新型肺炎コロナウィルスの感染拡大を背景にした金融市場の混乱を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)は15日に1%の緊急利下げを実施。政策金利を0―0.25%とほぼゼロとしたほか、バランスシート拡大を発表した。トランプ米政権は13日、国家緊急事態を宣言し、財政出動を表明した。米国株は同日、上限でサーキットブレーカーが発動され、前週は上下両方を対象とした発動となった。
6つの中央銀行は為替スワップ協定でドル資金供給を前倒しで決定。日本銀行は16日、金融政策決定会合を前倒しで開催した。
大和証券金融市場調査部の岩下真理チーフマーケットエコノミストは16日、ZUU onlineとの電話インタビューで、米FRBの緊急利下げについて、「予想外で思ったより早いタイミングだった。今月2回目の米緊急利下げは異常事態。早めの対応は評価され、トランプ大統領も褒めているが、米国株先物相場は下げ止まっていない」と指摘。各国中銀の為替スワップ対応にも言及し、「市場は落ち着き、セーフティーネット(安全網)にはなるだろう。ただ、まだ安心感は出ておらず、相場が元に戻る訳ではないと思う」と述べた。
3月中の日経平均株価は1万7000円〜2万300円程度のレンジか
岩下氏は、3月中の日経平均株価は1万7000円〜2万300円程度、ドル・円相場は104円〜109円程度のレンジを見込んでいる。
同氏は、「流動性の枯渇、原油安、ドル調達コスト上昇などが落ち着かないと市場が全てを好感する形にはならないと思う。市場が一服しても、まだ欧米で新型コロナウィルスの感染拡大が止まっていないこともある。中国はピークを付けたようだが、欧米はまだ始まったばかりでピークを打つ必要がある」と説明した。
各国の中銀・政府の対応を受けて、世界的に「株価はいったん下げ止まるだろうが、今晩の米国市場で下げ止まるか分からない。市場は、落ち着くだろうが、悪い話を過去のものと見てV字回復とはならないと思う」との見方を示した。
日銀会合に関しては、「3月は緊急対応だろう。玉が残らない状況にはしないと思う。必要なら今後も対応するだろう。日本経済も景気後退入りが視野に入り、4月が本丸。日銀が景気判断を下げるのは『経済・物価情勢の展望(展望リポート)』が出る4月会合ではないか」と述べた。
今後の注目点としては、欧米での財政出動や新型肺炎コロナウィルスの感染動向を挙げた。「パンデミック(世界的流行)を背景に、欧州の財政面の動きが十分に出るのか。米国も景気対策への期待があり、欧米政府の政策の中身を見極めたい。欧米はアジアより遅れて感染が拡大しており、スペイン・イタリアに続きドイツでも拡大するのか。中小企業の運転資金支援などの話もある」と述べた。
16日夕には主要7か国(G7)首脳が緊急電話会議を開く予定。