米金融持株会社レイモンド・ジェームズ社の政治アナリスト、エド・ミルズ氏によると、トランプ大統領の再選の可能性は、米国内での新型肺炎コロナウイルスの拡大に左右される可能性があり、有権者はトランプ大統領が国民を守るリーダーとして適格かどうかを判断するという。
ミルズ氏は2月26日の会見で、失業率は4%以下で市場は過去最高値圏、ギャロップ世論調査の大統領支持率が最高水準に達し、「対抗することを最も恐れていた候補者」であるジョー・バイデン候補が民主党予備選で苦戦するなど、トランプ大統領の再選に「強い追い風」が吹いているにもかかわらず、「米国民は、国民を守る最高のリーダーを期待している」と説明し、国家安全保障(テロ攻撃からの保護)と経済安全保障(雇用保障)に加え、「医療保障」も含まれると語った。
米国内で新型肺炎の感染が拡大すれば、トランプ再選にとって最大の脅威に
ミルズ氏は、「新型肺炎の感染が拡大すれば、大統領と意見が異なっても保護されていると感じて投票するはずの米国民が、別の候補者への支持を考えるかもしれない」と語り、新型肺炎がトランプ大統領の再選にとって「最大の脅威になるかもしれない」と指摘した。
同氏は、「米国人の健康への影響は個人的な問題であり、特に死亡率は1%(通常の季節性インフルエンザの約10倍)だが、経済的な影響も大きい可能性がある」と説明した。
ワシントン・アップデート創設者のアンディ・フリードマン氏は、「新型肺炎の悪い影響が10月まで続くならば、トランプ大統領の再選機会に影響を与える可能性がある。新型肺炎が猛威を振るい続け、トランプ政権が封じ込めを誤る場合などは」と付け加えた。
フリードマン氏は、「新型肺炎は収束しても経済的な悪影響は残るというリスクが高まることだ。トランプ大統領の最大の特徴は経済の強さだ。景気が悪化して回復が遅れれば、一部の支持者は景気後退をトランプ政権のせいにするかもしれない。もっとも大半の支持者らは、新型肺炎はトランプ大統領が管理できないものと考え、影響が過ぎれば、強い経済を再建すると信じている。(彼らの見解では)トランプ大統領が就任後に強い経済を作ったのと同様に」と説明した。
トランプ政権は2月24日、新型肺炎対策のために25億ドルの緊急追加予算を要求した。12億5000万ドルの新緊急資金と12億5000万ドルの他の連邦プログラムから移された資金だ。
一方、シューマー米上院院内総務(民主党・ニューヨーク州選出)は、この要請を「少な過ぎて遅す過ぎる」と批判、「米議会は、2006年にインフルエンザ流行に60億ドル以上、2009年にはH1N1インフルエンザに70億ドル以上を割り当てた」と解説した。
シューマー上院院内総務は2月25日、米国での新型肺炎の感染拡大と闘うため、緊急資金として85億ドルの詳細な提案を発表した。
ミルズ氏は、新型肺炎が米国に打撃を与えれば、「映画館、レストラン、航空会社、ホテルなど、米国経済のすべての分野が影響を受け、1~2四半期の成長率は著しく低下する可能性がある」と述べた。米国で大流行が起これば、民主党はトランプ大統領を「アメリカ人を適切に保護していない」と非難するだろうと言う。
一方、トランプ大統領は「民主党は国家の危機に際して、政治的駆け引きを行い、オバマ前政権は本来すべき役割を果たさなかったと主張するだろう。すでに他国を非難する基礎が作られているのを目の当たりにしている。要するに、新型肺炎はトランプ大統領のせいではないということを明確にさせようとしている。これは選挙に影響を与えそうだ」と述べた。
ミルズ氏が話をした投資家は「サンダース上院議員が民主党の大統領候補に指名された場合、トランプ大統領の再選の可能性が高まるため、大統領選への懸念は和らぐと考えてきた」と言う。
しかし同氏は、今回の新型肺炎によって、この状況が変わる可能性があるとし、「各政党の政治基盤は、指導部の言うことを何でも信じるだろうが、無党派層は、だれを非難するか、十分に大きな懸念であるかを判断しなければならない。雇用のためにトランプ大統領に投票しようとしていたかもしれない有権者は、国民を守るために、大統領として最も基本的な仕事ができないことを心配しているかもしれない」と語った。
さらに、「支持者らは、トランプ大統領が、良好な経済を維持したり、悪い経済を修復したりできると信じている。新型肺炎だけで再選の可能性に大きな影響を与えるとは思えないが、新型肺炎により、現在考えていない新たな悪影響が生じた場合には見解が変わる可能性がある」と述べた。
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