ギリアド・サイエンシズ(以下、ギリアド)は、米カリフォルニア州に本社を置く、世界第2位のバイオ製薬大手である。日本の読者のみなさんには、5月7日に厚生労働省が新型コロナウイルスの治療薬として承認した抗ウイルス薬「レムデシビル」を手掛ける企業と言ったほうが分かりやすいかも知れない。

WHO(世界保健機関)は新型コロナウイルスが「消滅しない可能性」について言及したほか、ワクチンの開発についても「少なくとも1年から1年半の時間を要する」との見解を示している。米国では新型コロナウイルスの感染拡大はピークアウトしたとの観測もでているが、同時に感染「第2波」への警戒も広がっている。そうした中、治療薬の一つとしてアビガンと並び有望視されているのが「レムデシビル」だ。

今回はギリアドを巡る話題を紹介する。

レムデシビル、新型コロナ治療薬の承認第1号に

ギリアド,株価
(画像= VikentiyElizarov / shutterstock, ZUU online)

5月1日、FDA(米食品医薬品局)は重症の新型コロナウイルス感染症患者へのレムデシビルの緊急使用を認めた。レムデシビルは、臨床データの裏付けとともに承認された新型コロナ治療薬の第1号となった。

NIAID(国立アレルギー感染症研究所)の支援による1063人を対象とした臨床試験では、レムデシビルを投与した入院患者の退院までの日数が平均11日に対し、プラセボ(偽薬)を投与した患者は15日だった。退院までの日数が平均で約30%(4日)短縮される計算であり、病床や医療従事者の不足が深刻となる中での使用価値は高いと見られている。

ギリアドは米国政府と連携してレムデシビルの供給体制を速やかに構築し、各患者への10日間投与を前提に今年10月までに50万人分、12月までに100万人分の生産を目指す意向を示している。

「ワープ・スピード作戦」にも不透明感

「名付けてワープ・スピード作戦だ」トランプ米大統領は5月15日、新型コロナウイルスのワクチン開発を加速する「ワープ・スピード作戦」を発表した。ワープ・スピード作戦は官民が連携してワクチンの早期開発と生産設備の建設を推進するもので、約100億ドル(約1兆700億円)を投入、来年1月までに国内向けの供給を目指すというものだ。トランプ大統領は「うまくいけば年末までにできると思う」との見通しを示している。

とはいえ、新型コロナウイルスは「極めて扱いが難しい」ことからWHOのテドロス事務局長は「(ワクチン開発には)少なくとも1年から1年半の時間を要する」との見解を示しており、本当に年内に供給できるのか不透明感も否めない。

米国では新型コロナウイルスの感染拡大はピークアウトしたとの観測もでているが、同時に感染「第2波」への警戒も広がっている。問題は第2波がいつ襲来するのか分からないことだ。ワクチン開発を急ピッチで進めているとはいえ、第2波の防波堤としては心もとないと見る向きも多い。