新型コロナウイルスの猛威が続くなか、米企業の2020年1~3月期の決算発表がスタートした。先陣を切るかたちで大手金融機関の発表が相次いだが、結果は予想を上回る減益となり、新型コロナ危機の経済的打撃が改めて浮き彫りとなった。

米銀大手のJPモルガン・チェースの純利益が前年同期比で69%減となったほか、同じくゴールドマン・サックスが46%減、バンク・オブ・アメリカ45%減、シティグループ46%減、ウェルズ・ファーゴ89%減と軒並み激減している。ウォール街の市場関係者からも「覚悟はしていたが、背筋が凍りつくような内容だ」(アナリスト)との声が聞かれる。

今回はJPモルガン・チェースの最近動向をリポートする。

1~3月期は69%減益、貸倒引当金の積み増し響く

JPモルガン・チェース,株価
(画像=pcruciatti / shutterstock, ZUU online)

JPモルガン・チェースの2020年1~3月期の純利益は28億7000万ドルで前年同期(91億8000万ドル)から69%減少した。1株利益は0.78ドルで、金融調査会社のファクトセットがまとめたアナリスト予想の2.16ドルとはかけ離れた数字となった。想定外の収入減少に加え、新型コロナ危機による融資の焦げ付きに備えて、貸倒引当金を68億ドル積み増したことが響いた。

収入は282億5000万ドルで、前年同期の291億2000万ドルから3%減少した。アナリスト予想は295億5000万ドルと増収を見込んでいたが、想定外の減収となった。長期金利の低下で利ざやが圧迫され、金利収入が前年同期比微減の145億ドルとなったことも影響した。

貸倒引当金は82億9000万ドルと、前四半期の14億3000万ドルから大幅に積み増した。積み増した68億ドルのうち38億ドルがカードローン向けだった。カードローンには住宅ローンのような担保がないこともあり、未曾有の失業者の発生を見越して先手を打ったという。ローン残高に占める調整後の引当金比率は前期末の3.4%から9.7%に上昇している。

個人向け銀行部門の利益は95%減の1億9100万ドルだった。カード向けの引当金の積み増しが響いた。収入は2%減だった。1~3月期はカードローンとともに住宅ローンの利用も減速した。

一方、トレーディン部門の収入は32%増の72億ドルと好調だった。金融市場が不安定な状況下で債券取引で34%、株取引で28%それぞれ増加した。また、投資銀行部門の収入は1%減の99億5000万ドル、利益は39%減の20億ドルだった。

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