「新型コロナウイルス」という姿の見えない敵が、世界の金融マーケットを脅かしている。
当初は“対岸の火事”程度に捉えていた欧米でも感染が広がり、これを受けて米国株式市場が急落。史上初となる3万ドル台乗せにトライしていたNYダウが一時2万5000ドルを割り込む水準まで売り込まれた。
一方、日経平均株価も3月10日にはザラ場で1万8000円台まで急落。外国為替市場ではリスク回避の円買いが進み、ドル/円相場は一時101円台前半まで円高が急伸した。しかし、こんな金融市場のパニック売りのピンチをチャンスに変えようとする投資家も現れ始めている。(ZUUonline magazine編集長 三枝裕介)
長期投資家が“バーゲン価格”に放置されている優良株を拾っている
3月9日、長期投資を標榜する「さわかみファンド」のホームページに「パニック売り?チャンスでしかないですね」というタイトルのレポートが掲載された。過去にも同ファンドは株式市場の急落局面で「しめしめ」と株式を買い増し、利益を上げてきた。
今回も7%程度あったキャッシュポジションの一部を急落している米ドルと9社の株式購入に充てたのだという。レポートには、「今後、さらに大きく下げる可能性も十分にありますが、ここまで我慢して待っていたため、丁寧に且つしっかりと行動し、次の30年への布石を打ち始めたいと思います」と記されている。
同9日、「カリスマファンドマネージャー」とも称される藤野英人氏率いる「ひふみ投信」からも臨時レポートが出された。ひふみ投信では1月末には0.7%だった現金比率を2月25日にはファンド全体の約30%弱に当たる約2000億円まで高めてチャンスをうかがっていた。
「本日のマーケットでも新型コロナウイルスの感染が広がってもびくともしない、むしろ恩恵を受けるような会社の株価でさえも大幅に下がっていたので、そのような会社に対して複数社、買い向かいました。すぐにはその成果が出ませんが、マーケットの状況が落ち着いてきたらお客様にその投資成果を還元できると期待しています。これからマーケットが下落をしてきたら、わたしたちはすばらしい会社を驚くべき割安な価格で投資をすることができます。そういった意味ではこれからの下落市場はむしろ大きなチャンスになります」とレポートで報告している。
グーグル検索では「株初心者」というキーワードが急浮上
一方、一連のウイルス騒動が発覚する前までの世界的な株高に乗り遅れていたのが株式投資の未経験者たちだ。本来、株式投資は安く買って、高く売ることで利益を追求するもの。これまで株価が高くて二の足を踏んでいた投資家にもチャンスが巡ってきた、といえるかもしれない。グーグルの検索ワードでは、『株初心者』というキーワードがこれまで以上に検索されており、アフィリエイト経由で証券会社の口座開設が急激に増えているという。
古くは90年代のバブル崩壊に始まり、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災をきっかけとした株安などがあった。そのたびに長期投資目線でバーゲンセールに放置された株を買い向かった投資家が大きな利益を上げてきたのも事実。
新型コロナウイルスが実態経済に与える影響はいまだ不透明だが、日本株市場は限りなく底値に近い付いてきているのではないだろうか。少なくとも今回の教訓として、投資家たちが浮かれている株高のときこそ暴落を警戒し、いざという時のためにキャッシュの割合を高めていく投資姿勢が重要だということを覚えておきたい。