節税しながら相続税対策もできる資産管理会社。今回は、資産管理会社を設立するときの具体的な手順や設立時の注意点、事業の決め方を徹底解説します。また、設立に値する所得基準や節税の仕組みも紹介するので、資産管理会社を設立したい人はぜひ参考にしてください。

年収いくらから得になる?資産管理会社を設立したほうがいい人

(画像=Wasan /stock.adobe.com)

資産管理会社とは、個人の資産を管理する目的で設立される法人のことです。資産管理会社とはあくまで俗称であり、法律などに記載される正式名称ではありません。

所得や資産の多い人にとって、納税負担は重くのしかかります。日本では所得税も相続税も金額が大きいほど税率が高くなる仕組みが採用されています。そのため、一般的な感覚からすると想像もつかないような金額の納税が必要になる場合もあります。

所得や資産が多いなら、家族のためにも大切な資産を守る策を講じなければなりません。そのための効果的な手段として、資産管理会社は古くから活用されてきた方法です。

所得900万円が資産管理会社設立の目安

「本当に自分の年収は資産管理会社を設立する基準に達しているのか?」「設立しても大した節税額にならないのであれば、面倒なことはしたくない」といったことを口にする資産家はたくさんいます。

資産管理会社を設立する一つの基準は、所得900万円を超えていることです。これが基準になる理由は、所得税と法人税の税率差です。

所得税率は、所得695万円超で23%、所得900万円超で33%、所得1,800万円超で40%、所得4,000万円超で45%です。これに対して、法人税率は一律23.2%です。明らかに所得税率が法人税率を上回るのが所得900万円超のラインというわけです。

ただし、年収ではなくあくまで所得なので注意しましょう。所得金額は、サラリーマンであれば源泉徴収票から計算できます。確定申告をしているのであれば、第一表の右上の課税所得金額を確認しましょう。

また、中小法人などは800万円以下の利益に対しては19%というさらに低い税率が適用されます。そのため、どのラインからどの程度資産管理会社の節税効果が出るかは細かなシミュレーションをしてみなければ分かりません。人によっては、所得900万円以下でも十分な節税効果が出ることもあります。

資産管理会社を設立する手順とは?流れを分かりやすく解説

続いて、資産管理会社を設立する際の流れについて具体的に解説していきます。資産管理会社を設立するにあたり、まずは節税効果をよく確認してください。そのうえで、会社形態や社名を決定します。

合同会社は株式会社に比べて設立コストが安い

社名は自由に決めればいいのですが、難しく感じられるのが会社形態です。会社形態には株式会社と合同会社があります。特別な場合を除き、資産管理法人を設立するなら設立コストの低い合同会社で問題ありません。

合同会社の特徴は出資者と経営者が同じという点です。株式会社の場合、株主と役員を明確に分けられます。ただし、出資者と経営者を分ける必要のない資産管理法人ではこのことはあまり関係ないでしょう。

出資金は消費税が発生しない1,000万円未満で

続いて、会社設立に必要な情報を整理します。決算月や出資金、役員、法人の所在地などです。法人の決算月は自由に決められますが、決算後2ヵ月以内の税務申告が必要なので、決算月を含めて3ヵ月間はあまり忙しくない時期を選ぶといいでしょう。

出資金は1円からでも大丈夫です。ただし、不動産事業などをすぐに行う場合は最低限の運転資金は入れておきましょう。また、逆に出資金が1,000万円以上になると初年度から消費税の納税義務が生じます。特に問題なければ、出資金は1,000万円未満にしておきましょう。

役員は1人いれば法人を設立できますが、家族を数名入れるケースがほとんどです。設立後も役員の構成は随時変更できます。また、法人の所在地は自宅で問題ありません。情報が整理できたら法人印も作成しておきましょう。

煩雑な手続きは司法書士などの専門家に依頼する

続いて法人設立に必要な書類を準備し、法務局や税務署に書類を提出します。書類の準備はもちろん個人でもできますが、種類が多く複雑なため、司法書士や代行サービスを活用するほうが手間がかからずにすみます。

具体的には、まず整理した情報をもとに定款を作成し、法人用通帳を作って出資金を払い込みます。役員の就任承諾書や印鑑証明書などを法務局に持参し、登記申請を行います。その後、税務署に「法人設立届出書」「源泉所得税関係の届出書」を提出します。

必要に応じて「青色申告の承認申請書」「減価償却資産の償却方法の届出書」などを提出したほうが税務上有利になります。また、都道府県税事務所や市税事務所にも法人設立の届出を行う必要があります。様式は自治体のホームページからダウンロードできます。

設立前に初期コストの試算や融資の事前相談も重要

資産管理会社を設立する場合、個人で行っていた資産運用を資産管理会社に任せることが一般的です。例えば、個人で所有していた不動産を資産管理会社に売却すれば、その後受け取る家賃収入は資産管理会社に帰属します。

個人で所有していると、高い税率の所得税が課されるため家賃収入の割に手元資金が増えません。しかし、資産管理会社なら低い税率の法人税を納めたうえで効率的に資金を貯めていくことが可能です。また、子どもを役員にして役員報酬を支払うことで、資産の移転を進めることもできます。

ただし、個人の不動産を資産管理会社に売却する場合、不動産取得税などの初期コストが発生します。節税額を加味してシミュレーションし、何年で初期コストを回収できるか明らかにしてから実行しましょう。

また、まとまった資金を資産管理会社に入れて新たに不動産投資や株式投資を始めることもできます。不動産投資の場合、購入金額によっては融資の必要性が出てきます。設立したばかりの法人だと一般的には融資は受けにくいですが、なじみの銀行があれば審査に通るケースもあります。法人設立前に銀行担当者に相談しておくことも大切です。

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