帝国データバンク
(画像=PIXTA)

東京圏(1都3県)の本社移転、9年連続の転入超過
~ 小売・卸売など流通業種で急増、新型コロナによる老舗倒産も発生 ~

はじめに

政府が「地方創生」政策の柱として策定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の5カ年計画では、2020年までに地方と1都3県の人口転出入が均衡化することを目標の一つとして定め、企業の移転による雇用創出をはじめとした地方創生を促してきた。

こうしたなか、政府は東京圏から地方への本社移転をより進めるため、2015年度に導入した東京23区などから地方への企業移転を後押しする税優遇措置「地方拠点強化税制」について、19年度末まで2年間延長することを決定していた。15~19年度までの5年間で7500件の企業の地方拠点強化を目標としており、企業の東京一極集中の是正に向けた取り組みを本格化させている。

帝国データバンクは、保有する企業概要データベース「COSMOS2」(約147万社収録)のうち、2019年に都道府県間を跨ぐ本社所在地の移転が判明した企業(個人事業主、非営利法人等含む)について分析を行った。

■本社とは、本社機能(事務所等)の所在する事業所を指し、商業登記の本店所在地と異なるケースがある

■3大都市圏の範囲は、それぞれ住民基本台帳人口移動報告(総務省統計局)に準ずる

■3大都市圏の企業転出・転入は、各都市圏外との都道府県を跨いだ企業移転を指しており、圏内で都府県を跨ぐ本社移転は含まれない

調査結果

1 2019年に本社移転を行った企業は、全国で2011社だった。18年から1社減少し、2年連続で減少したほか、2010年以降の10年間では過去2番目の低水準だった。転入企業数が転出企業数を上回る「転入超過」となったのは26府県に上った。なかでも「神奈川県」は48社の転入超過となり、転入超過社数は17年以降3年連続で全国最多となった

2 東京圏への転入企業は312社、転出企業は246社だった。この結果、東日本大震災が発生した2011年(13社)以降、9年連続となる転入超過となった

3 大阪圏への転入企業は126社、転出企業は161社だった。この結果、調査を開始した1991年以降29年連続となる転出超過となった

4 名古屋圏への転入企業は58社、転出企業は62社だった。この結果、2019年は4社の転出超過となり、リーマン・ショックが発生した翌年の09年以降、17年を除くすべての年で転出超過となった