新型コロナショックが世界の株式市場を揺さぶる中、Web会議などのコミュニケーションソフトウェア等を提供するズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(以下、Zoom)が逆行高となっている。
昨年4月18日、Zoomは米ナスダック市場に上場、初値は公開価格(36ドル)を大きく上回る65ドルで、夏場には100ドルを超える場面も見られた。その後はウィーワークをはじめとする大型IPOのつまづきもあって調整局面へ移行したが、年明けから再び上昇トレンドを形成、3月23日には一時164.94ドルと上場来高値を記録している。
3月23日のZoomの終値は159.56ドルで、年初来の騰落率は約132%の上昇となっている。同期間のS&P500が31%の下落に見舞われるなど主要株価指数が軒並みマイナスに沈む中、Zoomは逆行高を鮮明にしている。今回はZoomが人気化している背景に迫ってみよう。
営業利益92%増、株価は上場来高値
3月4日、Zoomが発表した11~1月期決算は売上高が前年同期比約78%増の1億8830万ドル、営業利益は同92%増の約1060万ドルと増収増益だった。1株利益は0.05ドルで、市場予想の0.01ドルの赤字を覆した。調整後1株利益は0.15ドルで、こちらもアナリスト予想の0.07ドルを上回っている。
Zoomのサービスを利用する従業員10人以上の顧客数が約61%増の8万1900社に達したほか、直近の12カ月で10万ドル以上を支払った顧客数も641社と前年同期(344社)から86%増加したことが増収増益に寄与した。ちなみに、Zoomによると新型コロナウイルス対策による需要増加は11~1月期の業績に織り込まれていないという。
Zoomは2020年2~4月期の売上高の予想レンジを1億9900万~2億100万ドルとしている。これは金融調査会社のファクトセットがまとめたアナリスト予想(1億8560万ドル)を大きく上回る数字である。また、同日発表された2020年1月期(通期)の売上高も88%増の6億2270万ドルと好調だった。Zoomは2021年1月期の売上高の予想レンジを9億500万~9億1500万ドルとしている。こちらもファクトセットがまとめたアナリスト予想(8億6950万ドル)を上回る数字だ。
冒頭で述べた通り、Zoomの株価は3月23日に上場来高値となる164.94ドルを記録している。
世界的に広がる「ソーシャル・ディスタンス」
Zoomの株価上昇を後押ししているのは好決算だけではない。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために他人との物理的な距離を保つ「ソーシャル・ディスタンス」への意識が世界的に高まっていることもサポート要因と見られている。