金融市場は、 新型肺炎コロナウイルスの拡散に端を発したパニック売りに加え、石油輸出国機構(OPEC)の減産を拒否したサウジアラビアとロシアの原油価格を巡る争いからも打撃を受けた。
9日の米株式市場でストップ安で寄り付いた銘柄は、前日比7%下落で一時取引停止となり、S&P500種とダウ工業株30種平均は約7%安で引けた。米10年債利回りは0.56%と、過去最低水準0.50%を若干上回って引けた。原油価格も30%下落からわずかに回復し、米国では25%下落で取引を終えた。
社債も下落し、ハイ・イールド債や投資適格債のスプレッド(米国債との利回り格差)が縮小した。
チャールズ・シュワブ社チーフ・インベストメント・ストラテジスト、リズ・アン・ソンダース氏は、9日は 「歴史的な日となり、ニューヨーク証券取引所の50%以上の銘柄が52週安値を付けたが、52週高値を付けた銘柄はほとんどなかった。過去40年間でこれを超えたのは1987年と2008年だけだ」 とツイートした。
金融市場は、米連邦準備制度理事会 (FRB) をはじめとする中央銀行が、世界的な市場の混乱にどう対応するのか、米政権や米議会が財政刺激策を打ち出すのかに注目している。さらにサウジアラビアとロシアの原油を巡る紛争や、最も重要な要因である新型肺炎の拡散防止にも注目している。
バンガード社のアンドリュー・パターソン上級エコノミストは、 「新たな感染者の伸び率が4月末に鈍化し始めるとすれば、米国と世界経済は減速しても景気後退(リセッション)は避けられるというのが基本的な見方だ。5月か6月にずれ込むと、2001年のような技術的な景気後退が議論になるが、夏にずれ込むと、はるかに大きな影響が話題になるだろう」と述べた。
ア・ゲイリー・シリング&アソシエイツ社共同創設者であるエコノミスト・資金運用者のゲイリー・シリング氏は、「中央銀行が協調的な利下げと資産買い入れを行うことを期待しなければならない。米国経済は景気後退の瀬戸際にあるか、すでに景気後退に陥っている」との見方を示した。
市場は政策対応を求めている
FRBは3日、予想外のフェデラル・ファンド (FF) 金利誘導目標の50ベーシスポイント引き下げを発表したが、市場を落ち着かせることはできなかった。
市場は現在、次回3月17−18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、75ベーシスポイントの追加利下げの可能性を71%織り込んでいる。
シュワブ社金融調査センターの債券ストラテジスト、コリン・マーティン氏は、 「FRBの利下げ余地はほとんどない。ゼロ金利に戻る可能性は高く、協調政策としての財政出動も必要」と述べた。
FF金利は現在1%~-1.25%のレンジ。FRBが前回利下げをしてFF金利をほぼゼロにしたのは2008年の金融危機の時で、2015年まで0-0.25%だった。
パターソン氏は、「市場は政策対応を求めている。FRBが追加で何をするかは、米政府の財政措置とともに注目されるだろう」 と述べた。
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