の仕方によっては、掛金を拠出するだけで年間数万円の税負担が軽減されるなど、非常に節税効果が高い制度だ。積極的に活用し、老後の資産形成に役立てて欲しい。(提供:確定拠出年金スタートクラブ)
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