米国でピザといえば、ハンバーガーやホットドッグと並んで多くの国民に親しまれている料理である。職場やイベント会場、公園、子供たちの野球大会等で宅配ピザを注文するのは見慣れた風景だ。ちなみに、全米レストラン協会によると個人経営のピザ専門店は全体の52%に達し、たとえば皮のように薄い生地のニューヨーク風ピザや、タルトのような深みのある生地に具材がたっぷり詰まったシカゴ風ピザなど地域ごとに特徴のあるピザを提供する専門店も多い。
そんな米国の食文化を象徴するピザ業界に激震が走っている。新型コロナ危機で多くの個人経営のピザ専門店が臨時休業に追い込まれる中、このままでは廃業が相次ぐ危険性が指摘されている。一方で、宅配ピザチェーン大手のドミノ・ピザは外出制限で自宅にこもった人々の需要増加に対応して1万人以上の新規採用を発表するなど、大手と個人経営で明暗を分けるところとなっている。
今回は、多くの飲食店が窮地に追い込まれる中で異彩を放つドミノ・ピザの話題を紹介しよう。
外出制限を追い風に1万人増員
3月19日、ドミノ・ピザは1万人以上の新規採用計画を発表した。新型コロナウイルス対策の外出制限でピザの宅配を利用する人が増加したのに対応した措置である。今回の新規採用で店舗からの配達要員やピザ作り、顧客対応、マネージャー、アシスタントマネージャー等を増員する計画だ。
ちなみに、ドミノ・ピザの2019年10~12月期決算は売上が11億5000万ドルで前年同期比で6.5%増加、市場予想の11億3000万ドルを上回り、為替変動を除く売上も7.6%増加している。一方の純利益は1億2930万ドルで15.9%増加、1株利益も3.12ドルで前年同期を19%上回った。なお、調整後1株利益は3.13ドルで、こちらも市場予想の2.98ドルを5%上回っている。
ドミノ・ピザは今後2~3年の販売数量を6~8%増、売上高を7~10%増と従来見通しを据え置いているが、この時点で新型コロナ危機の影響は加味されておらず、今後大きく修正される可能性も指摘されている。