米株式市場が9日に7%急落した後、トランプ政権は10日、拡大している新型コロナウイルスの経済的影響に対処できる政策を提案した。
新型コロナウイルスの広範な経済的影響を相殺するためにどのような刺激策を実施するかは、まだ決定されていない。米政権は、議会共和党と会談し、給与税減税を提案したが、民主党と共和党からは懐疑的な見方が出ている。航空会社、クルーズ会社、ホテル業界への財政支援も求められている。
財政刺激策を求める圧力
Moody's AnalyticsチーフエコノミストであるMark Zandi氏はリポートの中で、 「米連邦準備制度理事会 (FRB) の支援策が底をつき、財政刺激策 (財政赤字による一時的な減税と政府支出の増額) を議会に求める圧力が強まっている」 と説明した。
Zandi氏は、給与税減税に反対しておらず、税金の払い戻し小切手や失業保険給付の拡大、フード・スタンプ制度の資金調達拡大、中小企業局や輸出入銀行を通じた中小企業向けの融資条件・融資保証の簡素化を支持した。
同氏は、「3月初めに危機への対応費用として85億ドルの緊急支出法案が可決されたが、ほんの始まりに過ぎない。早急に連邦政府は、病気になり、介護を必要とし、職場が混乱したり、子どもたちが学校や保育所に行けなくなったりして働くことができないアメリカ人に、財政的支援を提供しなければならない」と指摘した。
Zandi氏は、新型コロナウイルスのワクチンが入手可能になった時の支払いなど医療費を支払うための資金を議員たちが提供することを推奨した。「政府の支援がなければ、信頼感はさらに悪化し、景気後退は避けられない。このような支援があっても、景気は悪化する可能性があり、短期的かつ緩やかな景気後退を実現するためには、確実な追加財政刺激策が必要だ」と述べた。
BlackRock社は、「需要不足、生産の中断、支払いの遅れなど、キャッシュフローの圧迫につながるような草の根レベルでの金融破綻の多発を避けるため、金融当局と財政当局による断固たる先制的かつ協調的な政策対応が必要」 と提言した。同社は、最初の措置は 「最前線の公衆衛生機関」 への財政支援であり、「包括的な世界的対応」を推奨した。
ー所得を安定させ雇用損失を制限するための手厚い病欠手当と短時間勤務制度
ー一時的なキャッシュフロー救済と自営業者救済のための企業からの徴税と社会保障の拠出の停止や、民間への政府の請求書の支払いの加速。地方自治体からの現金補助金や連邦政府からの自然災害救援も含まれる可能性がある
ー金融当局による、直接的かつ対象を絞った流動性支援の実施準備。新型コロナウイルス発生により、被害を受けた企業に特別に割り当てられた融資資金供与制度の拡大が含まれる。企業に追加的な運転資金を提供するために優遇金利で銀行融資を行うよう支援する政府保証も役立つ
BlackRock社によると、 「こうした政策を行えば、より急進的な考えや抑制できない財政支出への扉を開くことを回避することに役立つだろう」 という。
時間が肝要
時間が肝要だ。米疾病管理予防センター (CDC) のロバート・レッドフィールド所長は10日の議会公聴会で、米国内での新型コロナウイルスの完全な封じ込めはもはや不可能であり、現在の焦点は、拡大抑制と緩和にあると述べた。
同所長は、米国が新型コロナウイルスの検査を迅速に実施できなかったことが、初期の封じ込めへの取り組みを妨げたと述べた。
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