赤字決算
(画像=PIXTA)

米エコノミストで資産運用者のゲリー・シリング氏は、2008年の世界金融危機と1970年代半ばの米景気後退を正確に予測したが、今回の新型コロナウイルスの世界的大流行による経済的な悪影響は「世界的な大不況を確実にしている」との見方を示した。

新型コロナウイルスが中国、イラン、欧州などで猛威を振るう前から、世界経済はすでに減速していた。しかし新型コロナウイルスは、米国経済のほぼ全ての分野を閉鎖させ、「世界経済の強さの唯一の分野」だった米国の消費を低迷させている、と同氏は説明した。

シリング氏は、「景気が低迷している国々は、景気後退に突入するために大きなショックを必要としない。新型コロナウイルスは、十分なショックを与えた」と指摘。何百万人もの人々がまだ検査を受けていないため、拡散の速度や程度は不明だが、「世界的なパニックを引き起こしている」と述べた。

新型コロナウイルスの世界的流行のため、米国、アジア、欧州で、日常生活が混乱している。感染拡大を阻止するため、学校、店、レストラン、ホテル、スポーツアリーナが閉鎖され、何億人もの労働者が在宅勤務をしている。米国では、疾病対策予防センターが50人以上の集会に対して勧告を行い、一部の都市では外出禁止令が出されている。

中国国家統計局によると、中国経済は1〜2月の小売売上高が前年同期比20.5%減少、鉱工業生産は13.5%減少、固定資産投資は25%近く減少など、深刻な打撃を受けており、世界経済に与える影響は大きい。シリング氏は、中国経済は現在、世界の国内総生産(GDP)の約16%を占めており、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時の約4倍だと指摘した。

消費は低迷

シリング氏によると、新型コロナウイルスが猛威を振るった後も、消費者や企業の支出は低迷を続ける可能性が高いという。理由の1つは、食料品などを買いだめしてしまった消費者は、在庫を一掃しなければならないからだ。

シリング氏は、新型コロナウイルス拡散とその影響に対する懸念が続いていることや、デフレの影響を背景に、米国債は上昇し、株価は下落すると見込んでいる。景気循環調整後の株価収益率に基づくと株価はまだ高いと分析した。

同氏は、FRBが実施した1%の緊急利下げ、7000億ドル相当の米国債と住宅ローン担保証券購入、他の中央銀行との為替スワップ協定などは、「金融政策の無力さを認めただけだ」との見方を示した。

Bernice Napach
ThinkAdvisorのシニアライターで、金融市場、アセットマネージャー、ロボアドバイザー、大学の企画立案や退職問題を主に書いている。ヤフー・ファイナンス、ブルームバーグTV、CNBC、ロイター、インベスターズ・ビジネス・デイリー、ボンドバイヤーでの勤務経験あり。ニューヨーク・タイムズ紙、The Street.com、スターレジャー、レコード、バラエティ、ワースの各雑誌で執筆。SUNYストーニーブルック大学で社会福祉の理学士号を取得している。

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