帝国データバンク
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全上場企業の4割超(約1,600社)で新型コロナウイルスの具体的影響及ぶ
~ 「従業員の感染」約2週間で3倍に急拡大 臨時休業など「営業活動への影響」も倍増 ~

はじめに

帝国データバンクでは、「決算短信」のほか「業績予想の修正」や「お知らせ」などの適時開示情報、各社のプレスリリース・ニュースリリース情報などの公開情報から、新型コロナウイルスに関連する影響や対応等について明らかとなった上場企業を対象に調査を行った。
同様の調査は3月17日、3月31日に次いで3回目。

調査結果

1 帝国データバンクの調査で判明した、新型コロナウイルス感染症(正式名称「COVID-19」、以下「新型コロナ」)により工場や店舗などの休業、防疫措置など、何らかの影響を受けた上場企業は、昨年12月~4月17日(金)時点までに1,602社判明。前回調査時(3月31日)から560社が新たに判明し、全上場企業(3,778社)の4割超で新型コロナによる影響が明らかになった。このうち、「製造」(535社、前回比+166社)は社数、前回調査からの増加率ともに最大。次いで「サービス」(398社、同+142社)、「小売」(241社、同+92社)と続く。
前回調査からの増加率が最も大きいのは「金融・保険」(55社、前回比+29社)で2.1倍に増加。ゼネコンなど「建設」(41社、同+20社)が次いで2.0倍増。

2 影響を受けた約1,602社のうち、具体的な影響も含め業績へのマイナス影響に言及した上場企業は計700社(前回比+265社)で、前回調査時から2週間で大幅に増加した。このうち、「影響の懸念がある」など影響不確定の企業は335社(同+95社)で、前回調査から39.6%増。月次の客足や販売量の減少、下方修正などで既に業績への影響が出た・今後出る見通しなど影響ありの企業は365社(同+170社)で、同87.2%増と2倍に迫る急増ペースだった。このうち、業績の下方修正を行った企業では売上高の消失額合計が約1兆7000億円と2兆円規模に迫っており、今後も消失額のさらなる拡大が見込まれる。

3 工場等で生産調整や稼働停止といった、生産活動に影響が出た企業は137社(前回比+22社)となった。各国の外出自粛や従業員の感染、国内外の需要急減などを受け、完成車メーカーなどで工場の操業停止といった措置を余儀なくされた企業が多くみられた。

4 店舗や拠点の営業休止、営業時間短縮対応など営業活動に影響が出た企業は360社(前回比+194社)判明。前回調査から2倍超の増加となり、増加率は「従業員の感染」に次いで大きかった。首都圏の外出自粛要請や緊急事態宣言の発令を受け、店舗営業の自粛をせざるを得なくなった小売やサービスなどB to C業種を中心に、休業などの措置が相次いだ。サービス提供・イベントなどの開催中止・延期は240社(同+94社)だった。

5 自社や関連会社などで従業員の感染が判明した企業は278社(前回比+186社)判明。3月末から202.2%増と3倍の増加率となり、他の影響・対応区分の中で最大だった。小売やサービスのほか、在宅勤務などが難しい建設や製造などの業種で、従業員が感染するケースが急増したことが大きな押し上げ要因となった。テレワークの導入など働き方の変更を表明した企業は判明分で458社(同+189社)に上り、出張・プライベート等における海外渡航禁止・自粛の対応を取る企業も148社(同+36社)だった。
このほか、国内外で従業員の出勤が停止し決算業務が滞っていることを理由に、決算発表の延期を公表した企業が開示分で70社に上った。

6 緊急事態宣言の発令された4月7日以降、工場の操業停止や店舗の臨時休業、在宅勤務など新型コロナへの対応を迫られた企業が相次いだ。法的拘束力こそないものの、緊急事態宣言が企業にもたらした影響が鮮明化している。緊急事態宣言の範囲が全国に拡大されたことで、営業活動の縮小や休止の対象が各企業でさらに広範囲に及ぶものとみられ、企業業績への悪影響がこれまで以上に表面化するとみられる。