本記事は、山口 拓朗氏の著書『読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。

読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術
(画像=ki/stock.adobe.com)

語彙力のある人は読解力も高い

読解力を支える基礎

読解力を支える基礎となるのが「語彙力」です。
語彙力とは、多くの単語や表現を知っていて、かつ、状況に応じて適切に使いこなせる能力のことを言います。
文章や会話の意味を正確に把握するためには、言葉が必要です。
とくに、入り組んだ文章や専門的な内容を読解する際には、語彙力の高低が読解力に直結します。
また、語彙力はコミュニケーションの質を向上させる重要な要素でもあります。

語彙力が豊かな人ほど、自分の思考や感情をより正確に、かつ豊かに表現することができるからです。逆に、語彙力が不足していると、自分の意図を正しく伝えられないだけでなく、他人の言葉の意味やニュアンスを読み取ることも難しくなります。
このように、語彙力は読解力のみならず、社会生活や勉強、仕事にも大きな影響を及ぼしているのです。

人は言葉を使って読解を進めていきます。
たとえば、1行前のこの(↑)文章をあなたが理解できるのは、「人」「言葉」「使う」「読解」「進める」などの言葉を知っているからです。
これらの言葉を知らない人は、理解することができません。つまり、読解力は、その人が「どれくらい言葉を知っているか」という点と深く関わっているわけです。

もちろん、言葉を知らなくても、その前後で述べられる〈知っている言葉〉をヒントに、「こういう意味かな?」と推測することはできるでしょう(この推測力もまた「読解力」の一部です)。
しかし、理想は、その言葉そのものを知っている状態です。
語彙力が豊かになると、推測箇所が減り、読解のスピードと質が伸びていきます。
また、読解に苦しむことがなくなるため、精神的なストレスも減っていきます。

「理解の箱」を増やす

認知心理学に「スキーマ」という概念があります。
スキーマとは、「理解するプロセス」についての重要な概念で、「新しい情報に接した際、すでに持っている情報を活かして物事を理解する仕組み」を言います。
筆者はこの「スキーマ」を「理解の箱」と呼んでいます。

私たちが読解をする際、この「理解の箱」を用いて情報を処理します。
箱の数が多く、また、それぞれの箱が活性化しているほど、スピーディかつ正確に情報を理解することができます。

以下の説明①〜③は、ある物についての説明です。何について述べたものでしょうか? 考えてみてください。

① 家庭でよく使われる電化製品
② 食品を温める
③ 高周波の電磁波を利用して、食品内の水分子を振動させて加熱する

答えは電子レンジです。
①の時点では、さまざまな家電が候補に挙がります。
②の時点では、洗濯機や冷蔵庫、掃除機などの可能性は消えますが、オーブンやトースターなどの可能性が残されます。
③の「高周波の電磁波を利用して水分子を振動させる」という情報によって、電子レンジであることが確定します。
しかし、なぜ私たちは③の情報を聞いて電子レンジだと理解できるのでしょうか?

それは、電子レンジというものの「理解の箱」に「電磁波を利用/水分子を振動させて加熱する」などの情報が含まれているからです。このように、すでに知っている情報(言葉)を使いながら、人は、物事の理解を進めていくのです。

「ほかの言葉」なしに「その言葉」は存在しない?

ある言葉の意味を伝えるとき、必要となるのが「それ以外の言葉」です。
たとえば、「風呂」の意味を伝える場合、「からだの洗浄や温浴・入浴をするための設備」のような説明が必要となります。
このとき、もし相手が、「からだ」「洗浄」「温浴」「設備」などの言葉を知らなかったら、お風呂について理解してもらうことは難しいでしょう。

そう、言葉はお互いに支え合っているのです。
「ほかの言葉」がなければ、「その言葉」を説明することはできません。

読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術
(画像=読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術)

すべての言葉は直接的、あるいは間接的に関わり合っているのです。
ひとつの言葉の意味を知っているということは、同時に、いくつもの言葉の意味を理解していることの証明でもあるのです。
この事実に気づくと、「語彙力を伸ばすことの大切さ」が見えてきます。
知っている言葉が増えるほど、言葉の世界がどんどん広がっていきます。
言葉と言葉が結びつく「脳内言語ネットワーク」が拡大していくイメージです。
言うまでもなく、知っている言葉の量を増やすことは、「理解の箱」を増やしていくことにほかなりません。

最終的には、教養や雑学などを含め幅広く「理解の箱」を増やしていくことが大切です。
ただし、より身近な場面で即効性のある読解力を発揮したいなら、ひとまず、自身の仕事など、自分がよく読解を求められるテーマに集中して「理解の箱」を増やしていくことをおすすめします。

読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術
山口 拓朗(やまぐち・たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長/山口拓朗ライティングサロン主宰
出版社で編集者・記者を務めたのちライター&インタビュアーとして独立。27年間で3,800件以上の取材・執筆歴がある。
出版社時代に徹底した赤ペン指導を受け、文章力を飛躍的に伸ばす。現在は執筆や講演、研修を通じて「論理的に伝わる文章の書き方」「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化トレーニング」「簡潔にまとめて伝える要約力」「好意と信頼を獲得する伝え方の技術」「売れる文章&コピーの作り方」など、言語化や文章術の分野で実践的なノウハウを提供している。
2016年からアクティブフォロワー数400万人の中国企業「行動派」に招聘され、北京ほか6都市で「Super Writer養成講座」を23期開催。中国国内で50名を著者デビューへと導いた。
著書にベストセラー書籍『「うまく言葉にできない」がなくなる言語化大全』(ダイヤモンド社)、『読解力は最強の知性である 頭のいい人の1%の本質を一瞬でつかむ技術』(SBクリエイティブ)、『思い通りに速く書ける人の文章のスゴ技BEST100』(明日香出版社)、『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』(日本実業出版社)など32冊。中国、台湾、韓国など海外でも25冊以上が翻訳されている。NHK「あさイチ」などのテレビ出演も。
読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術
  1. 語彙力の高低は、仕事に影響ーービジネスに効く読解力の正体
  2. 「ちゃんと聞かない・読まない人」が急増? 誤解・すれ違いを生む“読解力の低下”とは
  3. 「それは個人の意見では?」から始まる思考の質を高める読解力
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