米ペンシルベニア大学ビジネススクールのウォートン校のジェレミー・シーゲル教授は9日、新型コロナウィルスに対して、米国は「大統領主導の必要があり、今こそ冷静に懸念を表明し、 有益な対策を講じるべき時だ」 と述べた。
ウィズダムツリー社シニア投資戦略アドバイザーでもあるシーゲル教授は、「何千万人ものアメリカ人が自宅で仕事ができない。これは大きな懸念だ。おそらく負債、住宅ローン、税金の支払いなどの遅延・免除期間が必要だろう」と説明した。
配当株は 「新しい債券」 、長期債は 「新しい金」
シーゲル教授が同日夕、投資家と電話会議を行った時、トランプ大統領は記者会見で、新型コロナウイルスに対応して給与税減税の可能性や、その他の救済措置について話していた。このため時間外取引で株価は上昇した。
シーゲル教授は、「今こそ両党の政治家が一致団結すべき時で、そうなると思う。これらの対応策を実施しなければならない。景気後退を防げるとは思えない。11年間というのは、経済史上最長の景気拡大だが、良いことはすべて終わる」と指摘した。
同教授は、投資に関しては、利回りという観点から配当株は 「新しい債券」 、長期債は 「新しい金」 「新しい ボラティリティ指標」との見方を示し、「ネガティブベータ資産として米国債は拡大しており、ヘッジ(リスク回避手段)とみなされる限り、利回りは極めて低くなる」 と付け加えた。
シーゲル教授は、長期的な資産として金を好むわけではないが、短期的で防衛的な資産としては仮想通貨のビットコインよりも良いと見ており、「ビットコインは9日14%下落し、株価のヘッジには役立たない」と述べた。
原油安の影響
9日に市場に起こったことについて、シーゲル教授は 「7%以上の下落を記録した日は、皮肉なことに11年前に大きな上げ相場が始まった日。当時S&P500種が676ポイント、ダウ平均が約6,500ドルだった。さらに2~3%動けば、11年ぶりの下げ相場となる」 と説明した。
同教授によると、市場の大幅下落は 「原油情勢と新型コロナウイルスへの懸念が半々」 という。「米国はもはや原油輸入国ではなく輸出国だ。従って実質的な経済的損失を被る。運転手のような利用者は利益を得る一方、生産者の損失はさらに大きくなるはず。これは以前にはなかった。米国は約1兆ドルの資本を直接的・間接的にエネルギー部門に投入している」と述べた。
その他の影響としては、 「何万人もの労働者が失業し、 安価な原油に対抗できる再生可能エネルギー源がないため、再生可能エネルギーを潰してしまう」 と説明し、多額の負債を抱えているエネルギー企業は、 「おそらく生き残れないだろう。大規模な統合があるだろう」と述べた。
同教授は、そのような状況ではないが、エクソン社の配当政策に注目しており、 「エクソン社の現在の配当利回りは約9%。原油価格が下がっても、配当を下げたり上げたりしたことは一度もない」 と述べた。
その他のショック
新型コロナウイルスに関しては、「米国の一部地域」として懸念しており、「新型コロナウイルスからの回復を予想するのであれば、株価の20%下落は妥当ではない」と述べた。9日のダウ平均は年初来17.4%下落だった。
同教授は、 「アリアンツ主任経済顧問のモハメッド・ヱルリアン氏は株価は最高値から20-30%下げるべきだと発言しており信用できる。早い段階で、これがどれほど重大なことかを予想していた」 と述べた。「市場は今年初めには10%過大評価されていたとの主張も可能だ。しかし10%以上の下落を期待すべきではない」と付け加えた。
シーゲル教授は、収益に関しては、「景気後退でしばしば20-30%下落が見られ、2007-09年の金融危機のような非常に悪い弱気相場では40-50%下落も見られる。過剰設備と過剰投資に関連した問題で、清算と修復には何年もかかる」と説明した 。
同教授は、2020年は、人々が外出せず、娯楽に費やす時間が減るため、消費者の裁量的支出が打撃を受けると予想している。「パンデミック(世界的流行)の 大規模なものではない。しかし監視と隔離の面で、現在よりもはるかに準備が必要なことは明らかだ」 と述べた。
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