株式市場に亡霊が蔓延っている。「弱気」という名の亡霊だ。新型コロナウイルスの感染が米国にも拡大し、シリコンバレーの企業で在宅勤務が推奨されたり、国家非常事態宣言が発令されたことも亡霊が蔓延る一因となったようだ。
本稿は相場観を語るものではないので、取り立てて詳細には論じないが、長年の経験から確実にひとつ言えることは、歴史的にも永遠に下げ続けた相場は無いということだ。市場取引で値が付くものは、短期的には需給が価格を決める。売りたい人が多ければ値が下がるし、買いたい人が多ければ上がる。だが中長期的には、株価は本質的価値に収斂する。過去に大騒ぎした全てのこうしたイベントが歴史上それを証明している。そして、その都度「今回は今までと違う」と同じように言われていたのも事実だ。
ならば投資信託を愛し、投資信託で資産形成をしようと考える人は、最大限自分が投資している(或いはこれから投資する)投信の担当ファンドマネージャーを励まし、鼓舞し、その気になって最善の策を尽くして貰わなければならない。元ファンドマネージャーだからこそ分かる、彼らの気持ちになってファンドマネージャーを勇気づける一番の方法を伝授しよう。
投信運用会社の臨時レポートは不要だ
最初にこうした状況下にある時、彼らファンドマネージャーの精神状態はどうなっているかをお伝えしよう。
ファンドマネージャーには2種類あって、ベンチマークを設定して運用しているタイプと、ベンチマークなど設定せず、ひたすら可能な限りパフォーマンスをプラスにしようとしているタイプとある。昔は前者のタイプは年金運用のファンドマネージャーしか居なかったが、いつの間にか投資信託もベンチマーク制度が普及し、前者のタイプのファンドマネージャーも増えてしまったのだが。
実はベンチマークがあるファンドマネージャーは、市場の大きな上下変動自体にはあまり喜怒哀楽が無い。彼らの目標はベンチマークを少しでも上回る運用をすることであり、たとえばベンチマークが10%下落した時に、担当投資信託が7%しか下落していなかったら「3%勝った!」と彼らは考える。ただ投資家側から見れば10%下落も7%下落も損をしたという事実に変わりなく、ここに投資家と運用サイドの気持ちに大きな隔たりが生じる。
一方、後者のタイプは下げ局面で非常に辛い思いをしている。ポートフォリオに株式の組入が少しでもあれば、市場全体が下落するような時は必ず基準価額は下がる。だから常に短期的に終わる下げか、暫く続く下げかを見極めながら、駄目だと思えば現金比率を引き上げるし、短期的なものだと思えば、胃袋に思い石を飲み込んだような思いを抱えながらも、嵐が過ぎゆくのを耐え忍んだりしなければならない。だから多分、今このタイプのファンドマネージャーは本気でかなり辛いだろうと思う。