本記事は、谷崎 真吾氏の著書『家の売り方大全』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

設計図・図面を見ながらマイホームのリフォーム・リノベーションの相談をする女性と建築士
(画像=buritora / stock.adobe.com)

リフォーム物件は必ずしも買取価格が高くなるわけではない

リフォームの価値も限りがある

仲介の場合、過去にリフォームをしている物件は、購入検討者にとって魅力的に映ることも多いです。丁寧に使用し綺麗な状態を保っていれば、その価値を積極的にアピールすることで、購入してもらえる可能性は高まります。

しかし、買取の場合、「過去にリフォームをしているから、その分、買取価格も高くなるだろう」と過度に期待をするのはやめましょう。実際には、リフォーム履歴が必ずしもプラス評価になるとは限らないのです。

ここでは、その理由を2つのポイントに分けて説明します。

① リフォームの価値は永遠に続くわけではない

リフォームをしたからといってその価値は、永遠に続くわけではありません。それはリフォームとは、設備の老朽化や世の中のトレンド変化とともに徐々にその価値が薄れていくものであるためです。「リフォームを最近したばかり」であれば、十分その価値が残っている可能性はありますが、長い時間が経ち、リフォームから10年以上が過ぎる頃には、その価値はほとんどつかないのが現実です。

15年前に設置した最新設備が、今では「古いデザイン」と見なされるようなことも珍しくありませんので、リフォームの価値は、残念ながら時間とともに目減りしていくものだと考えておきましょう。

② 中途半端なリフォームは査定の妨げになることもある

買取再販を前提とする会社の場合、物件の再販時に「すべて新品の設備」という状態で販売することを想定しています。そのため、売主が行った過去のリフォームが中途半端な状態の場合は、逆に価格がつけづらくなるケースがあります。

例えば、築30年のマンションで「リビングの床だけをリフォームした」「去年ガスコンロだけ替えた」「5年前に温水洗浄便座だけ新しくした」といった状況では、どうでしょうか。会社としては、これらを一部だけ活かすのではなく、設備全体を統一感のあるデザインでリフォームし直すことを考えます。

そのため、売主が手を加えた部分がかえってコストや手間を増やす要因になり、査定価格を下げざるを得ない場合もあるのです。

また、リフォームの内容が買取会社の会社方針に合わないこともよくあります。特殊なデザインや独自性のある色使いが取り入れられている場合、会社側が「やり直し」をしなければいけないケースが発生します。これが査定時のマイナス要素となることもあるのです。

リフォームしていないことがメリットになる?

このように、リフォーム歴が古い場合や部分的や特殊なリフォームである場合は、必ずしも査定価格にプラスに働くわけではありません。一方で、これまで一度もリフォームをしていない物件は、買取会社は「手を加えやすい素材」として見ています。この場合、会社がターゲット層に合わせて自由にリフォームを計画できるため、査定もスムーズに進むことが多いのです。

不動産会社が買主なら、後から文句を言われることもない

現状渡しがリスクを回避

「売却した後に色々と問題が判明して、費用がかかってしまった」

これは、不動産を売却した後によく聞くことです。

不動産売買には「契約不適合責任」というものがつきます。この定義はとても曖昧なのですが、シロアリや雨漏りなど「生活するうえでの不具合」があると、契約をなかったことにしたり、是正するための費用を前所有者に請求したりすることができる制度です。そのため、売却をした後に様々な理由で問題が発生して、予期せぬ費用が発生するという事態を招いてしまうのです。

一方、買取で不動産会社等に直接物件を購入してもらう場合、個人の買主との取引と異なり、後から「こんなはずじゃなかった」といったクレームを言われる心配がほとんどありません。それは、会社に買い取ってもらう際は「現状渡し」が基本ルールとなるためです。現状渡しとは、物件を現在の状態そのままで引渡すことを意味します。

物件の不具合や修繕が必要な箇所について、会社が査定時に事前に確認し、その修繕費用等を差し引いた価格を買取価格として提示するため、売却後に問題が発覚しても、売主が責任を負う必要がないケースが大半なのです。

古い物件ほど買取には向いている

こうした査定プロセスのおかげで、売却後に会社からクレームを受ける心配はほとんどありません。

個人の買主の場合、取引後に「雨漏りしている」「床下にシロアリがいる」などの問題が発覚すると、トラブルの引き金になってしまいますが、会社との買取では、これらのリスクを回避できるのが大きなメリットと言えるでしょう。

また、不動産会社は物件を再販する際、買い取った物件をリフォームやリノベーションすることを前提にしていますので、購入時に多少の不具合があってもそこまで問題視することはなく、むしろ「手を加えやすい素材」として見てくれます。

売主としては「手も加えてないし、不具合があるから売却できないのでは」と心配することもあるかもしれませんが、会社買主の買取は、売主にとって「手間なく」「クレームリスクが少ない」安心な選択肢です。

古い物件や、修繕が必要そうな物件をスムーズに現金化したい場合には、ぜひ選択肢の一つに入れておいてください。

家の売り方大全
谷崎 真吾(たにざき・しんご)
株式会社ウィルステップ代表取締役/株式会社SMILE’s取締役。
広島県生まれ。大学卒業後に総合不動産会社へ入社し、中古住宅の仕入と販売に従事。
中古住宅とお客様の特性や行動心理を徹底的に分解・分析し、赤字事業部を半年で黒字化。
その後も安定して成果を上げ続け、会社創立以来最年少の事業本部長に就任。九州地域ナンバーワン企業、株式上場へ大きく貢献。
2021年に不動産コンサルタントとして起業し、同年に株式会社ウィルステップを設立。2023年には株式会社SMILE’sを立ち上げ、リフォーム事業を展開。
現在は、これまで中古住宅売買に3,000件以上携わってきた実績とノウハウを活かし、中古住宅事業への新規参入支援、営業社員の教育、リフォームプロデュースなど幅広く行っている。
著書に『売れる営業がお客様に会う前にやっていること 初対面の7秒で絶大な信頼を勝ち取る』(日本実業出版社)がある。
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