本記事は、谷崎 真吾氏の著書『家の売り方大全』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

不動産屋
(画像=naka / stock.adobe.com)

チラシの宣伝文句は根拠のない嘘と心得よう

甘い言葉の広告に惑わされない

「うちには毎週のようにこんなチラシが入っています。人気のある物件なんですね」

このように嬉しそうにお話しする人とこれまで何度もお会いしてきました。

「買いたい人がいます! 高く売れます!」というチラシが、ポストに入っていたことがあるという人は多いと思いますが、これを目にすると、「自分の家は高く売れるのかも」と期待してしまいますよね。

しかし、このようなチラシには注意が必要です。なぜなら、多くの場合、これらの宣伝文句には具体的な根拠がなく、嘘であることが大半だからです。

不動産会社は、基本的に物件を探している購入検討者のリストを持っています。しかし、それがあなたの物件にピッタリ当てはまるかどうかは別問題です。「買いたい人がいます」といった宣伝文句は、売主にアプローチしやすくするための営業手法であることが多く、実際には買いたい人など存在していないケースが大半です。また、高く売れるかどうかも、売却を開始してみないと誰にもわかりません。

確かに本当に買いたい人がいる場合もありますし、原価高騰している現代では、買った時よりも高く売れる物件も存在します。

しかし、広告の文句をすべて鵜呑みにはせず、惑わされずに、冷静に判断することを忘れないでください。

「いくらでもいいです」は絶対に言ってはいけない

言えば言うほど損をする一言

不動産を売却する際、売主が絶対に口にしてはいけないことがあります。

それは、「いくらでもいいですよ」という言葉です。

一見すると柔軟な姿勢を示しているように思えますが、この一言が売主にとって最大の損失を招く可能性があります。

「いくらでもいい」と言われた買主は、「最低限の価格でも構わない」と捉えてしまいますので、「相場よりも安く買えるかもしれない」と考え、強気の値引き交渉に出る可能性が高まってしまいます。

また、不動産会社も「さっさと売るために値引きありきで商談をしよう」と必要のない価格交渉をしてしまうリスクが生じるのです。

不動産売却では、買主はできるだけ安く買いたいと考え、売主は高く売りたいと考える、反比例の考えが存在しています。その中で「いくらでもいい」という発言は、売主が「交渉の主導権を手放すこと」と同じですので、絶対に禁句です。

値引き交渉が当然のように行われる状況の中で、売却を成功に導くためには、事前に最低ラインの価格をきちんと設定し、その基準を不動産会社へ伝えることが重要なのです。

また、不動産会社へ買取依頼をする場合は、特に注意してください。

不動産会社はボランティアではなくあくまでも商売をしています。安く買えるなら、トコトン安く購入したいと考えていますので、「いくらでもいい」という言葉を口にすると、最安値まで買い叩かれることがあります。

「いくらでもいいです」を良かれと思って言っている人は、今日からもうやめましょう。

売り出しは引渡しの3〜4カ月前がベスト

急いては事を仕損じる

「引渡しは1年先になるのですが、もう今から売り出してもいいですか?」

早く売却をしたいという気持ちが先走り、このように言う人はとても多いです。引渡しが先になる理由は様々ですが、不動産を売却する際には、「引渡し時期」を記載しなければなりません。あいまいにしておきたい場合は「引渡しは相談」という形にすることもできますが、通常引渡しは、売れてから2~3カ月後に行うのが一般的とされています。

そのような前提がある中で、引渡しが1年後になるといったケースでは、売主にとって損をしてしまうことがあります。

引渡しが1年先になるということは、その待っている間に設備が故障するリスクや、家の状態が悪化するというリスクが懸念されるため、「引渡しが先になるなら、その分価格を下げてください」と値引き交渉が入りやすくなるのです。

また、引渡し時期が先すぎると、売主や買主の状況が変化した際に予定通りの引渡しができなくなるリスクも高まります。

例えば、売主が予定していた転居先の契約が滞ったり、転勤が取り消しになったりすることもありますし、買主側でもローンの審査が長引いたり、離婚などの予期せぬ事情で購入をやめるといった状況が生じることもあります。これらの要因が絡むと、契約自体の履行が困難になり、最悪の場合、違約金などのトラブルに発展することさえあるのです。

このようなリスクを避けるためには、売却開始のタイミングを慎重に検討することが重要です。最も理想的な売却開始時期は、引渡し予定日の3~4カ月前です。

このタイミングで売却活動を始めることで、購入者検討者にとっても計画的に引渡しを進めることができ、売主側も余裕をもって対応できるでしょう。

家の売り方大全
谷崎 真吾(たにざき・しんご)
株式会社ウィルステップ代表取締役/株式会社SMILE’s取締役。
広島県生まれ。大学卒業後に総合不動産会社へ入社し、中古住宅の仕入と販売に従事。
中古住宅とお客様の特性や行動心理を徹底的に分解・分析し、赤字事業部を半年で黒字化。
その後も安定して成果を上げ続け、会社創立以来最年少の事業本部長に就任。九州地域ナンバーワン企業、株式上場へ大きく貢献。
2021年に不動産コンサルタントとして起業し、同年に株式会社ウィルステップを設立。2023年には株式会社SMILE’sを立ち上げ、リフォーム事業を展開。
現在は、これまで中古住宅売買に3,000件以上携わってきた実績とノウハウを活かし、中古住宅事業への新規参入支援、営業社員の教育、リフォームプロデュースなど幅広く行っている。
著書に『売れる営業がお客様に会う前にやっていること 初対面の7秒で絶大な信頼を勝ち取る』(日本実業出版社)がある。
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