「今は買いですか?」「一度売った方が良いですか?」筆者が主宰するFund Garageでは最近そんなお問い合わせが急増している。

確かに連日のようにテレビや新聞、或いはインターネットのニュースやSNSの書き込みまでが「新型コロナウイルスの感染拡大」「武漢封鎖から1ヵ月」「マスク品切れ」などの画像や文字で溢れると不安になる気持ちも理解できる。

2月初めに一旦は「新型コロナウイルスに対しては過剰反応し過ぎだろう」と最高値を更新したNYダウも、2月12日を頭に下降線を辿り出してしまった。日経平均株価はそれより約1週間早い2月6日を頂点に下落基調だ。一方で感染拡大のニュースは収まるどころかエスカレートするばかり。前述のようなお問い合わせが増えるのも無理はない。

今回はこういう状況下が投資信託にとって本来「買い」なのか「売り」なのかを論じてみたい。足許の投資判断の何らかの参考になれば幸いである。

株式投信、債券投信、バランス型投信…それぞれで対応は違う

新型コロナウイルス,投資
(画像=OpenStudio / shutterstock, ZUU online)

当然のことながら、一言で「投資信託」といっても投資対象によって対応は異なる。基本的に株も債券も値上がりするような、何に投資しても大満足という状況はあったとしても長続きはしない。投資信託が長期投資を目的とした長い時間軸の投資手段である以上、どちらかが買いなら、もう片方は売りになる。

ただ例外がある。この二つの資産クラスの基本的な性格を利用して、両方のアセットクラス(更に細かく「先進国」「新興国」などと分類するのが普通)に国際分散投資するバランス型投資信託がそれだ。アセットアロケーションがパフォーマンスの9割を決めると言われる投資理論を背景に、定量分析を中心として各資産の保有比率を決定して運用する投資信託だ。

このタイプは言うなれば「全天候型」投資スタイルなので、基本的にはいつ買っても良いし、一度投資を始めたら余程の事情が無い限りは投資を中断する必要は無い。肝心なのは、どれを選ぶか、最初の入口で充分検討すべき点を詰めることだ。そして一旦スタートしてしまえば現下のような状況でもいちいち気にする必要は無い。銘柄選びで失敗していたら別だが……。

一方、「株式投資信託」や「債券投資信託」は訳が違う。ましてや茲許のように米国株式市場はNYダウのみならず、S&P500指数もNASDAQ総合指数も史上最高値を更新したばかりだし、日経平均株価もTOPIXも同様にほぼほぼ数10年振りの最高値圏に達した直後だ。投資家が尚更悩ましく思うのは当然だ。明らかに今現在(執筆時2020年2月25日)の市場の不安定さそのものが、そうした投資家心理を見事に反映している。さてどうしたものだろう。

投資判断の基本は平常心で行うこと

何か投資判断をする上で最初にすべきこと。それは自分が今、冷静に物事を判断出来る精神状態かどうかを見極めることだ。人は一般的にはネガティブなバイアスが掛かり易い生き物なので、疲れていたり、寝不足だったり、何かストレスフルな問題を抱えていたりすると余計に冷静な判断が出来なくなる。まずは脳がリラックスした状態かを見極めよう。つまりゆったり物事を考えられる状態を作ることが最優先だ。長期投資の投資判断にアドレナリンは不要なのだ。