「マリコン」をご存知だろうか? 海洋を意味する「マリン」と総合建設業者の「ゼネコン」を合成した和製英語で、海洋土木工事全般及び港湾施設の建築工事を請負う企業のことだ。海洋土木会社、或いは海洋建設会社とも呼ばれ、主に橋梁基礎工事や海底トンネル工事、護岸・防波堤、海底工事、埋立・浚渫(しゅんせつ)などを請け負っている。
注目されるのは、そのマリコンで最大手の五洋建設 <1893> の株価が12月9日に一時907円と年初来の高値を更新したことだ。今年3月17日の安値424円から9カ月ほどで2倍超の上昇である。背景には菅義偉首相のカーボンニュートラル宣言や、次期米大統領に就任すると見られるバイデン氏の環境・インフラ投資の拡大見通しなど「環境関連銘柄」としての側面が指摘されている。
それにしても、マリコン最大手が「環境関連銘柄」として注目されるのはなぜか? 今回は五洋建設の最新動向をお届けしよう。
世界的な脱炭素で脚光浴びる「洋上風力発電」
五洋建設は1896年に広島県呉市に創立した「水野組」を前身とするマリコンの老舗だ。これまでに大日本帝国海軍(1917年当時)の軍港である呉港や佐世保港の工事のほか、東京国際空港拡張造成や関西空港2期空港島造成、レインボーブリッジ、東京湾アクアラインなど大型案件を数多く手がけた実績がある。海外でもスエズ運河の拡張工事やシンガポール・チャンギ国際空港の用地造成などの実績があり、2020年はシンガポールとマレーシアを結ぶ大型の鉄道施設工事も受注している。海外売上比率は2020年3月期で27%に達するグローバル企業だ。
そうした中で注目されるのが「洋上風力発電」である。先に述べた通り、菅首相は10月26日の所信表明で、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言し、環境関連への投資を優先する意向を示した。米次期大統領と見られるバイデン氏も就任後パリ協定に復帰し、脱炭素社会に大きく舵を切るとの観測が広がっている。欧州はすでに脱炭素で先行しているほか、今年9月には中国の習近平国家主席も「2060年に排出ゼロを目指す」意向を示すなど、世界各国で脱炭素化への取り組みが本格化している。