本記事は、山口 拓朗氏の著書『読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。

読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術
(画像=YUTO_PHOTOGRAPHER/stock.adobe.com)

表層読解とは何か

大問題! 「ちゃんと聞かない人・読まない人」が急増中

話をちゃんと聞かない人や、文面をちゃんと読まない人が急増しています。
「どこをどうしたら、この文章をここまで(おかしな方向に)読み解くことができるの?」と驚くことも少なくありません。
当の本人は、情報を正しく読み解けていないことに気づいていないケースも少なくありません。
このような傾向は、読書量やコミュニケーション量の低下、さらには、動画主体の受動的インプットの偏重、スマホの長時間使用によって引き起こされる「スマホ脳(注意散漫、集中力の低下、記憶力の減退など)」の問題とも無関係ではありません。

現代人は、日々すさまじい量の情報に接してはいるものの、それらの情報は猛スピードで私たちの目の前を通り過ぎていきます。
これでは、ひとつのテーマについてじっくり思考する暇などありません。気軽に楽しめるショート動画がその象徴です。
次々に流れてくる動画を見ている間、多くの人が思考を停止させています。〈なんとなく〉それを見ているだけ、という状態です。

MM総研によると、2024年1月時点における1週間のスマホ平均利用時間は1,215分(約20時間)。約5年で6割ほど増加したとのこと。
1日のうち3時間弱をスマホに奪われているのです。
怖いのは、思考する機会が減れば減るほど、「ああ、こういうことね」と短絡的に決めつけたり、「どうせこういうことでしょ」と、都合よく情報を解釈したりするケースが増えることです。
思考していないため、情報のつながりを論理的に見ていく力や、論理を支える証拠や根拠を分析する力なども、当然落ちていきます。
情報を鵜呑みにすることで理解した気になっている人もいます。

表層読解とは、話の内容を正確に把握する読解のことです。
大事なのは〈そこに何が書かれているか〉であり、それが、行間や背景などの言外情報の読み解きを必要とする本質読解や深層読解と異なる点です。
内容を正確に把握するためには、文章であれ会話であれ、まずは、そこに何が書かれているか(どんな言葉が発せられたか)、適切に判断できなければいけません。

表層読解では、言葉を理解し、文を理解し、そのつながりを理解していきます。
その際、なんとなくの感覚や、主観を用いて読み解いてはいけません。
ところが、この表層読解を苦手にしている人が少なくありません。
今では仕事の場面でも、なんとなくの感覚で、主観という色眼鏡を堂々と使って、読み解く人が増えているのです。
それが「話をちゃんと聞かない」「文章をちゃんと読まない」などの症状です。

「外注するといいかもしれません」は、「外注しなさい」という命令ではありませんし、ましてや「あなたひとりに任せてはいられない」という批判でもありません。
しかし、読解力が低い人は、勝手に「◯◯さんが、外注しろ、と言った」「◯◯さんが自分のことを批判した」と誤読してしまうのです。
同じように、「プレゼン資料、だいぶ良くなってきたね」は、「この完成度でOK」という意味ではありません。

たしかに、文脈や行間次第では、言葉を額面通りに受け取るべきでないケースもあります
しかし、文脈や行間をていねいに読み解いたうえで導き出した解釈と、自分勝手な思い込みによる解釈は、似て非なるものです。残念ながら、昨今は言葉の意味を無視し、自己流の解釈をする人が増えています。

「話をちゃんと聞くこと」「文章をちゃんと読むこと」は、読解において重要なファーストステップです。

読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術
山口 拓朗(やまぐち・たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長/山口拓朗ライティングサロン主宰
出版社で編集者・記者を務めたのちライター&インタビュアーとして独立。27年間で3,800件以上の取材・執筆歴がある。
出版社時代に徹底した赤ペン指導を受け、文章力を飛躍的に伸ばす。現在は執筆や講演、研修を通じて「論理的に伝わる文章の書き方」「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化トレーニング」「簡潔にまとめて伝える要約力」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「売れる文章&コピーの作り方」など、言語化や文章術の分野で実践的なノウハウを提供している。
2016年からアクティブフォロワー数400万人の中国企業「行動派」に招聘され、北京ほか6都市で「Super Writer養成講座」を23期開催。中国国内で50名を著者デビューへと導いた。
著書にベストセラー書籍『「うまく言葉にできない」がなくなる言語化大全』(ダイヤモンド社)、『読解力は最強の知性である 頭のいい人の1%の本質を一瞬でつかむ技術』(SBクリエイティブ)、『思い通りに速く書ける人の文章のスゴ技BEST100』(明日香出版社)、『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』(日本実業出版社)など32冊。中国、台湾、韓国など海外でも25冊以上が翻訳されている。NHK「あさイチ」などのテレビ出演も。
読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術
  1. 語彙力の高低は、仕事に影響ーービジネスに効く読解力の正体
  2. 「ちゃんと聞かない・読まない人」が急増? 誤解・すれ違いを生む“読解力の低下”とは
  3. 「それは個人の意見では?」から始まる思考の質を高める読解力
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