米国では新型コロナ対策で制限していた経済活動を段階的に緩和しているが、一方で「Withコロナ」ならではと言える問題が浮上している。たとえば、米ウォルト・ディズニーはフロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールドを7月11日、カリフォルニア州のディズニーランドを7月17日に順次再開する予定としていたが、これに従業員が難色を示している。
ディズニーランドの従業員1万7000人を代表する労働組合は再開を阻止するようカリフォルニア州知事に働きかけたほか、ウォルト・ディズニー・ワールドでも従業員の間で再開延期を求める声が高まっている。ディズニーランドとウォルト・ディズニー・ワールドの再開阻止の嘆願書には一般市民も含めて数万人の署名が集まっているという。こうした動きを受けて、米ウォルト・ディズニーは6月24日にカリフォルニア州のディズニーランド(リゾートホテル含む)の営業再開について「州政府の許可を得るまで延期する」と発表している。
カリフォルニアとフロリダの両州では、新型コロナウイルスの新規感染確認者数が拡大、感染リスクが高まっていることが再開延期の理由とされている。だが、ウォール街の市場関係者からは「手厚い失業保険と補助金を失ってまで職場への復帰を望んでいないのが本音ではないのか?」といった声も聞かれる。
今年はサマーキャンプは開催しない?
職場復帰に後ろ向きなのはディズニーランドの従業員に限った話ではない。小売店から教職員まで幅広くみられる現象だ。
たとえば、ニューヨークでは3月下旬から休校となり、そのまま学年末の6月を迎え、卒業年度の生徒は卒業式がないまま卒業することとなった。一部生徒の親は学校を再開するよう要請していたが「教職員のボイコットでとん挫してしまった」との話も伝え聞いている。ちなみに、米国では例年夏休みに子供をサマーキャンプに送り出し、その期間は長いもので1カ月以上にも及ぶ。だが、今年もニューヨークはサマーキャンプを許可しているものの、一向に開校する気配がない。
なぜ、このような事態が起きているのか? 原因の一つとして指摘されるのは、手厚い失業手当と補助金である。新型コロナ禍で一時帰休となった労働者は、通常の失業手当に加えて特別手当も支給されるため「職場に復帰するよりも失業しているほうが所得が増える逆転現象が起きている」(アナリスト)。もちろん、全ての職場がそうとは限らないが、少なくともレストランをはじめとする小売店や学校、娯楽施設など基本的に人との接触が避けられない職場への復帰は、失業保険を失うと同時に感染リスクも冒すことになる。あえて、そうしたリスクを冒す労働者がどれだけいるだろうか? 失業手当が切れるまでは、こうした職種が通常の営業に戻ることは期待出来ないかも知れない。