高いリターンが狙える投資手段の一つとして「投資型クラウドファンディング」への注目度が高まっています。なかでも「株式投資型クラウドファンディング」は、IPOを狙える未上場企業に投資できることから、投資家の人気を集めています。投資型クラウドファンディングの仕組みや注意点について解説します。
目次
投資型クラウドファンディングとは?3つの種類の違いは?
クラウドファンディングには、大きく分けると「非投資型」と「投資型」があります。投資家から見たときの両者の違いは、以下の図の通りです。さらに非投資型と投資型のクラウドファンディングは、以下のような種類に分かれます。
本記事では、上記のうちの「投資型」のクラウドファンディングについて解説していきます。はじめに「ファンド型」「融資型」「株式型」の違いを見ていきましょう。
※本記事では不特法型を融資型に含めて解説していきます。
<ファンド型>
ファンド型クラウドファンディングとは、個人・団体・企業のプロジェクト(ファンド、募集案件)に対して出資をする枠組みです。プロジェクトで得られた利益をもとに、投資額に応じた分配金が支払われます。案件によっては、分配金に加えてグッズや商品、投資家だけの特典などがリターンに設定されるケースもあります。
<融資型>
融資型クラウドファンディングとは、資金を必要としている個人・団体・企業に投資家がお金を貸し付ける枠組みです。一般的に企業が融資を受ける場合は、金融機関から借り入れること(間接金融)も多いですが、融資型クラウドファンディングでは投資家から直接お金を借りることになります(直接金融)。
<株式型>
株式型クラウドファンディングは、共感や成長性が期待できる未上場企業の株式を購入する枠組みを指します。投資家にとってのリターンを得る主なポイントは、投資先が株式上場を果たし、株式の価値(株価)が高まったときです。一方で事業がうまくいかない場合は、リターンを得られなかったり元本割れになったりするリスクがあります。
※近年は未上場企業の株式を売買するプラットフォームも登場しています。
投資型クラウドファンディングを始めたときのメリット
投資型クラウドファンディングの主なメリットは、以下の5つです。そのなかには、預金や株式投資、 投資信託など他の資産運用の方法にはないメリットもあります。
少額から投資ができる
投資型クラウドファンディングは、例えば「1口1万円~」といった少額から投資できる案件が多い傾向です。そのため投資の初心者が気軽に始めやすいといえます。
一方、資金に余裕のある人からすると「投資額が少ないとリターンも少ないので魅力がない」と感じられるかもしれません。これについては、投資するときの口数を増やしたり(例:1口5万円×20口など)、1口あたりの金額が高い案件を狙ったりすれば(例:1口10万円など)、まとまった金額を運用しやすくなります。
<投資型クラウドファンディングの一口投資額の主な種類>
・一口1万円
・一口5万円
・一口10万円
・一口50万円
・一口100万円
高利回りを狙いやすい
投資型クラウドファンディングの利回りは、プラットフォームや募集案件によって大きく異なるのが特徴です。例えば、年率換算で5%以上など平均的な株式投資の配当金や預金の金利と比較して高利回りが得られるケースも目立ちます。
種類 | 平均利回り※ |
---|---|
日経平均採用銘柄 前期基準平均配当利回り | 2.15% |
J-REIT(上場不動産投資信託) 平均分配金利回り | 4.08% |
クラウドファンディング | 約4~7%(税引前)程度 |
ただし極端に高利回りの案件などは、元本割れや破たんのリスクも考えられるため、プロジェクトの中身や企業の信頼性を十分に確認したうえで投資することが大切です。
運用の手間がかからない
投資型クラウドファンディングは、運用の手間がかからない投資手法のため、会社員や経営層など忙しくて時間がない人にも向いています。例えば株式投資の場合、日々の値動きをチェックしたり、それに合わせて売買したりする手間がかかりやすい傾向です。
しかし投資型クラウドファンディングなら投資する案件を決め、ネット上で契約を交わした後に分配金の入金を待つだけで済みます。
激しい値動きがない
株式市場や外国為替市場は、時に乱高下が発生することもあるため、投資家が大きな損失を被ることもあります。投資型クラウドファンディングは、案件の成果に対する投資となるため、株式市場や外国為替市場の値動きの影響を直接受けることはありません。
個人投資家のなかには「日々の値動きが心理的負担になる」という人もいますが、こういったタイプには投資型クラウドファンディングがおすすめです。
案件によっては社会貢献できる
投資型クラウドファンディングの目的は、案件を通して分配金を得ることです。ただ案件によっては、プラスアルファで投資を通じて社会に貢献することもできます。例えば「社会問題の課題解決をテーマにするスタートアップ企業にクラウドファンディングを通して資金を貸し付ける」といった具合です。
またクラウドファンディングを通じて空き家を再生し、地域外から人が集まる場所をつくる案件では、地域の課題解決にもつながります。
投資型クラウドファンディングを始めたときのデメリット
投資型クラウドファンディングを始めようか迷っている場合は、メリットとデメリットの両方を十分に理解したうえで検討することが大切です。ここでは、2つのデメリットについて紹介します。
短期のリターンを得にくい
投資型クラウドファンディングは、短期間で大儲けをする性格の投資手法ではありません。あらかじめ決まった分配日にリターン(分配金)が支払われるコツコツ型の投資手法といえるでしょう。分配日の設定は、案件ごとに異なりますが、例えば毎月リターンが支払われる場合なら年率の利回りを12ヵ月で割った分配金が支払われていきます。
なお資金を出し入れしたい人にとっては、いったん投資をすると運用期間中に途中解約ができない点はデメリットです。
破綻や元本割れするリスクがある
すべての投資にはリスクがあります。当然、投資型クラウドファンディングの案件にも破たんや元本割れリスクの可能性があります。リスクの高い案件への投資を避けるには、プロジェクトの中身を精査することが重要です。少なくともファンド概要を読んでも中身が理解できないプロジェクトには、投資しないようにしましょう。
また信頼できるプラットフォームが提供する案件なのかを確認することも大切です。運営企業の規模や事業内容、評判などをネット上でチェックするだけでも、ある程度のリスクヘッジとなります。
元本割れリスクを考えると投資型クラウドファンディングは「余裕資金や分散投資した資金の一部を用いて行うのが望ましい」といえるでしょう。
そもそもクラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは、インターネット上で多数の資金提供者から少額ずつ資金を集め、新規・成長企業などに投資をする仕組みのことを指します。「群衆(Crowd)」と「資金調達(Funding)」を組み合わせた造語です。
クラウドファンディングは、「資金を必要とする法人または個人」と「資金提供者」「その両者を仲介するクラウドファンディング事業者」の3者で構成されます。
冒頭で解説したようにクラウドファンディングを大別すると「非投資型」と「投資型」の2つがあります。そこからさらに細分化すると種類は、以下の6つです。
・購入型
・寄付型
・ファンド型
・融資型
・株式型
・不特法型
ここでは、そのなかから「融資型」「寄付型」「購入型」の3種類のメリット・デメリットを解説します。
融資型のメリット・デメリット
融資型は、中小企業や個人などの借り手に対して一般の投資家が資金を提供するタイプです。ソーシャルレンディングともいわれます。また近年注目度の高まっている不動産クラウドファンディングを融資型と捉えるケースもあります(仕組みについては以下の関連記事や本記事の後半をご参照ください)。
融資型のメリットは、高い金利で融資できることです。銀行に預けるよりもはるかに高い金利を得られるので、超低金利の状況では魅力的な投資先といえます。株式やFX(外国為替証拠金取引)のような値動きはないため、リスクは低いといわれています。
デメリットは、倒産リスクがあることです。銀行融資が受けられない企業がクラウドファンディングを利用することがあるため、貸し倒れになる可能性はあります。
寄付型のメリット・デメリット
寄付型は、認定NPO法人、自治体、学校法人など、非営利で活動している団体に寄付するタイプです。例えば、絶滅の危機にある二ホンライチョウを残そうというプロジェクトには、2,626万5,000円もの寄付が寄せられています。このように、自分が共感できるプロジェクトに寄付できるのが寄付型に多くの資金が集まる理由と考えられます。
寄付型のメリットは、公益団体に寄付した場合は領収書を添付して確定申告すると寄付金控除を受けられることです。同時にプロジェクトを支援することで、社会貢献にもなることから、精神的な充実感を得られることもメリットです。
デメリットは、活動報告が送付されること以外にリターンがないことです。もっとも、寄付を通してプロジェクトを支援することが目的ですので、リターンがないことは想定内であり、デメリットともいえないかもしれません。
購入型のメリット・デメリット
購入型は、特定のプロジェクトを実施する者が支援を募り、支援者はプロジェクトに関連する商品・サービスをリターンとして得る仕組みです。
購入型のメリットは、出資する代わりに商品を貰える場合があるので、まだ販売されていない新商品が手に入るケースがあることです。イベントへの参加も同様です。また、映画製作のプロジェクトに出資した場合は、エンドロールに名前が出ることがあるのも、映画ファンなら大きな魅力になるでしょう。
デメリットは、プロジェクトが必ず成功するとは限らないことです。プロジェクトが進むにつれて追加資金が必要になり、工面できずに中止になるリスクは常にあります。
クラウドファンディングのなかでも、最も市場規模の大きいものは「融資型」ですが、昨今では、投資型クラウドファンディングの人気も高まっています。日本証券業協会が発表する「株式投資型クラウドファンディング統計情報」によると、2022年の投資型クラウドファンディング発行価額(普通株)総額は19億3,333万円であり、2017年の4億7,274万円から大幅に拡大しています。
投資型クラウドファンディングの人気の理由は?
いくつかある投資型クラウドファンディング(ファンド型、融資型、株式型)のなかから「株式投資型クラウドファンディング」にフォーカスします。投資型クラウドファンディングのなかでも、株式投資型クラウドファンディングは新規・成長企業へのリスクマネーの供給を目的として2015年に創設されました。
現在、株式投資型クラウドファンディングを提供している主なサービスは以下の通りです。
<FUNDINNO(株式会社FUNDINNO)>
株式投資型クラウドファンディングで国内シェア№1を誇ります。扱う企業のビジネス領域は、医療、アグリテック、海洋ビジネス、ブロックチェーン、コワーキングスペース、ロボットなど。インターネットで10万円から投資が可能です。普通株のほかに、当該企業が新株を発行した際に交付を受けられる「新株予約権」も取り扱っています。普通株は未上場ながら株主優待を受け取れる案件もあります。
<CF Angel(株式会社CFスタートアップス)>
2017年から募集を開始したサービスで、これまでに15銘柄の募集が成立しています(2023年5月時点)。第1号案件「株式会社マルチブック」の場合、発行価額5万円で、合計2,000万円の資金を調達しています。
<ユニコーン(株式会社ユニコーン)>
2015年設立。「企業成長丸ごとサポート」というサービスで、企業IRや株主総会の運営などを支援しています。百数十社の企業の上場をサポートしてきた投資銀行や証券会社出身のIPOのプロが多数在籍しているのが特長です。これまでに目標達成したプロジェクトは25件です(2023年5月時点)。
終了した案件のなかでは、バイオベンチャーの「トレスバイオ研究所」が調達目標1,000万円に対し、2,330万円の資金を集めています。
<イークラウド(イークラウド 株式会社)>
2020年7月に1号案件の募集を開始した比較的新しいサービスです。1号案件は長野県上田市にある「地元カンパニー」という企業で、47都道府県の地元商品を法人ギフト中心に販売する事業を展開しています。同社の場合、10株10万円から募集したため、株価に換算すると1株あたり1万円という計算になります。
未上場企業の株式に投資できる
株式投資型クラウドファンディングの最も大きなメリットは、未上場企業の株式に投資できることです。投資した企業が株式上場(IPO)したり企業売却(M&A)したりすれば、投資家は大きな売却益を得られる可能性があります。
とくに東証マザーズなどに新規上場する株式は、IPO公募の段階から高い競争率になり、抽選に当たることは難しいことが定説になっています。株式投資型クラウドファンディングは、IPOが期待できそうな企業に先行投資できることから、投資家の注目を集めているのでしょう。
未上場の若い企業をスタート当初から応援できることも魅力の一つです。募集企業のビジネスモデルや商品などの情報をチェックしながら、少額出資でベンチャーキャピタリストになったような気分を味わえます。
・エンジェル税制とは?
また、一定の要件を満たし「エンジェル税制」の対象となる企業に投資した際には、税金面の優遇を受けることができるのもポイントです。エンジェル税制では2つの優遇措置のいずれか1つを受けることができます。
1つは、設立5年未満の企業に投資した場合、投資した金額から2,000円を引いた金額を、その年の総所得金額から一定の金額まで控除できます。もう1つは、設立10年未満の企業に投資した全額を、その年のほかの株式譲渡益から控除できます。
ただし、投資家は1社につき年間50万円以下の払込額に限定されるので注意しましょう。
投資型クラウドファンディングの始め方
投資型クラウドファンディングはどのように始めればよいのでしょうか。未上場企業へ投資するだけに、どの事業者や投資案件を選ぶかが極めて重要になります。
<1.事業者を選んで口座開設する>
はじめに、事業者を選んで口座を開設する必要があります。最近では投資型クラウドファンディングを扱うプラットフォームが増えているため、各社とも特色を出すことに注力しています。出資額の基準も異なりますので、各プラットフォームのホームページを参考に、自分の投資方針と合っていると思える事業者を選ぶようにしましょう。
事業者を選んだら、次に会員登録し、クラウドファンディング用の専用口座を開設します。
<2.投資する案件を選ぶ>
口座が開設されたら、投資する案件を選び投資を行います。募集案件ごとに詳しい募集要項が掲載されているので、よく読んだうえで投資の判断を下すようにしましょう。一般的に利回りが高いとリスクも高くなるといわれています。初めての投資なら運用期間が短めの案件を選んで、投資型クラウドファンディングの仕組みに慣れるのもよいでしょう。
購入資金は、株式と同じくあらかじめ口座に入金しておく必要があります。
投資型クラウドファンディングの注意点
投資型クラウドファンディングを始めるにあたっては、以下のような注意すべき点があります。
<元本が保証されていない>
1つめは、投資型クラウドファンディングは元本保証ではないことです。投資対象が将来性あるベンチャー企業のため、貸し倒れや倒産が発生した場合は投資資金を回収できないことが考えられます。また、投資対象が海外企業の場合は為替差損が発生して元本割れとなるケースもあり得ます。未上場の成長企業に先行投資できる半面、リスクが高いことも心得る必要があります。
<基本的にキャンセルができない>
投資型クラウドファンディングは募集完了後にキャンセルすることができません。ただし、募集が完了する前であれば原則としてキャンセルできます。キャンセル料が発生しない事業者もありますので、各社のホームページで確認するとよいでしょう。
オルタナティブ資産としての注目も大きい
株式や債券などの伝統的資産に対して、ヘッジファンドやプライベートエクイティ(未公開株)などの資産を「オルタナティブ資産」といいます。伝統的資産だけでは難しいリスク分散を実現する投資手段として、オルタナティブ資産への注目が集まっています。
オルタナティブ資産への投資は、従来、機関投資家や一部の富裕層だけのものでしたが、クラウドファンディングの登場によって個人にも身近なものとなりました。
ただし、クラウドファンディングは高いリターンが期待できる反面、リスクも大きい投資手法です。投資したところで、将来のIPOやM&Aによる売却益が必ずしも実現するとは限りません。場合によっては、投資先企業が倒産して元本がゼロになる可能性もあります。
とはいえ、クラウドファンディング市場規模は今後も拡大する見込みです。リスクも念頭に置きつつ、オルタナティブ資産の一つとしてポートフォリオへの組み入れを検討してみるのもよいでしょう。
不動産クラウドファンディングもオルタナティブ資産の一つ
国内でプラットフォームやファンドの数が急増しているオルタナティブ資産の一つに「不動産クラウドファンディング」があります。
なお、本記事では不特法型として紹介しているクラウドファンディングが、不動産型クラウドファンディングを指します。
不動産クラウドファンディングとは?
不動産クラウドファンディングとは、募集案件(ファンド)を組成し、以下の流れで投資家の資金を運用する仕組みです。
▽不特法の枠組み
・事業者(運営会社)が大勢の投資家から資金を集める
・集めた資金で不動産を購入・運営する
・家賃収入や売却益の一部を投資家へ分配金として還元する
「不動産クラウドファンディング」という名称をここ最近、聞くようになったという人も多いと思います。これは、この投資商品が比較的新しいものだからです。2017年の「不動産特定共同事業法(不特法)」の法改正により、先ほどご紹介した不特法の枠組みをインターネット上(電子取引)で契約することが可能になりました。
不動産クラウドファンディングとは?
不動産クラウドファンディングの市場規模は、どのように推移しているのでしょうか。2021年7月9日に一般社団法人日本クラウドファンディング協会が公表している「クラウドファンディング市場調査報告書」によると、2018年段階で約21億円だった市場規模が2020年には3倍の約60億円規模に達しています。
※不特法型における一部事業者の契約金額の総計
投資型クラウドファンディングに関するよくある質問
<Q.投資型クラウドファンディングとは?>
投資額に応じたリターンを目的にした枠組みが投資型クラウドファンディングです。非上場株式の発行やファンドを組成し、そこで得た資金を元手に事業を行い、利益を分配金として投資家に還元します。種類としては、「ファンド型」「融資型」「株式型」「不特型」の4つがあります。
<Q.投資型クラウドファンディングのメリット・デメリットは?>
投資型クラウドファンディングの主なメリットは「少額から投資できる」「高利回りを狙いやすい」「運用の手間がかからない」などです。一方で「短期のリターンを得にくい」「リスクが高い案件もある」「元本割れするリスクがある」などがデメリットとなります。
※本記事は2023年5月23日時点の情報をもとに構成しています。内容は変更になる可能性がありますので、投資型クラウドファンディングに申し込む際は、運営企業のホームページで最新の情報をご確認ください。
(提供:YANUSY)
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