6月8日、ニューヨーク市は約2カ月半ぶりに経済活動を再開する「第1段階」を迎えた。製造業や建設業の活動再開に加え、小売店の店頭での受け渡しも可能となった。6月22日からは「第2段階」に移行、順調に進めば7月中には最終の「第4段階」で全面再開となる見通しである。

筆者の住むマンハッタンでは中断していた道路工事も再開している。ただ、騒音は増えたがコロナ前の日常を取り戻したとは言い難い。

食料品店や生活必需品を扱うスーパーマーケット等は当初から営業を継続しているが、マンハッタンの中心部に限っては店頭で受け渡しが可能となった小売店でも営業はほとんど再開していない。米ミネソタ州で起きた黒人死亡事件を巡る抗議運動で一部が暴徒化したこともあって、ショッピングを楽しむムードではなくっているようだ。

そもそもマンハッタンでのショッピングの主役は観光客であり、劇場や美術館など観光名所が閉鎖したままでは小売店が営業を再開してもあまり意味はなさそうである。加えて、今回は失業者に対して特別手当が支給されており、働くよりも収入が増える「失業による所得の逆転現象」も起きている。小売店の従業員の中には職場に復帰するインセンティブは低いと考えている向きもいるようだ。

ともあれ、経済活動の段階的再開でニューヨークの景色は少しずつではあるが変化している。同じように米国の経済環境も変化しているが、不安材料も依然として底流したままだ。

経済環境は「コロナ前」とどう変わる?

米国経済見通し,コロナ
(画像=giri / pixta, ZUU online)

FRBは6月9~10日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で政策金利のレンジを0~0.25%で据え置き、ゼロ金利政策を維持することを決定した。量的緩和政策の購入目標も明確化し、月間あたり米国債を800億ドル、同じく住宅ローン担保証券を400億ドルの計1200億ドル購入することも明らかとなった。

注目されるのは経済見通しである。今回のFOMCで示された経済見通しは、昨年12月に示した見通しから激変した。すなわち、新型コロナ危機で経済環境が大きく変貌する見通しが示されたのである。