6月17日、「マルちゃん」で知られる東洋水産 <2875> の株価が5840円と過去最高値を更新した。長期チャートを見ると、2008年のリーマン・ショック、2015年のチャイナショック、そして今回の新型コロナ危機で東洋水産は過去最高値を更新している。不況期には節約のためにインスタント麺の需要が拡大するのが一因と見られるが、特に今回の新型コロナ危機では「巣ごもり生活」で保存性に優れたインスタント麺の需要増加に拍車をかけた側面もありそうだ。

今回は東洋水産の話題をお届けしよう。

店頭からインスタント麺が消えた日

東洋水産,株価
(画像=YAMATO / pixta, ZUU online)

3月下旬、小池百合子都知事のロックダウン(都市封鎖)発言で、スーパーマーケット等の店頭からインスタント麺が消えたのは記憶に新しい。

日本即席食品工業協会によると2020年3月の即席麺の生産量は前年比11.1%増、そのうち袋麺が18.2%増、カップ麺が8.1%増といずれも増加した。種別内訳では東洋水産の袋麺『マルちゃん正麺』、日清食品の『日清ラ王』などノンフライ麺が前年比33.2%増と急増したほか、フライ麺も醤油味16.0%増、塩味17.4%増、とんこつ味18.3%増と大幅な増加となった。一方、カップ麺は日清食品の『どん兵衛』、東洋水産の『赤いきつね』『緑のたぬき』など和風醤油味が9.9%増、フライ麺が醤油味14.1%増、味噌味7.1%増、塩味16.7%増のほか、焼そばも10.2%増と好調だった。

特需が発生したのは日本だけではない。4月4日、ブルームバーグは米国で最大のスーパーチェーンであるウォルマートのオンライン販売でインスタント麺が2月23日から3月21日の間に578%増加したと報じている。

武田鉄矢氏をCM起用した『赤いきつね』がギネス世界記録

東洋水産はプロモーションにも積極的な企業である。たとえば、2019年12月から2020年1月の期間で『赤いきつね』と『緑のたぬき』の人気投票を実施している。「赤緑合戦〜あなたはどっち!? 食べて比べて投票しよう!〜」と題して全国47都道府県ごとに勝敗をつける陣取り合戦だ。結果は『赤いきつね』の支持率が54.8%、『緑のたぬき』は45.2%で、『赤いきつね』が2年連続の勝利となった。都道府県別で『緑のたぬき』が勝利したのは愛媛県と奈良県だけで、全国的に『赤いきつね』の圧勝だった。

『赤いきつね』は今回の人気投票のマニフェストとして、勝利の暁には紅生姜入りの「赤い天ぷら(小えび天ぷら)」や「赤いかまぼこ」等を具材に使用した『もっと赤いたぬき天うどん』を販売すると公言していた。こうしたプロモーション活動もファンの裾野拡大に一役買っていると見られる。