田嶋智太郎の外国為替攻略法
(画像=PIXTA)

新型肺炎コロナウイルスの感染拡大や世界経済への影響懸念などを背景に、米連邦準備制度理事会(FRB)は3日、0.5%の緊急利下げを実施した。米国株は下落。ドル・円相場は今週、一時1ドル=107円を割り込み、昨年10月以来のドル安・円高水準を付けた。

主要7か国(G7)の協調姿勢を背景に、日本銀行にも追加緩和期待が強まっているが、新型肺炎は感染病の問題であり、金融政策の効果に懐疑的な見方もあるようだ。

ステート・ストリート銀行東京支店在日代表兼東京支店長の若林徳広氏は4日、ZUU onlineとの電話インタビューで、米利下げ後にドルや米国株が下落したことを挙げ、「市場はバイ・ザ・ルーモア、セル・ザ・ファクト(噂で買って事実で売る)という動きになった。0.5%では足りないのか。トランプ大統領が批判したこともあるのだろう。借り入れコストだけでなく金利収益も下がるという分析から金融機関株が売られた」と説明した。

また、「そもそも新型肺炎はバイオロジカル(病理学)な問題なので、金融緩和政策に意味があるのかという議論もある。新型肺炎ウイルス対策の方が効くのではないか」と語った。

若林氏は、「G7協調で力を合わせて行動するとの期待があったが、個別に金融政策を行うことになっている。イングランド銀行(英中銀)のカーニー総裁は様子見姿勢。温度差を感じる部分があり、国際金融市場への不安材料になっている」と指摘した。

一方、日本銀行の黒田東彦総裁が会見を行い、G7は電話協議を実施。若林氏は、「日銀は次回18、19日の金融政策決定会合で何かやると思う。マイナス金利政策であまりツールがない中、さらにマイナスにしても意味がないと思う。上場投資信託(ETF)の買い入れ増額などを議論するのではないか」と見込んでいる。

ただ同氏は、「手元キャッシュフロー面では、航空会社やホテルなど観光絡みの業界は大変だ。米利下げは支援材料だが、実際どういった形で企業・個人に資金を回すのか。欧州中央銀行(ECB)は中小企業に重点を置く姿勢で中小企業向けローン制度を考慮している」と説明。

その上で「金融政策だけでなく、民間・公的機関による新型肺炎ウイルス対策への支援体制の方が効果的ではないか。市場は検査キット、ワクチン、薬を作る流れなどが欲しいと思っているだろう」とも語った。

為替市場については、購買力平価(PPP)に基づくと今週のドル・円は下値を試す展開を予想している。若林氏は、「円に資金が流れると思う。今週の目先の下値めどは106円60銭。次は106円割れを試すが、106円割れれば下落ペースは鈍化すると思う。106円割れれば、105円30銭まで落ちる可能性があるが、同水準まで落ちれば介入観測も出てくるだろう。ネガティブな材料が多く上値は重たいと思う」と述べた。