2018年1月から始まる「つみたてNISA」は、従来のNISA(以下「一般NISA」)などと比べると、積立方法を少額かつ長期間にしたり、運用商品を限定するなど、「貯蓄から投資へ」という政府のメッセージ性がこれまで以上に強い制度となっている。少額から始められる積立投資のスタイルは、日本人の気質に合っていると言える。

iDeCo(個人型確定拠出年金)に引き続き、つみたてNISAという制度が誕生した2018年は、一般の人に積立投資を行う選択肢が充実した、いわば「つみたて元年」と言える年である。今回は、そもそも積立投資が推奨されている理由と、その効果を改めて紹介しよう。

金融資産に預貯金が多く、家計の資産が伸びていない状況

2018
(写真=PIXTA)

2016年末時点の日本の家計金融資産は約1,700兆円と言われているが、その52%の約900兆円は現金・預金である。これは、アメリカの14%、イギリスの24%と比べ、非常に高い数値となっている。

家計金融資産に占める現預金の比率が高いと、元本が目減りせず安心というメリットもあるが、経済が発展し物価が上昇しても、家計の資産が増えないというデメリットもある。実際、各国の家計金融資産の推移を比べてみると、アメリカの家計金融資産が1995年から3.11倍、イギリスが1997年から2.27倍になっているのに対し、日本の家計金融資産は1995年に比べ1.47倍に留まっている(各国とも2016年末時点の数値)。

アメリカやイギリスでは、資産形成を税制上優遇するなどの政策により、投資額が増加し、財産所得資産運用で得られる所得を大きく増やした経緯がある。よって、日本でも家計の資産形成を促すための政策が進められているが、その大きな柱の一つが、2018年から新たに始まる「つみたてNISA」である。

積立投資は少額から始めることができる

一般NISAの口座数は、2016年末で1,049万口座と着実に増え続けており、投資の必要性を感じる人が多いことの裏付けとなっている。一方で、一度も買い付けが行われていない口座は全体の50%以上を占めている。金融庁が公表している「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」の資料によると、投資を行わない理由として、「投資の知識がないから(47%)」、「投資は難しそうで怖いから(38%)」を抑えて、「まとまった資金がないから」と答えた人が73%と圧倒的に多い。

積立投資は、毎月数千円という単位から始められるものが多い。例えば、月々2万円ずつ貯金している人であれば、その中の1万円を積立投資に回すなど、スムーズに投資を始めやすいのである。

知っておきたいドル・コスト平均法

さらに、積立投資のメリットを理解するにあたっては、「ドル・コスト平均法」という手法を知っておきたい。ドル・コスト平均法とは、毎月一定の金額分だけ定期的に購入する手法であり、定額購入法とも言われる。毎月一定額を積み立てていく「つみたてNISA」や「iDeCo」は、この手法で投資することになる。

ドル・コスト平均法を行うメリットは、商品を毎月一定金額で購入するので一定口数購入する場合に比べ、平均取得価額を低く抑えられることにある。

例えば、商品を毎月1万円で買うと決めた場合、その商品が1口100円なら100口、1口200円なら50口、1口50円に下がれば200口、というように、値段が上がれば買い控え、値段が下がった時に大量に買うという手法を自動的に行うので、1口当たりの平均購入価格を安くできるのである。

また、投資初心者が陥りがちな「高値買い」を防いでくれるメリットもある。一度にまとまったお金を動かすと、金融商品を購入した直後にその価値が暴落した場合、損失が発生し、長期に渡ってその資産を動かせないなど、家計に支障が出てしまう。毎月少額ずつ投資する方法であれば、このリスクを大幅に減らすことができるのである。

最後に、心理的なメリットも見逃せない。まとまったお金を一度に投資する場合、どうしてもその値動きが気になり、価格の上下に一喜一憂してしまうものである。しかし、ドル・コスト平均法では、前述のように、値段が下がっても口数を多く買えるというメリットがあるので、心理的に受けるストレスが大幅に少なくなる。

今回紹介したように、積立投資は、投資を始めるには非常に優れた方法である。一昔前は、金融機関の口座で自分でせっせと積み立てをするしかなかったが、現在では、iDeCoやつみたてNISAなどの制度を活用すれば、積み立てが自動的にできるほか、税制上の優遇措置も享受できるようになった。積立投資を始める環境は、格段に整備されている。2018年の「つみたて元年」を機に、ぜひ少額からでも積立による資産形成を考えてみてはいかがだろうか。(提供:確定拠出年金スタートクラブ

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