新型肺炎コロナウイルスの感染拡大による景気悪化を背景に、主要中央銀行の政策が強化されている。しかし市場関係者によると、新型コロナ被害が長期戦になれば、企業の資金繰りは一段と厳しくなる見込みという。
ロイター通信によると、欧州中央銀行(ECB)は22日、緊急理事会を開き、資金供給の際に受け入れる担保の条件緩和を決定した。時事通信は23日、日本銀行が社債・コマーシャルペーパー(CP)購入拡大など資金繰り支援策の強化を検討し、27日の金融政策決定会合で決める見通しと報じた。
日銀の追加策、市場の安心感になるがあまり影響出ない
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは23日、ZUU onlineとの電話インタビューで、「米連邦準備制度理事会(FRB)と同様に、ECBもロックダウン(都市封鎖)や外出自粛によって、資金繰りが困難になっている企業に向けた流動性対策を行っている。日銀もCP・社債買い入れ拡大を検討と報じられている。日本は政府系金融機関の貸出支援もある」と説明した。
日銀の追加策に関して、「日本の社債・CP市場の規模は小さく、日銀が買おうと思えば全て買えるが、どの水準まで買うか、審査・手続きが煩雑で事務方の負担が大きい。対象の格付けを落とすことはモラルハザードにもなり、日銀はあまり広げたくないだろう。中銀は、金融市場の安定化のための支援策はできるが、バランスシートが痛む」と分析した。
金融市場への影響については、「何もしないよりは良く、安心感にはなると思う。ただ事前に報道されているのでサプライズはないため、あまり影響は出ないと思う」と語った。
原油価格が落ち着き、5月末まで緊急事態宣言が続く前提で、5月末までの日経平均株価は1万8500円〜2万300円、ドル・円相場は1ドル=106円80銭〜109円50銭のレンジを見込んでいる。
22日の米ダウ平均株価は急反発し前日比456.94ドル高の23475.82ドルで引けた。23日の日経平均株価は前日比291円49銭高の1万9429円44銭で引けた。ドルは107円台後半で推移している。
同氏は、「世界経済悪化による需要減少を背景に、今週は原油先物のマイナス価格がショックとなり、リスクオフ(回避)となったが、限月交代が終わり、原油が値を戻し、株も買い戻された」と述べた。
企業の資金繰り悪化に警戒感
一方、新型コロナウイルス感染拡大に市場の関心が戻る中、ロックダウンや外出自粛が解消されない場合、企業の資金繰り悪化に警戒感を示した。
岩下氏は、「中国・武漢と欧州での新型コロナウイルスの型が違うとの報道もある。中銀は支援策をいつまでも続けられないが、感染が収束に向かうまでは止める訳にはいかない。新型コロナの感染収束が課題」と指摘した。
その上で、各国がロックダウン・外出自粛などを続けている以上、企業の資金繰りは厳しくなると予想し、「政府・日銀は、中小企業や航空会社やホテル・宿泊施設など特定業種を支援しているが、長期戦になれば、中小・特定業種だけではすまないと思う。大手も厳しくなるのではないか」と語った。